カテゴリー別アーカイブ: 日常の風景
代用 粉鎮
金繕いの仕上げで使う金属粉は紙で包まれています。
いわゆる薬方包みに近い包み方なので、開けておくには
包みを押さえる道具が必要になります。
漆芸材料店では「粉鎮」といって書道の文鎮の小形版の
ような品物の取り扱いがありますが、それなりのお値段が
しますので、何か別の用途のものを代用されてもいいと思います。
ほとんどの方が箸置きを流用されていますが、海外旅行で残ったコイン
を使っている方もおられます。
避けたいのはカッターなどの削りカスが出る可能性がある刃物、静電気
が立つプラスチック製のケースです。
せっかくなら作業するテンションが上がる物を見つけられるといいの
ではないでしょうか。
藤那海工房10周年
自宅を藤那海工房と称して金繕いの教室を始めて、この4月で
10年になります。
講師を始めた頃、自宅で教室を開けたらなぁと細やかな夢を
持っていましたが、それが叶って10年になりました。
最初は1クラスだけだったのが、徐々にご希望の方が増えて、
現在コンスタントに3クラスが稼働。
新うるしのクラスに本漆のクラスも追加されています。
だからというわけではありませんが、教室で使用しているスツール
のチェアパッドをリニューアルしました。
この物自体はIKEAの安価品ですが、原型は「スツール60」と
いう名作椅子です。
フィンランドの著名建築家 アルヴァ・アアルトが1933年にデザイン
した物です。
元々は3本脚ですが、IKEA品は4本脚になっています。
座面の角が丸くなった模倣品が広く出回っているほど、スタッキング
も出来る完成されたデザインです。
自宅で教室を開いている方を「サロネーゼ」というそうですが、優雅さ
より、ひたすら真面目に金繕いに取り組んで頂く教室です。
金繕いの他、さまざまな工芸の教室も行っておりますので、ご縁があり
ましたら是非お越し下さい。
トクサの刈り取り2025
自宅ベランダで育てているトクサを刈り取りました。
トクサはスギナと同じトクサ科で、金繕いでは欠損を埋めた部分の
研磨に使用します。
紙ヤスリではなくトクサを使う理由は陶磁器の表面を痛めないことに
あります。
トクサが研磨できるのは表面に蓄積されたケイ酸があるからなのですが、
これが陶磁器の表面の釉薬と同じものなので削れないのです。
春に新芽が出たのを冬の寒気にあたって結晶化が進んだ今時期が刈り時
です。
今は空気が乾燥しているので刈り取った時には水分が滴るような状態
でもしっかり乾燥出来ます。
よく質問があるのが生育時に既に枯れてしまった先端が道具として
使えるかというものです。
答えは「否」です。
既に朽ちてしまっているので、道具としては全く使えません。
わざわざ枯れたところを採取してきたとおっしゃる方がおられるように
乾燥の手間が省けると考える方がありますが、無駄骨となりますので
ご注意下さい。
不思議な割れ方
骨董の器には不思議な割れ方をするものがあります。
この時代、まだまだ焼成技術が成熟していないので、このような
問題が起きます。
無理矢理この形に整形されたものが、何らかの刺激(電子レンジに
かけた、ぶつけたなど)をきっかけに割れてしまうわけです。
特徴は厚みが変わる高台の周囲を回っていることでしょうか。
合わせたとしても完全にはまらず、ずれてしまう場合もありますが、
この器の場合はピッタリはまります。
仕上げをするとぐるっと回るラインが特徴的な感じになるかと
思いますが、まだまだ未熟だった日本の陶芸技術に思いを馳せて
容認してあげるのもよろしいかと思います。
風呂敷 小布
以前のブログにも書いていますが、風呂敷を愛用しています。
特に「濱紋様」という横浜捺染のデザインがお気に入りで
時々新作をチェックしては購入しています。
今回、購入したのは「そばちょこならべ」(手前)と「大玉文様」
(奥)です。
サイズは小布という50cm角で器の運搬に丁度いいのです。
風呂敷の結び方を教えておられる生徒さんが風呂敷は包むものによって
変幻自在なところが魅力とおっしゃっておられましたが、本当にその
通りだと思います。
そういう柔軟さを自分の心構えとしても持っておきたいですね。
鯛牙制作 2025
