カテゴリー別アーカイブ: 展覧会•イベント
コンクリートに漆塗り
先日の庭園美術館•次室について、レポートします。
次室は香水塔と呼ばれるアンリ•ラパン(画家•室内装飾家)がデザイン
したオブジェがあり、これが見所のひとつとなっています。
これの台座と、柱が漆塗りなのです。
それもコンクリートに漆塗りというのが重要で、金沢の漆職人で
あった遊部重二氏が考案し、昭和5(1930)年に特許を取得しています。
しかし技術としては、半世紀以上前になくなってしまっていました。
それを今回のリニューアルで再現に成功したそうで、展覧会では
そのサンプルを触ることも可能です。
展覧会上の資料では、この技術の具体的な案内がありませんでした
ので、どのような工夫がなされているのかわかりません。
想像するにアルカリ性のコンクリートに対し、生の漆が活着するのが
難しいのではないか、ということくらいです。
いずれにしろそれを克服する技術が復活したということは、漆の
史上最強の塗料としての面目躍如と言えるでしょう。
次の機会には、香水塔の復元についてレポートしたいと思います。
庭園美術館リニューアルオープン展
友人のアーティスト•大古瀬和美さんから、良いですよ!と
ご紹介を受けて東京•白金台の「庭園美術館」リニューアルオープン展
に出かけてきました。
庭園美術館は、1933(昭和8)年に朝香宮家の本邸として建てられたもの
ですが、今回の修復は創建当初の姿に戻すという主旨で行われています。
入口入ってすぐ正面にあるルネ•ラリックデザインのガラスです。
このように庭園美術館の見所は、アール•デコ建築であることです。
素材、デザイン、技術など、当時最高峰を極めた建物で、どこを
見ても見所になるというくらいの“こだわり”があります。
この建物の中に、タイアップ企画の内藤礼さんのアートがあります。
いずれも小さなオブジェなので、それを見つけて空間の中での有り様を
感じるというのが、面白いと思いました。
大古瀬さんから、興味深い情報として教えて頂いたのが香水塔のある次室に
ついてです。
これについては、また日を改めてご紹介致します。
世界のクリスマス2014
今年もボランティア撮影に行って参りました。
横浜山手西洋館のイベント「世界のクリスマス2014」です。
このイベントは、横浜山手の丘に保存•公開されている7館の
西洋館各館がテーマ国別にクリスマス飾りを行うものです。
◯山手111番館 日本「My PRECIOU COLLECTIONS」
◯横浜市イギリス館 イギリス「シーズン•オブ•ブリティッシュ•ファミリー•トラディション」
◯エリスマン邸 イタリア「聖フランチェスコのまなざしで見るクリスマス」
◯外交官の家 アメリカ「Style of NY〜X’mas holidays〜」
◯ブラフ18番館 シンガポール「海を臨むクリスマス〜東洋の貴婦人と共に〜」
今年は各館飾り付けに個性があり、例年にない装飾方法など
見応えがありました。
私が特に気に入ったのは、ブラフ18番館です。
もし画像を見て、実物をご覧になりたいと思われたら、是非お出かけ
下さい。
イベントは12月25日(木)までです。
外交官の家、ブラフ18番館があるイタリア山庭園では、12月20日(土)に
2000個のキャンドルで庭園内を彩る「キャンドルガーデン」が行われ
ます。
余談ですが、各館で取り扱っているA4サイズのクリアファイルは、
私がデザインしたものです。
良かったら合わせてご覧下さい。
根津美術館「名画を切り、名器を継ぐ」
現在根津美術館で行われている「名画を切り、名器を継ぐ」
という展覧会に出かけてきました。
この展覧会は現在私たちが目にしている古美術品が、将軍や茶人を
はじめとする所有者達によって改変や再生された点に注目し、
その作品の扱われ方、鑑賞のされ方の検証を試みたものです。
数多く名品が展示されていますが、私が特に注目したのが、名画では
佐竹本三十六歌仙絵です。
こちらは大正時代に売りに出されたものを、時の有力者が分割
所有したといういわれがあります。
絵画的には、後の姫君の描き方のお手本になった点が重要です。
華やかな女性歌人3人が揃って展示されるのは大変めずらしいそう
なので、もしご都合がつくならば展示期間の10月13日までにお出かけ下さい。
名器としては、まさに繕いがされた器が展示されています。
画像はポスターにも掲載されている大井戸茶碗 銘 須弥(別銘 十文字)
です。
これは古田織部がもともと大きかった茶碗を十文字に切り、径を小さくして
継いだと言われていますが、その他割れの接着あり、鎹止めあり、と
様々な修復がなされています。
器はこの他、赤楽茶碗 銘 乙御前、瀬戸筒茶碗 呼継、赤楽茶碗
銘 木守など、原一菜(いちな)先生の著書に取り上げられている器が
