日本・東洋 陶磁の精華

現在、出光美術館で行われている「日本・東洋 陶磁の精華」
という展覧会に行ってきました。

ご存知の方もおられるかと思いますが、出光美術館は建物の建て替えに
伴い、一時閉館が予定されています。
その閉館前に出光美術館の軌跡を表す展覧会の一つです。

出光美術館は国宝2件・重要文化財57件を含む約1万件のコレクションを
有する美術館として広く知られています。
その中から陶磁器に絞って
中国「シルクロード」「皇帝のうつわ」
朝鮮・日本
「交流」「中国陶磁の影響」「中国からの脱却」「独自性の形成」
とのタイトルで選定されています。

出光美術館の総力を結集した展覧会ですので、いずれも見応えのある
ものばかりでした。
展覧会の狙い通り各国の個性を意識して見ると、それぞれの特徴が
つかめて面白いかと思います。

会期終了が8月25日日曜日まで迫っています。
貴重な破片室も含めて是非ご覧下さい。


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美しい鳥脚

NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
鳥脚型の割れの金繕いです。


ざっくりとした陶器に金泥の仕上げが程よく馴染んでいます。
安定の鳥脚型が美しいですね。

こちらは萩の絵付けが入ったお皿で、やはり鳥脚型の割れです。
萩の絵と合わせて蒔絵してもいいかとも思いますが、潔く金泥
が入っているのも美しいです。

鳥脚型は物理的な理由があって出来上がる形なので、金繕いしても
美しいものです。
今回の作品はその美しさが発揮されたもの。
シンプルですが王道です。


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モーニングカップのひび

私がお預かりして金繕いしたモーニングカップをご紹介します。
ズレが生じていた深刻なひびでした。


ドイツのKPMというブランドのモーニングカップというかなりたっぷり
飲み物が入るものです。
こちらに一部破損があり、ズレも生じているひびが入っていました。

実はお預かりした時点でひびにしっかりと茶渋が入っていました。
通常、深刻なひびの場合には漂白はお勧めしていません。
破損を埋める必要があるので、必然的に金属粉で仕上げが必要になる
からです。

ここで敢えて漂白を選択しました。
というのも以前に表に華やかな絵付けのある湯呑みをお預かりした際、
漂白に成功したことによって絵付けに仕上げを乗せないで済んだから
です。

数ヶ月かけて漂白したところ、ひびの隙間に茶渋がなくなったことで、
ズレが解消しました。
その結果、破損を埋めはしましたが仕上げの金泥は細く仕上げることが
出来ました。
白い器に金の線が1本。
潔さが美しい仕上がりになりました。

このような経験をするとセオリー通りが正解とは限らないと感じます。
臨機応変でその器にとって最適解を探すのも楽しみの一つです。


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急須注ぎ口の補強

NHK文化センター千葉教室のAさんの作品をご紹介致します。
常滑焼の急須の注ぎ口の割れを和紙で補強されたものです。


急須の注ぎ口は突出しているだけに破損が多い箇所です。
さらに接着したとしても、またぶつけて破損させてしまう確率も高い
ところです。
ですので注ぎ口の割れは接着した後、和紙で補強するのをお勧めして
います。

Aさんの作品は和紙で補強した後の仕上げを鮮やかな弁柄色でなさり、
補強と元々の注ぎ口の境目に金泥の仕上げを入れられました。

通常、補強部分は本体に馴染ませて仕上げる方が大半なのですが、
まさに逆転の発想です。
私も例外なく目立たせない方法一択の人間なので、Aさんのお申し出には
正直驚きました。