以前にも鯛牙を制作した様子をアップしましたが、このお正月に
新しい物を作りましたので、ご紹介します。
今回は加熱していない鯛の顎のご提供を受けて制作しました。
大きさに多少違いがありますが、合計6本です。
鯛牙とは丸粉で仕上げをしたところを磨いて光沢を出すための道具です。
先端から根本近くと牙のカーブと柔らかさが絶妙に磨きに合うのです。
基本的には藤那海工房の本漆クラスの方を優先にお譲りする予定です。
魚の状態で3kg以上の大きさがあれば、道具としての牙が取れます。
(天然の鯛に限る。養殖物に牙はない。)
ご興味のある方には作り方もお教え致しますので、お問い合わせ下さい。
象嵌の花器
新年最初は私がご依頼を受けた金繕いの作品からご紹介致します。
象嵌の花器の割れです。
象嵌とは器の表面を彫り、その彫った部分に色のちがう粘土を
嵌めこんで模様をつける技法です。
器の表面に模様を描くのとはちがい、粘土そのものの色なので、
模様にメリハリがうまれます。
象嵌はもともと金工や木工芸でよく使われる技法です。
ご覧頂けるように高さ30cm弱の中に大変細かい細工がしてあります。
こちらは持ち主の方が作家さんにオーダーしたものだそうで、そう
いう意味では世界唯一の作品と言えます。
首の部分がいくつかに割れてしまっていたのを接着して欠損を補い
主に金泥で仕上げました。
縁の染付の紺の部分は目立たないように薫銀泥を使っています。
破損してしまったのは仕方ありませんが、金繕いをした箇所が
元々の造形に程よく馴染んでくれたかなと自負しております。
筆の収納
このところ、筆の収納をどうしたらいいか?というご質問が続き
ましたので、ご説明したいと思います。
筆の収納は大きく分けると筆巻と筆筒になるかと思います。
まず筆巻です。
こちらは私が自宅で使っている名村というメーカーのブラシケース
・ショート(水彩画用)です。
(紐は柔らかい質のものに交換しています)
画像でご覧頂けるようにかなりの本数の収納が可能です。
私は3つ折りで使っていますが、筒状に巻くことも可能です。
筆先側にカバーがついていますので、筆やキャップの脱落の心配が
ないのも評価出来ます。
こちらは筆筒です。
画材メーカー品から100円ショップ品まで様々あります。
メリットはコンパクトなところでしょうか?
難点は目的の筆を探しにくいところと、逆さまに収納してしまうと
筆先を痛める可能性があることです。
変わり種はキャンプ用のカトラリーケースです。
何とダイソーで330円。
立体的に丸められるので、テーブルの上で筆立てのように立てて
置くことも可能です。
難点は長さが筆に対してギリギリなこと。
カバーをすると筆先が潰れる可能性大です。
いろいろご紹介しましたが、お裁縫が得意な方は自分の使い勝手に
合わせて自作するのが一番かと思います。
何より大切なのは道具のコンディションが作業の質に関わるので、
穂先を痛めない方法を重要視するべきということです。
藍の復活
今夏の酷暑で藍が枯れてしまったと以前のブログに書きましたが、
実は虫の息で残っていた株があったのです。
もしかして何とかなるかもと水やりを続けていたところ、涼しく
なったところで遂に花が咲きました。
問題は受粉するかどうかなのですが、上手くいけば種が取れます。
復活も遂げたことですし期待して待つことにします。
6styles@女子美’83 展
友人の高橋文子さんが参加しているグループ展を拝見して
きました。
高橋さんは刺繍作品を出品しています。
日本刺繍他、様々な分野の刺繍を修めた高橋さんの作品は上品さと
可愛らしさが同居していて、とても魅力的です。
画像は購入させて頂いたブローチですが、帯留に変えられる金具を
使って帯留として使う予定です。
今回、海の生き物をモチーフにしたシリーズも出品されていたのですが
こちらも素敵でした。
もう1点、購入したのが森下和枝さんの、こちらもブローチ。
帯留にしたら面白いかも、と思ったのですが、冬に愛用しているニット帽
が愛想がなかったので付けてみたところ、とても相性がいいではありませんか。
今冬はこの組み合わせで楽しみたいと思います。
秋はいろいろ展覧会のお誘いがあって楽しい季節です。