カテゴリー別アーカイブ: 基本のき

面相筆の功罪

仕上げは誰でも良い状態で行いたいもの。
そこで勢い筆に頼りたくなるのが人情です。
しかしその選択は合っているのか、面相筆についてご説明
したいと思います。


一般に面相筆というと「人や動物の表情を描くのに適した穂先の細い
筆」とあります。
毛質や穂の長さはいろいろありますが、金繕いの仕上げの筆としては
ベストとは言えません。

画像の筆は穂先がイタチで面相筆の中でも質が上等なランクになる
ものです。
しかし拡大の画像でお分かりになるように穂先の毛のまとまりは良いとは
言えません。

水彩画、日本画など水分が多い画材ならば繊細な作業を行えると思い
ますが、粘り気の強い漆には腰の強さが足りません。

往々にして画材店で案内を乞うと面相筆を勧められるようですが、仕上げ
に適した筆は教室でご確認下さい。


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筆の収納

このところ、筆の収納をどうしたらいいか?というご質問が続き
ましたので、ご説明したいと思います。

筆の収納は大きく分けると筆巻と筆筒になるかと思います。
まず筆巻です。


こちらは私が自宅で使っている名村というメーカーのブラシケース
・ショート(水彩画用)です。
(紐は柔らかい質のものに交換しています)
画像でご覧頂けるようにかなりの本数の収納が可能です。
私は3つ折りで使っていますが、筒状に巻くことも可能です。
筆先側にカバーがついていますので、筆やキャップの脱落の心配が
ないのも評価出来ます。

こちらは筆筒です。
画材メーカー品から100円ショップ品まで様々あります。
メリットはコンパクトなところでしょうか?

難点は目的の筆を探しにくいところと、逆さまに収納してしまうと
筆先を痛める可能性があることです。

変わり種はキャンプ用のカトラリーケースです。
何とダイソーで330円。
立体的に丸められるので、テーブルの上で筆立てのように立てて
置くことも可能です。

難点は長さが筆に対してギリギリなこと。
カバーをすると筆先が潰れる可能性大です。

いろいろご紹介しましたが、お裁縫が得意な方は自分の使い勝手に
合わせて自作するのが一番かと思います。
何より大切なのは道具のコンディションが作業の質に関わるので、
穂先を痛めない方法を重要視するべきということです。


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総体漆繕い

NHK文化センター柏教室におられたSさんの作品を前回に
続いてご紹介します。
欠けを総体漆繕いで直されました。


画像正面に欠けがあったのですが、わかりにくいと思います。
こちらはご友人からの預かり物の茶碗なのですが、金属粉で
仕上げをするのではなく、できるだけ目立たないようにとの
リクエストだったそうなのです。
これを備前焼の赤茶色の色を新うるしの色を調合して再現
されました。

現在、陶磁器の修復方法を「金繕い(金継ぎ)」というので、
金や銀での仕上げが当然のように思われているかと思いますが、
技術の発端は漆の色で完成する「漆繕い」が原点です。

ただ器の色を漆で再現するのは簡単ではありません。
金や銀の金属粉で仕上げを行う方が下地の色に左右されることなく
簡単です。

また金属色はどんな色の釉薬でも相性が良いので、究極は失敗が
ないと言えます。

昨今の金の高騰で金での仕上げを避けられる傾向にありますが、
Sさんの作品のように完成度の高い総体漆繕いは難関なのです。


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長いひび

NHK文化センター柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
大皿の欠けとひびです。

縁の欠けから伸びたひびが長く、仕上げをするのが大変だったかと
思います。
ただ金泥が染付に映えて美しい仕上がりになりましたので、満足されて
いるかと思います。

このところ仕上げが上手くいかないというご相談が増えています。
まずどのように作業しておられるのが実演して頂いて問題点を把握する
ようにしているのですが、大抵は手順に勘違いがあることがほとんど
です。

金繕いはカテゴリーとしては工芸に分類されますが、器によって手順が
異なり、難しい部類に入ると思います。
特に仕上げは目にすることになるので、印象がこれで決まってしまう分、
皆様完成度にこだわられます。

仕上げを行う前には今一度手順を確認してから行われるのをお勧め
致します。


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花器の金繕い

私が金繕いを承った花器をご紹介します。
象嵌で繊細な柄を入れたものですが、縁周辺が割れてしまって
いました。



破片を接着後、欠損部分を埋めました。
仕上げは縁に金彩が入っているので、基本的に金泥を使用。
縁下の染付部分のみ薫銀泥を使いました。
その結果、程よく馴染んだのではないでしょうか。