画像をご覧頂ければ結果は一目瞭然。
素敵、の一言です。
敢えて攻めることの素晴らしさを教えて頂きました。
皆様、ぜひ参考になさって下さい。


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ガラスのひびを金繕い

港北カルチャーセンターのTさんの作品をご紹介します。
夏らしくガラスコップのひびを金繕いされたものです。


宙吹きガラスのコップです。
螺旋を描くようにひびが入っていました。

ガラスの修復は陶磁器に準じた方法で行いますが、ガラスの特性に
従って独特なところがあります。
必ず概論を聞き、特性を理解してから取り組むようにして下さい。

Tさんの作品はラインを金箔で仕上げることによってガラスならではの
面白い作品になりました。


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2024 第1回 草木染め

藍の生育に成功し、今年初めての草木染め教室を行いました。


牛ふん効果で酷暑に負けず育った藍

ご参加の方の染上がりです。
織りや素材でニュアンスのあるストール生地を生藍染めで染め
られました。

同じ染液で染めたとしても織りや素材で違う色に染まるのが、
面白いと楽しんで頂けたようです。
再度、藍の生育に努めて1か月後に違うメンバーで草木染め教室を
行う予定です。

草木染めに関しては一度に参加出来る人数が多くないので広く募集
は行いません。
既に参加したいとご要望頂いて方を中心にお声がけ致します。
来年夏の話になりますが、参加をご希望の方はお申し付け下さい。


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花器の金繕い

港北カルチャーセンターのFさんの作品をご紹介致します。
萩焼きの花器の金繕いです。


荒々しい白系の釉薬に金泥の仕上げが映えた美しい仕上がりです。

金の高騰が言われて久しく、このため金泥での仕上げを敬遠される
傾向にあります。
しかしこのように美しい作品を拝見すると金の効果の絶大さを実感
します。

色漆や他の素材(例えば螺鈿)など他の選択肢はありますが、やはり
金泥が最も効果的と思われる作品に関しては金泥の選択をお考え頂き
たいと考えています。


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トクサ情報2024.7

トクサは研草とも書き、ヤスリ代わりに使用する道具です。
金繕いでは陶磁器の釉薬を傷めずに欠損を埋めた部分だけ
研磨出来るので大変便利な道具です。

ただ道具としての販売経路が少なく、出来れば自分で育てて
頂きたいところ。
通常、初夏にポット苗が販売されるのですが、時期を過ぎた今、
販売しているところを見つけました。

販売していたのはホームセンター「コーナン」の市川原木店です。
価格の割に苗が小さいのは残念ですが、買いそびれてしまった方
には朗報かもしれません。

道具として使えない「大トクサ」ではなく、「トクサ」ですので、
お求めになりたい方はお早めに!


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ガラスの金繕い

NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
ガラスの小鉢の金繕いです。


直径が8cm程度の小さなガラスの小鉢です。
これがかなりバラバラに割れてしまっていたのを接着されました。

ガラスは基本的には陶磁器の手法に準じて金繕いしますが、陶磁器と
全く違う点があるので注意が必要です。

最もわかりやすい相違点は透けることでしょう。
修復した内容が360度様々なところから透けて見えてしまうので、
対策が必要です。
これを私共では金箔を使って回避しています。

必要から使用する金箔ですが、これがガラスに映えてゴージャスさも
生まれます。
Aさんの作品も小さな小鉢には見えない迫力があるかと思います。

Aさんはあまりにバラバラに割れてしまったので、この小鉢を一度は
処分しようと考えられたそうですが、完成してみれば想像を超えた
一品になったのではないかと思われます。

ガラスは小さな欠損やひびももちろん金繕い出来ますので、是非教室で
ご相談下さい。


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印判の大皿

NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
印判の大皿の割れです。


ひびの線は伸びていませんが、鳥脚型の割れです。
法則に従った形はやはり美しいですね。

銀泥で仕上げられていますので、いずれ硫化して釉薬の絵柄に馴染む
と思います。

このお皿は印判という手法で絵柄が入っています。
印判とは絵柄を転写して絵付けをする方法を言います。
それまで人が一枚ずつ手描きで図柄を描いていたのが、この手法に
よって大量生産が可能となり磁器の価格が大幅に下がりました。

このお皿は印判の中でも紙型印判といい、精巧にくり抜かれた紙型を
使用して図柄を転写しています。
かなり細かい絵柄のなので、安価な印判の中でも価値が高いと考え
られます。

従来、印判は骨董の中でも手に入りやすいものでした。
近年、その常識が覆り、数が少なくなっているようです。
インバウンド需要の影響とも聞きますが、もはや昭和のものが骨董の
領域に入って来ていることもあるかと思われます。


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