カテゴリー別アーカイブ: 基本のき

代用 粉鎮

金繕いの仕上げで使う金属粉は紙で包まれています。
いわゆる薬方包みに近い包み方なので、開けておくには
包みを押さえる道具が必要になります。

漆芸材料店では「粉鎮」といって書道の文鎮の小形版の
ような品物の取り扱いがありますが、それなりのお値段が
しますので、何か別の用途のものを代用されてもいいと思います。


Standard products カトラリーレスト


URBAN RESEARCH系の雑貨店 箸置き

ほとんどの方が箸置きを流用されていますが、海外旅行で残ったコイン
を使っている方もおられます。

避けたいのはカッターなどの削りカスが出る可能性がある刃物、静電気
が立つプラスチック製のケースです。
せっかくなら作業するテンションが上がる物を見つけられるといいの
ではないでしょうか。


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トクサの刈り取り2025

自宅ベランダで育てているトクサを刈り取りました。


トクサはスギナと同じトクサ科で、金繕いでは欠損を埋めた部分の
研磨に使用します。
紙ヤスリではなくトクサを使う理由は陶磁器の表面を痛めないことに
あります。
トクサが研磨できるのは表面に蓄積されたケイ酸があるからなのですが、
これが陶磁器の表面の釉薬と同じものなので削れないのです。

春に新芽が出たのを冬の寒気にあたって結晶化が進んだ今時期が刈り時
です。
今は空気が乾燥しているので刈り取った時には水分が滴るような状態
でもしっかり乾燥出来ます。

よく質問があるのが生育時に既に枯れてしまった先端が道具として
使えるかというものです。
答えは「否」です。
既に朽ちてしまっているので、道具としては全く使えません。

わざわざ枯れたところを採取してきたとおっしゃる方がおられるように
乾燥の手間が省けると考える方がありますが、無駄骨となりますので
ご注意下さい。


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不思議な割れ方

骨董の器には不思議な割れ方をするものがあります。

この時代、まだまだ焼成技術が成熟していないので、このような
問題が起きます。
無理矢理この形に整形されたものが、何らかの刺激(電子レンジに
かけた、ぶつけたなど)をきっかけに割れてしまうわけです。
特徴は厚みが変わる高台の周囲を回っていることでしょうか。

合わせたとしても完全にはまらず、ずれてしまう場合もありますが、
この器の場合はピッタリはまります。

仕上げをするとぐるっと回るラインが特徴的な感じになるかと
思いますが、まだまだ未熟だった日本の陶芸技術に思いを馳せて
容認してあげるのもよろしいかと思います。


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アイ・リンクタウン 展望ロビー

NHK学園市川オープンスクールがある市川駅前のザ タワーズ
ウエストには展望施設があります。


45階 展望ロビーからの眺め

先般「マツコの知らない世界」で夜景の穴場スポットとして紹介
されました。
私が行った日は残念ながら富士山は望めませんでしたが、スカイツリーを
含む夜景はやはり良いです。

展望ロビーのさらに上に外にある展望デッキにも出られます。
3階から45階に上がるエレベーターもシースルーなので、ちょっとした
アトラクション感覚も味わえます。

夜景でなくても他に遮るものない見晴らしの中、江戸川のゆったりした
流れを見るのもいいものです。
もしおついでがあればお立ち寄り下さい。


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鯛牙制作 2025

以前にも鯛牙を制作した様子をアップしましたが、このお正月に
新しい物を作りましたので、ご紹介します。


今回は加熱していない鯛の顎のご提供を受けて制作しました。
大きさに多少違いがありますが、合計6本です。

鯛牙とは丸粉で仕上げをしたところを磨いて光沢を出すための道具です。
先端から根本近くと牙のカーブと柔らかさが絶妙に磨きに合うのです。

基本的には藤那海工房の本漆クラスの方を優先にお譲りする予定です。

魚の状態で3kg以上の大きさがあれば、道具としての牙が取れます。
(天然の鯛に限る。養殖物に牙はない。)
ご興味のある方には作り方もお教え致しますので、お問い合わせ下さい。


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象嵌の花器

新年最初は私がご依頼を受けた金繕いの作品からご紹介致します。
象嵌の花器の割れです。


象嵌とは器の表面を彫り、その彫った部分に色のちがう粘土を
嵌めこんで模様をつける技法です。
器の表面に模様を描くのとはちがい、粘土そのものの色なので、
模様にメリハリがうまれます。
象嵌はもともと金工や木工芸でよく使われる技法です。