多数展示されています。
金繕いをなさる方には、是非見て頂きたい展覧会です。
台北 国立故宮博物院展
ようやく「台北 国立故宮博物院」展に行ってきました。
「翠玉白菜」の展示が終了してから、混雑が緩和されたと聞いては
いましたが、夕方16時半に本館から見学を始めました。
その後平成館に移動しましたが、詰まることなく余裕で見られる環境
でした。
第1会場に汝窯青磁が4点、他は書画が中心です。
第2会場には漆芸を含めて工芸品が多く展示されています。
中国の文化は日本の文化の源ですが、その形がどう変化しているのか。
また中国自体の文化が、どう変わっていったのか。
そう見ていくと、とても興味深い内容でした。
会期は9月15日(月)まであります。
よろしかったらお出かけ下さい。
希望の実る木の下で
友人のアーティスト大古瀬和美さんのグループ展が、日本橋の
ギャラリー砂翁&トモスで行われているのに、出かけてきました。
「祈り」をテーマにした、大古瀬さんの作品です。
金箔を貼った上に、じっくり制作した色の積み重ねがとても美しいです。
大古瀬さんの作品は、シンプルな構成がインパクトがありますが、この
積み重ねが見る者を引き寄せるように思います。
右側が、白から作り始めた最新作です。
白というと、私には原点というイメージがあります。
大古瀬さんの新しいスタイルの始まりとして、とても期待しています。
グループ展の他の方々の作品です。
6人それぞれの作風なのに、何か統一した空間に見えるのが、
グループ展の魅力です。
ギャラリー砂翁&トモスは、開店したばかりのコレド室町2•3からも
近いですし、小津和紙店や漆刷毛の江戸屋さんなど、金繕いをされて
いる方が興味を持たれるお店の近くでもあります。
会期が8日(金)までですので、お近くにおでかけの際にはお立ち寄り
頂ければ幸いです。
横浜山手西洋館 花と器2014
毎年恒例 横浜山手西洋館のイベント「花と器のハーモニー2014」が
開催されています。
今年のテーマは“横濱山手のおもてなし〜スイーツ Story”です。
○山手234番館 〜if•千利休と私の友達をスイーツでおもてなしをするとしたら〜
◯横浜市イギリス館 「バラのテーブル〜ヴィクトリア女王が愛したお菓子とともに」
◯山手111番館 Bon Mariage 〜Jardin nostalgique
グランプリを受賞したのは、エリスマン邸。
準グランプリは、山手234番館です。
今年はどの館も上品で完成度が高いというのが私の感想ですが、
それは花活けボランティアなどで館の装飾に慣れたコーディネーターに
依頼したことに関係あるのかもしれません。
ちなみに私が一番いいと思ったのは、外交官の家です。
館のイメージに合った装飾と、場所場所で違ったデザインが楽しめた
からです。
会期は今週末の15日(日)まで。
お天気もよいようなので、散策がてらお出かけ下さい。
日本画展2つ
友人の日本画家が出展している展覧会が銀座で2つあり、ハシゴして
見てきました。
画像左の「渺渺展」は、若手日本画家34名によるグループ展です。
おもしろいのは各人の表現方法の多彩さです。
門外漢の私には、どうやっているのか全くわからないのですが、
興味をそそられます。
若手の勢いを感じられるのも、楽しみの一つです。
画像右手の「こころばえの会」は、女性9名によるグループ展です。
こちらもそれぞれの感性の響き合いが心地よい展覧会です。
9人9様の画風が画廊の中で共存し、なごみます。
「渺渺展」は、銀座貿易ビル 東京銀座画廊で6月15日(日)まで。
「こころばえの会」は、森田画廊で6月14日(土)まで。
良かったらお出かけ下さい。
水墨画展
友人が習っている水墨画のグループ展に行ってきました。
今回の展覧会は、従来の水墨画にないような画題のものがあり、
楽しく拝見しました。
材料は全く違いますが、水墨画に金繕いの仕上げの感覚に近いもの
を感じています。
友人の作品は筆の運びが美しく、とても参考になります。
第25回草木会展
原一菜(いちな)先生が出品されている第25回草木会展を
見に行ってきました。
草木染というと一般的な言葉として浸透していますが、実は草木会代表
の山崎和樹先生の祖父山崎斌(あきら)先生が、合成染料による染と
区別するため、古式ゆかしい草根木皮による染めを「草木染」と命名した
ことに始まります。
草木染は民芸調のイメージが強いと思いますが、草木会の作品は草木染
のみに限定(合成染料は一切使用しない)し、染めの技術と意匠の
クオリティの高さで一線を画していると思います。
私自身昨年生藍染めを経験してみて、自然の色の美しさを実感しており
ますが、皆様にもそれをご覧頂ければと存じます。
特に原一菜先生の貴重な自生ムラサキを使った染色は必見です。