高麗茶碗展

現在、三井記念美術館で行われている「茶の湯の名碗−高麗茶碗」展
に出かけてきました。

高麗茶碗とは朝鮮で日常雑器として使われていたものを侘び茶の茶碗に
見立てたものと日本の為に焼かれてものに分けられます。

以前「井戸茶碗展」を拝見しましたが、同じような釉薬のものが並び、
どれがどれだかわからなくなるという状態になってしまいました。

しかしこの展覧会ではしっかりキャプションで説明があり、タイプごとに
数点並べることで特徴が把握出来るようになっています。
説明が丁寧なので、見分けがつかなかったカテゴリーが整理出来ました。

私のお勧めは展示室2の「粉引茶碗 津田粉引」です。
粉引の温かみがありつつ、とても繊細な形をしています。
展示室2に1点のみ飾られているのが相応しいお茶碗です。

また展示室4に参考展示されている掛け軸がさりげなく名品です。
こちらもお見逃しなく!
12月1日(日)まで。


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本漆の仕上げ

藤那海工房 本漆クラスのOさんの作品をご紹介致します。
お皿の割れを接着されました。


本漆の仕上げでは丸粉という金塊をヤスリで擦り下ろして丸めた粒状のものを
蒔いて頂いています。
それを生漆で粉固めして、鯛牙と紙やすりで磨き上げて頂きました。

あまり磨き過ぎず、渋めに上がったのもお皿の絵柄に合っていて、素敵に
仕上がったと思います。

本漆は釉薬への活着が悪く、絵柄を入れたい場合は釉薬を荒らすか、ガラス用
漆を使用することになります。
相変わらずガラス用漆に抵抗がある私は、自ずと仕上げは欠損通りになります。
ただこの辺はお考え次第なので、本漆でも加飾をなさりたい場合は、ご指導して
おります。

また丸粉を使用すると耐久性は高くなりますが、必然的にコストが高くなります。
後々の変色を承知の上で真鍮や錫などの安い金属粉を使用するか、消粉と呼ばれる
箔を粉砕したものを使う方法もあります。
消粉の場合は耐久性が低いことを承知しておく必要があります。

Oさんの作品を見て、せっかく本格的にこだわって本漆を使われるのなら、粉固め
が出来る丸粉がいいのではないかとしみじみ考えています。


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銀座・奥野ビル

今日は大学の先輩・同級生の展覧会をハシゴしてきました。
その内、同級生のグループ展が行われた建物がとても面白かった
ので、ご紹介したいと思います。

それは銀座・奥野ビルです。
銀座で最も古いビルで1932~34年に左右のビルが建てられました。

スクラッチタイルに2重扉のエレベーター…何となく同潤会アパートを
イメージしたのですが、設計者が同潤会の設計にも参加していた方
だそうで、類似も納得です。

現在70あるテナントのうち、20がギャラリーになっていて、それらを
巡るというのも楽しいかと思います。

建物が面白かっただけでなく、大学の先輩・同級生がそれぞれの道で
活躍している様子を拝見出来て、元気をもらった1日となりました。


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仕上げデビュー

NHK文化センター千葉教室の生徒さんの作品をご紹介致します。
まずはYさんです。

趣きのある絵付けの湯のみです。
割れてしまったのを接着されて金泥で仕上げられました。
場所によって線の太いところと細いところが出るのが面白味になっています。


こちらはHさんの作品です。
V字型に割れてしまったものを接着され、金泥で仕上げられました。
仕上げの線が端正に描かれているのがカップにあっていて、とても
綺麗です。

お二人とも仕上げを初めてなさったのですが、いずれも秀逸な完成度
です。
仕上げは皆様緊張しがちですが、まずはやってみることをお勧めします。
何より上手になるには「場数」です。
頭でわかっていても実際やってみなければわからないことが多いのです。

よく仕上げをする器を貯めておかれる方がいらっしゃいますが、少し
ずつコンスタントに作業していた方が、毎回の上達が望めます。
まとめて仕上げてしまうと、その時の実力で全て出来てしまうことに
なってしまいます。

