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世田谷ボロ市2013 結果報告1
12月15日行って来ました、世田谷ボロ市の結果報告です。
まずは成功篇から。
印判の皿です。
上段は銅板印判。各¥100。
下段は紙型印判。各¥200。
印判は総じてリーズナブルですが、好みが合えばお買い得です。
(欠け、ヒビ有りです。)
上段の銅板印判は、柄が飛んだりしているのも愛嬌になる温かみが
魅力です。
下段の紙型印判は、柄が緻密で優美なものもあります。
修復するのが前提での購入ですが、この値段ならば成功でしょう。
お盆の修復 当て木
先般から進めているお盆の修復ですが、裏面を紙ヤスリで磨く際に
当て木を使用しました。
工作をされる方なら当たり前のものですが…
平滑に磨くには当て木は必須です。
手に巻いた程度では、手なりで歪みが出てしまうからです。
同様にトクサで磨きを行う際にも芯を入れる場合があります。
どのような物を芯にするかは、磨くものにも依りますので、
適宜ご説明したいと思います。
お盆の修復 削る
先般から取り組んでいるお盆の修復ですが、埋めていたヒビの
部分を削ってみました。
使用したのは、220番の紙ヤスリです。
縁の上面に少し溝が残っていますが、側面のヒビはほぼ埋まりました。
本漆は完全に硬化していましたが、念のためゴム手袋をして作業を
しています。
削りカスも、しっかり回収。
(本漆は塗る時だけではなく、削る時にもカブレの危険性があります。)
木目のアバレが出ておりガタつきがあるので、裏面を削る作業も合わせて
行いました。
画像で言うと上下方向を軸にして、左右方向に反っています。
これを板に巻いた100番の紙ヤスリで調整しました。
トータル3時間ほどの作業時間。
ほとんどが裏面の削りでした。
あとはヒビの部分を馴染ませながら、拭き漆を行う予定です。
お盆 ヒビ止め中
このところ、川口教室の公開講座や本講座開講の準備で後まわしに
なっていたお盆の修復を再開しました。
ヒビ止めの作業です。
周りをヤマトのりでマスキングして、透漆をしみ込ませています。
これを溝が埋まるまで、繰り返します。
使用しているのは、播与漆工さんで出している『すぐ塗れ〜る』という
商品です。
これはマニュキュアの瓶に漆が入っているので、筆の始末をせずに
作業が出来るところが魅力です。
硬化が従来の漆より早いMRⅢという新精製法の漆を基材にして
いるのですが、カブレるのは変わりがありませんので、注意は
必要です。
思っていたよりヒビが深いので、しばらくこの作業を続けることに
なりそうです。
川口教室 参考作品
7月11日から開講する、よみうりカルチャー•川口教室に参考
作品を展示して頂いています。
昨年末の世田谷ボロ市で購入しました蕎麦猪口です。
もう少しで割れてしまいそうな深刻なヒビと口縁に複雑な欠けがあり
ました。
特に欠けは何工程にも分けて埋めたので時間がかかりましたが、
器をぐるりと回ったヒビの線が印象的な直しになりました。
川口教室は、まだ残席がございます。
ご興味がおありでしたら、参考作品だけでもご覧頂けたら嬉しいです。
よく見ると…2
この4月から新規受講して下さった方が持参された器の数点に、
先般ブログでアップしたような『パテ』直しのものがありました。
下の画像はNHK文化センターユーカリが丘教室で受講されている方の
物です。
画像の下部に外して頂いたパテ部分が写っています。
このケースでは表面を白く塗装して、本体に馴染ませるような
細工がされていました。
またNHK文化センター柏教室では、磁器の皿に陶器を呼び継ぎした
ように見える加飾されたパテが入れられている物がありました。
お持ち下さった方が驚かれている様子を拝見しますと、納得いく
修復をして頂けるようご説明しなければと思っています。
お盆の修復 汚れ落とし
以前ブログでご紹介しました、京都の骨董市で購入して
きたお盆の修復を始めました。
修復の第1歩として、メラミンスポンジで汚れ落としを行いました。
表面は元々しっかり漆が塗り込まれていたので、それほど変化が
ありません。
