カテゴリー別アーカイブ: 生徒さんの作品
桜
NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介致します。
マグカップのひびの金繕いです。
記念の品であるマグカップにひびが入っていました。
ひびを金泥で仕上げた後、マグカップに元々入っている桜の図柄を
ひびの仕上げのラインに絡ませるように蒔絵されました。
これでひびのラインの痛々しさがかなり減じていると思います。
5弁の桜の花の位置、花びらの位置とも、とてもいい位置に入って
いると思います。
蒔絵で破損の印象を和らげる場合、元々器に入っている柄を使うのが
最もおすすめですが、Sさんの作品はその成功例です。
記念品の器の場合、絵柄が印刷になっており、耐久性がない場合が
あります。
金繕いする際には手順をよく確認してからの着手をお勧め致します。
カルトナージュの道具箱
NHK文化センター柏教室のTさんのお道具箱をご紹介致します。
カルトナージュという厚紙で作った箱に、布や紙を貼るフランス
で生まれた工芸の手法で作られています。
形、大きさはもちろんのこと、用途に合わせて引き出しが分けられて
います。
さっと道具が出てきて、とても使いやすそうです。
金繕いの教室にお越しになる方は手仕事がお好きな方が多く、道具と
その収納に凝られておられます。
Tさんの道具箱はそれらの中でも最大級の凝り具合と言えます。
上部の刺繍は鳥獣戯画。
楽しんで作られたのが、わかります。
皆様もご自身の好みで作ってみませんか?
渋い
先日に引き続き藤那海工房 金繕い教室のKさんが銀泥で仕上げ
して渋く硫化した自身の作品をお持ち下さいました。
よくどのくらいで硫化しますか?と質問を受けるのですが、冗談
を交えて「神のみぞ知るです。」とお答えしています。
というのもご自宅の空間内にどのくらい硫化する要素(硫黄)が
あるかによって変わってしまうのです。
早い方だと数週間で変化がありますし、遅い方だと年単位で変化が
ありません。
一般的にご家庭だと界面活性剤やクリーニング溶液で変化が促される
ようです。
少なくとも仕舞い込まず、お使いになっていた方が進むと言えます。
経年変化が楽しめる銀泥は、たくさんの方を魅了しています。
蓋に波
藤那海工房 金繕い教室のKさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋の割れの接着です。
磁器なので縁の部分が薄いのですが、これが波紋のような形で
割れていました。
まず難しかったと思われる接着をされ、欠損を丁寧に埋められました。
金泥の仕上げはまさに波紋。
上品な蓋の柄と合っています。
Kさんは慎重に作業を進めるのが持ち味の方です。
その丁寧さが発揮された美しい作品になりました。
想像で描く
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
鉢の割れの接着です。
接着後、欠損して太く金泥の仕上げが入っていたところを元々の絵柄
と同じ弁柄漆で柄を描き足されました。
全くわからなくなっている部分を葡萄蔦らしく描かれているのは染色家
であるKさんの面目躍如と言えるでしょう。
このちょっとした工夫はたくさんの方がチャレンジして下さっていますが、
とても自然で効果が高い方法です。
臆せずチャレンジして頂きたいと思います。
あえての仕上げ
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介致します。
盆栽を習っておられて、それで使っていた鉢の割れを
直されました。
盆栽は鉢が重要なアイテムだそうで、その意匠は重要な評価ポイントに
なることをご存知の方は多いと思います。
Hさんがお持ちの鉢も煤けたような表面が特徴のもので、通常の金属粉
の仕上げは合わないというお考えでした。
そこでご提案したのが通常は仕上げには使わない素材です。
使って頂いたところ悪目立ちせず、自然な仕上がりになったかと思います。
金繕いに「ねばならない」はないと思います。
Hさんのように「こうしたい」というご希望をおっしゃって頂ければ
対応策を捻り出したいと考えています。
どうぞ柔軟な発想で通り組まれて下さい。
馴染んでいます
NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介致します。
マグカップの取手の接着・補強です。
マグカップの取手が割れてしまったのを補強を入れて再び使用可能に
された作品です。
元々金彩の入ったマグカップなので、取手の内側に入った取手が
馴染んで補強とはわからないと思います。
特にSさんは作業が丁寧で美しいので完成度の高さも見て頂きたいところ
です。
一菜会の特色として補強の多彩さがあると思うのですが、マグカップの
取手の補強は馴染み感と強さで誇れる技術だと考えております。
ただ相応に難しさと手間がかかりますので、ご自身がどのように使いたい
かをご検討の上、挑んで頂きたいと思います。
緩和する
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介します。
抹茶茶碗の割れです。
割れのラインがインパクトが強すぎるということで当初は表の柄と
同じような円形の蒔絵を考えられていました。
しかしこれも重過ぎたのでスポンジングという方法に落ち着きました。
京焼きのお抹茶茶碗にはよく群雲のような柄が入っています。
スポンジングの柄はそれに類似しているので違和感がないかと思います。
このスポングングの方法は時々ご紹介していますが、様々な道具で
表現されます。
チャレンジしてみたい方はあらかじめご相談下さい。
破損のままに
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介致します。
お茶碗の割れでした。
典型的な鳥脚型の割れ方です。
接着後、欠損部分を補われて金泥で仕上げておられます。
仕上げの質問で多いのが欠損が太いところに合わせて仕上げの線の太さを
太くするのか?というものです。
この場合、欠損に合わせて自然に線を描かれるのが良いです、とお答え
しています。
Hさんの作品は欠損に合わせて自然な線を描かれています。
特に表の趣のある絵付けととても相性がよく、イキイキとした仕上げに
なっているのがご覧頂けるでしょう。
もしこれが欠損の太い部分に合わせて全体が均一の太い線になっていたら、
随分印象が違っていたかと思います。
仕上げはあるがままに、をお薦め致します。
美しきズレ
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品をご紹介
致します。
大鉢の接着です。
大きく割れた破片を接着されたのですが、ズレが生じてしまって
いました。
このような場合「斜め削り」と言っているのですが、接合線の
ズレ部分に弁柄を塗り重ね、滑り台様に削って違和感を無くす
方法をお勧めしています。
Oさんの作品の場合、それがリボンが翻ったようになったことで、
器の陰刻で表現された葉の紋様に呼応してデザインとして成立
しています。
当初、蒔絵を入れる心つもりをしていたOさんですが、斜め削りの
ままの仕上げで終了されました。
日本文化は「足らぬがよし」と言い、やや不足と感じるくらいが
ちょうどいいと考えます。
器はお食事が盛られて完成形と考えると加飾しすぎないことが大切
かもしれません。
Oさんも薫銀泥で仕上げた形に満足されたようで、良かったと思って
います。