ご覧頂けるように高さ30cm弱の中に大変細かい細工がしてあります。
こちらは持ち主の方が作家さんにオーダーしたものだそうで、そう
いう意味では世界唯一の作品と言えます。

首の部分がいくつかに割れてしまっていたのを接着して欠損を補い
主に金泥で仕上げました。
縁の染付の紺の部分は目立たないように薫銀泥を使っています。

破損してしまったのは仕方ありませんが、金繕いをした箇所が
元々の造形に程よく馴染んでくれたかなと自負しております。


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面相筆の功罪

仕上げは誰でも良い状態で行いたいもの。
そこで勢い筆に頼りたくなるのが人情です。
しかしその選択は合っているのか、面相筆についてご説明
したいと思います。


一般に面相筆というと「人や動物の表情を描くのに適した穂先の細い
筆」とあります。
毛質や穂の長さはいろいろありますが、金繕いの仕上げの筆としては
ベストとは言えません。

画像の筆は穂先がイタチで面相筆の中でも質が上等なランクになる
ものです。
しかし拡大の画像でお分かりになるように穂先の毛のまとまりは良いとは
言えません。

水彩画、日本画など水分が多い画材ならば繊細な作業を行えると思い
ますが、粘り気の強い漆には腰の強さが足りません。

往々にして画材店で案内を乞うと面相筆を勧められるようですが、仕上げ
に適した筆は教室でご確認下さい。


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筆の収納

このところ、筆の収納をどうしたらいいか?というご質問が続き
ましたので、ご説明したいと思います。

筆の収納は大きく分けると筆巻と筆筒になるかと思います。
まず筆巻です。


こちらは私が自宅で使っている名村というメーカーのブラシケース
・ショート(水彩画用)です。
(紐は柔らかい質のものに交換しています)
画像でご覧頂けるようにかなりの本数の収納が可能です。
私は3つ折りで使っていますが、筒状に巻くことも可能です。
筆先側にカバーがついていますので、筆やキャップの脱落の心配が
ないのも評価出来ます。

こちらは筆筒です。
画材メーカー品から100円ショップ品まで様々あります。
メリットはコンパクトなところでしょうか?

難点は目的の筆を探しにくいところと、逆さまに収納してしまうと
筆先を痛める可能性があることです。

変わり種はキャンプ用のカトラリーケースです。
何とダイソーで330円。
立体的に丸められるので、テーブルの上で筆立てのように立てて
置くことも可能です。

難点は長さが筆に対してギリギリなこと。
カバーをすると筆先が潰れる可能性大です。

いろいろご紹介しましたが、お裁縫が得意な方は自分の使い勝手に
合わせて自作するのが一番かと思います。
何より大切なのは道具のコンディションが作業の質に関わるので、
穂先を痛めない方法を重要視するべきということです。


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総体漆繕い

NHK文化センター柏教室におられたSさんの作品を前回に
続いてご紹介します。
欠けを総体漆繕いで直されました。


画像正面に欠けがあったのですが、わかりにくいと思います。
こちらはご友人からの預かり物の茶碗なのですが、金属粉で
仕上げをするのではなく、できるだけ目立たないようにとの
リクエストだったそうなのです。
これを備前焼の赤茶色の色を新うるしの色を調合して再現
されました。

現在、陶磁器の修復方法を「金繕い(金継ぎ)」というので、
金や銀での仕上げが当然のように思われているかと思いますが、
技術の発端は漆の色で完成する「漆繕い」が原点です。

ただ器の色を漆で再現するのは簡単ではありません。
金や銀の金属粉で仕上げを行う方が下地の色に左右されることなく
簡単です。

また金属色はどんな色の釉薬でも相性が良いので、究極は失敗が
ないと言えます。

昨今の金の高騰で金での仕上げを避けられる傾向にありますが、
Sさんの作品のように完成度の高い総体漆繕いは難関なのです。


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長いひび

NHK文化センター柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
大皿の欠けとひびです。

縁の欠けから伸びたひびが長く、仕上げをするのが大変だったかと
思います。
ただ金泥が染付に映えて美しい仕上がりになりましたので、満足されて
いるかと思います。

このところ仕上げが上手くいかないというご相談が増えています。
まずどのように作業しておられるのが実演して頂いて問題点を把握する
ようにしているのですが、大抵は手順に勘違いがあることがほとんど
です。

金繕いはカテゴリーとしては工芸に分類されますが、器によって手順が
異なり、難しい部類に入ると思います。
特に仕上げは目にすることになるので、印象がこれで決まってしまう分、
皆様完成度にこだわられます。

仕上げを行う前には今一度手順を確認してから行われるのをお勧め
致します。


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