しかし裏面は漆も剥げていますし、木目の暴れがあって不陸があります。
一部欠けている部分もあります。
そしてヒビもあります。
次のステップは、このヒビを止めます。
そして不陸の調整と、欠け部をならす予定です。
鶴天•鶴頭 論文入手
国会図書館に鶴天•鶴頭に関する論文が掲載された「根付の雫」
という根付研究会の会報が収蔵されているという情報を頂いて
おりましたが、ようやく閲覧に出かけて参りました。
馬の歯だったと結論づけた60号だけでなく、経緯を記された46号、
48号も拝見し、研究者の真摯な姿勢に大変感銘を受けました。
研究の始めには、なかなか協力を得られず、ご苦労があったようですが、
研究を主導された木村郁子先生が、たまたま愛読されていた雑誌に
動物の歯は染色すると縞模様になるという大きなヒントになる記事が
掲載されていたというお話は、まさに天啓。
求める者には与えられる、ということなんですね。
その後光学顕微鏡とマイクロFT-IR分光分析の非破壊分析で、草食動物の
歯と特定。
ついには貴重な鶴天を歯科用ドリルで破砕し、DNA抽出という英断の
結果、馬という結論を得られます。
論文では残念ながら馬が日本在来種かどうかまでは特定出来なかったという
ところで終わっています。
私としては朱肉様のものとされた染色材が何なのか、馬の歯を接着した物が
何なのか、更なる研究を待ちたいところです。
しかし鶴天というネーミングもさることながら、馬の歯を接着し丸く研磨、
縞模様に染色するという技法に行き当たった江戸時代の職人の成り行きも
気になります。
まだまだ興味の尽きない鶴天•鶴頭、また何か情報を入手しましたら、
ブログでご報告致します。
追記1 歯は染色された象牙質と染色されないエナメル質から構成されて
いるため、きれいな縞模様になるそうです。
追記2 緒締玉として使われた場合は『鶴天』、穴に彫金された銀の棒を
通した髪飾りを『鶴頭』と称するようです。
お盆
先日行った京都•東寺の骨董市で購入してきたのが、このお盆です。
ごく一般的なお盆ですが、日用品としてばかりでなく、細かい作業の
際にも使えます。
木の目が気に入って、軽い物をずっと捜していたのですが、京都で
やっと出会えました。
原一菜(いちな)先生のお見立て付きです。
最初店主から2,000円と言われたのですが、「ヒビがあります!」と
訴えてみました。
店主も「これはヒビと言えるな。」と1,500円に。
このあとの会話が面白かったので、ト書き風にお伝え致します。
(京都弁が少々アヤシイのは、ご容赦下さい。)
私 新札で2,000円支払い。
店主「新札やな。お金持ちになった気分や。」
私 「それなら、もう少しおまけして。」
店主「それはあかん。一度もらった物は返えされへん。」
もちろん私も本当におまけしてもらおうと言った訳ではないのですが、
かなりユニークな店主だということが、最初の会話でわかったので、
冗談で言ってみた訳です。
骨董商の方は個性的な方が多く、このような会話も楽しさの一部
ではないでしょうか。
さて購入したお盆ですが、まず汚れを落とし、ヒビの止め、木のあばれ
の調整をし、拭き漆で再仕上げをする予定です。
よく見ると…
NHK文化センター千葉教室のHさんのお求めになった
蕎麦猪口です。
縁に2片の割れがありましたので、これを接着したところ
です。
向かって右側の釉薬がざらついています。
染付の色も、明るく鮮やかな部分があります。
内側です。
やはり明るい鮮やかな染付が入っています。
結論から言うと、ざらついている部分は『パテ』で、
明るい鮮やかな染付は、七宝釉のような融点の低いもので
描き加えられている可能性が高いのです。
骨董市で欠損部を『パテ』で補っている物はめずらしくない
のですが、染付の柄を描き加えているのは珍しいと思います。
このあとどう修復していくか、Hさんとお話致しましたが、
『パテ』が、隣にある器本来の破片に喰い込んでしまって
いるので、このまま足りない部分を補って直していくことに
なりました。
本来ならばいずれ剥落する『パテ』はカッターで削り
取ってしまって、最初から直して行くのをお勧めしたいの
ですが、今回ご紹介した器のように状態をみて、方針を
考える場合もあります。