この花器は持ち主の方が作家さんにオーダーして作って貰った
ものとお聞きしております。
唯一無二のものとして完成した姿を気に入って下さっていれば
嬉しいです。


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呼び継ぎにチャレンジ

藤那海工房 土曜日クラスのSさんの作品をご紹介します。
飯茶碗の呼び継ぎです。


呼び継ぎとは金繕いの技法の一つで、共継ぎと呼ばれる元々同じ
器の破片を使うのではなく、全く別の器の破片を欠損部に入れる
接着方法を指します。

Sさんの作品の場合、陶器の飯茶碗に敢えて磁器の破片を入れています。
その結果、本体と入れた破片の厚みが随分違いましたので、主に内側
でその差を調整しています。(内側の接合線が太くなる)

金繕いを習っている方々からすると「いつかは呼び継ぎ」というくらい
憧れの手法です。
というのも呼び継ぎを行うには
1.ある程度欠損のある本体
2.欠損部を埋める破片
が必要になるからです。

特に2.の欠損を埋める破片は意匠性も重要になってきますので、より
ハードルが上がります。

やってみたい、とお考えの方は、上記の2点に該当する器集めから
始めてみてはいかがでしょう?
集め方については、教室でご相談にのっております。


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銀泥の渋い硫化

藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋の欠けを銀泥で仕上げられたのが、いい具合に硫化
したのを拝見致しました。


渋い金色に変化しています。
面白いのが縁の硫化が進んでいて、すでに黒くなっているところ
です。

銀泥はシャンパンゴールド、ピンクゴールド、青紫、黒と変化して
行きますが、その時間経過はご自宅の状況で違います。

今回、Oさんは急須自体の釉薬にマッチしていると現状での色止め
(硫化を極めて遅くし現状の色で止める方法)を行われました。

いずれにしろ変化の様子を時間経過と共にお楽しみ下さい。


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表面のテクスチャーに合わせる

港北カルチャーセンターの方の作品をご紹介致します。
蓋物の割れです。


ざらざらとした釉薬が印象的な蓋物です。
本体の方が鳥脚型に割れていたのですが、これを金属粉で目立たせる
のではなく、馴染ませることにチャレンジされました。

ざらざらとした仕上げを敢えて選択したいという方は少なからずおられる
ので、様々な手法でのご提案を用意しています。
それは道具であったり素材であったり、狙いの感じに合わせて選択肢が
あります。
今回ご紹介の作品は色も合わせられたので、一見全くわからない感じに
なりました。

いわゆるピカピカの金属粉ではない仕上げをご要望でしたら、あらかじめ
ご相談下さい。


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モーニングカップのひび

私がお預かりして金繕いしたモーニングカップをご紹介します。
ズレが生じていた深刻なひびでした。


ドイツのKPMというブランドのモーニングカップというかなりたっぷり
飲み物が入るものです。
こちらに一部破損があり、ズレも生じているひびが入っていました。

実はお預かりした時点でひびにしっかりと茶渋が入っていました。
通常、深刻なひびの場合には漂白はお勧めしていません。
破損を埋める必要があるので、必然的に金属粉で仕上げが必要になる
からです。

ここで敢えて漂白を選択しました。
というのも以前に表に華やかな絵付けのある湯呑みをお預かりした際、
漂白に成功したことによって絵付けに仕上げを乗せないで済んだから
です。

数ヶ月かけて漂白したところ、ひびの隙間に茶渋がなくなったことで、
ズレが解消しました。
その結果、破損を埋めはしましたが仕上げの金泥は細く仕上げることが
出来ました。
白い器に金の線が1本。
潔さが美しい仕上がりになりました。

このような経験をするとセオリー通りが正解とは限らないと感じます。
臨機応変でその器にとって最適解を探すのも楽しみの一つです。


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トクサ情報2024.7

トクサは研草とも書き、ヤスリ代わりに使用する道具です。
金繕いでは陶磁器の釉薬を傷めずに欠損を埋めた部分だけ
研磨出来るので大変便利な道具です。

ただ道具としての販売経路が少なく、出来れば自分で育てて
頂きたいところ。
通常、初夏にポット苗が販売されるのですが、時期を過ぎた今、
販売しているところを見つけました。

販売していたのはホームセンター「コーナン」の市川原木店です。
価格の割に苗が小さいのは残念ですが、買いそびれてしまった方
には朗報かもしれません。

道具として使えない「大トクサ」ではなく、「トクサ」ですので、
お求めになりたい方はお早めに!


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