仕上げは何度でもやり直しが出来ます。
どうぞ積極的にチャレンジしてみて下さい。


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器との相性

NHK文化センター柏教室のSさんの作品をご紹介致します。
特徴的な釉薬のお皿の割れを金泥で仕上げられました。

ベージュ系の釉薬には金泥が程よく馴染みます。
そこに割れに忠実に仕上げられた線がとても美しいです。
金繕いの王道と言った完成度です。

Sさんはとてもこだわりを持って作業されます。
その積み重ねが、このお皿の完成度の高さを産んだと考えております。
例え牛歩の歩みと思ってもその努力は裏切らないとSさんの作品は
証明して下さいました。

どうぞ参考になさって下さい。


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藍の花の終わり2019

10月の中下旬に生藍染めを行なった藍はすでに花期を終えつつあります。


1年草の藍はこの後、種をつけて枯れて行きます。
今なら後1回くらい染められそうと欲が出つつも、藍の終わりを見つめる
つもりです。
半年以上の間、毎日水やりをしていたのも、そろそろ卒業と思うと感慨
深いです。

ここ数年の失敗から生育に成功し、個展での敷き布が染められるなど、今年は
本当に大きな成果を得ました。
感謝、感謝です。


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金彩を戻す

NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介致します。
割れの接着後、縁の金彩を戻されました。

縁の金彩が薄くなってしまうのは、Hさん同様、骨董ではよくある
ことです。
また洋食器でも金彩が施されていることが多いので、ご要望が多く
あります。

Hさんの場合、金箔を貼られて戻されました。
完璧を目指しているうちに何度か貼り直しをされたそうで、金色が
眩く光っています。

金彩の入っている部分で方法が変わりますので、なさりたい場合は
一度教室でご相談下さい。


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正倉院の世界展 後期

「正倉院の世界」展が後期の展示替えとなったので、再び出かけ
ました。
先日は大雨の最中に出かけたので会場はとても空いていましたが、
今回は二重三重の人垣が出来る混雑ぶりでした。
ですので効率よく第2会場から後期展示のみの品を選んで見学しました。

今回の目当ては木画の琵琶とガラス器でした。
特に琵琶は進みながら見るようになっているので、数回並んでじっくり
拝見しました。


画像は会場に再現された正倉の扉に付けられた錠の様子です。
勅書を付して竹皮に包まれます。
その錠を開ける厳かな式典の様子もVTRで拝見出来ました。

先般の沖縄・首里城の火災を考えますと、日本ばかりでなく世界の宝と
言ってもいい宝物が大切に伝承されていくことを願っています。


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フリーカップの割れ

産経学園ユーカリが丘教室のMさんの作品をご紹介致します。
18ピースに割れたフリーカップの接着です。


一度座の部分の欠けを金繕いされたフリーカップが再び破損。
今回はカップの部分がバラバラに割れてしまっていました。
その数18ピースです。

まずのりうるしで接着し欠損を埋めた後、カップ部の内側を和紙で補強
されました。
これは飲み物を入れた時にカップ部が水圧で再び破損してしまわない
ようにするためです。

仕上げは外側が準金泥(真鍮泥)、内側が真鍮箔です。
通常私共では真鍮はお勧めしておりません。
それは後で黒ずんだように変色してくるからです。
Mさんはそれをご理解頂いた上でお使いになりました。
理由は器のイメージに合うからです。
このような判断であれば、ご使用頂くのは構いません。

Mさんは磨く作業がお好きというだけあって、どんな作業も丁寧に
されます。
内側の和紙貼りも完璧に磨き上げてから真鍮箔を貼られましたので、
まばゆいくらいの輝きを放っています。
一つ一つの作業を丁寧に重ねられた結果が、この完成度に繋がって
います。
是非参考になさって下さい。


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プラモデル制作道具の活用

以前からプラモデル制作道具に使えるものが多いとブログに書いて
きました。
先日、NHK文化センター柏教室のHさんが面白いものを持って
来られたので、ご紹介したいと思います。

Hさんは他の教室でもなさっている方が多くおられる箸の塗り直しに
チャレンジなさっています。
箸を塗り直した場合、必ずどこかを固定して塗った部分を乾燥させる必要
があります。
それぞれ工夫して持ち帰られているのですが、Hさんがお持ちになったのが
プラモデル制作道具です。

こちらは先端にクリップのついた棒を固定させる紙製の台です。
中に巻きダンと呼ばれるダンボールの片面のないものが詰められています。
その穴に箸が固定出来るのです。
お帰りにはさらに固定した台を包むように紙袋に入れていかれました。

この他、発泡スチロールとか巻きダンで包むとか色々な方法があります。
新しい方法を見つけられたら是非お教え下さい。


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