NHK学園「金繕いの世界」終了

本日、NHK学園市川オープンスクールで行われた特別講座「金繕いの
世界」が終了しました。

講演会形式は、この講座で終了です。
9月の毎日文化センターのオンライン講座に始まって、NHK文化センター
千葉の講演会と経験を重ねてきました。
その度ごと客層に合わせて内容を変更し、ブラッシュアップを重ねて
きました。

いろいろ勉強してきて、ここが大事とか興味深いと思ったところを集約して
1つの講演会に結実しているつもりですが、ニーズにお応え出来たのか、
ご意見をお聞きしたり反省したりを繰り返しています。

ラストは12月16日水曜日のNHK文化センター千葉のオンライン講座です。
基本的には9月30日に行った講演会をベースにして行います。
実物サンプルをご覧頂くのは叶いませんが、ラストとして内容を充実させたい
と考えております。
今までの講座へのご参加が出来なかった方のご検討をお待ちしております。


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トクサの刈り取り時期

花屋さんで購入したトクサの削り具合が良くないとご質問を受けました。
近年、トクサの直線的な姿が花生けでも注目され、花屋さんで手に入る
場合があります。

しかしご質問の通り、道具としては使えないのです。
これは今年の春〜夏に出た新芽を夏〜秋に刈り取っているからです。
新芽は乾燥させたとしても柔らかく、道具にはなりません。

今年の春に出た新芽です。
色がまだ黄緑色に近く、触ると柔らかいのがわかります。

昨年の春に出た芽です。
冬越ししていますので色も深緑色になっており、触ると硬いです。

今年の春〜夏に出た芽は寒さに当たってからの来年の2〜3月、新芽が
出だす前に刈り取るのがベストです。
1週間ほど乾燥させれば道具になります。

よく勘違いが多いのが生えている段階で枯れてしまった部分のことです。
これは既に朽ちて脆くなっているので、新芽同様、道具にはなりません。
乾燥していてラッキーではないのです。

トクサはマンションのベランダでも鉢植えで栽培が可能ですが、栽培が
苦手な方は既に道具として販売されているものをお求めになるのが良いと
思います。
刀剣研ぎ材料の並川平兵衛商店で求め下さい。
かなりクオリティーの高いトクサが販売されています。


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箸 復活

NHK文化センター 千葉教室のNさんの作品をご紹介します。
鉄木のお箸の修復です。
鉄木とは幹が鉄のように固い、または密度が高く重い樹木の呼称で、
お箸によく使われています。

事の発端は事故とも言えることでした。
キッチンのシンクに流した漂白剤に鉄木のお箸が浸ってしまったのです。
表面が白く変色してしまいました。

幸いすぐに洗い流したので表面的な損傷に止まったようでした。
そこでまず傷んでしまった部分を削りおとして頂きました。

その後、お好みの色の新うるしを数回擦り込んで頂いたところ、復活を遂げ
ました。


今回は漂白剤による事故でしたが、そうでなくてもお箸は使用で色が
白っぽく変わってしまいます。
今回と同様に修復が可能ですし、さほど時間もかかりません。

陶磁器の金繕いはそれ相応に時間がかかりますが、早めに直るお箸の修復で
気分転換もいいかと思います。


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漆筆 実験中

新うるしの教材でお出ししている漆筆ですが、豚毛の細筆という希少価値が
あるものの作りがあまり良くなく、痛みが早いのが悩ましいところです。

極論を言えば下地を作っている段階の筆は何でもいいのです。
しかしこの「何でもいい」が問題で、言われた方は戸惑うばかりかと思います。

道具から入るタイプの私としては、様々な筆を購入して実験しています。
まだ実験半ばで、これがオススメと結論が出てはいないのですが、参考までに
現在の状況をご報告したいと思います。

ナイロン毛のインターロン1026 #0です。
ナイロン毛は適度な腰もあって塗り易いのですが、使い続けていると先端に癖が
出てきます。
インターロンはそれを抑える加工がしてあるので、比較的長く使えるかと思います。

同じくナイロン毛のCAMLON  PRO  620  #2/0です。
こちらはまだ使い始めたばかりなので様子がわかっていません。
漆芸業界で紹介されているので、信頼度はあるかと思います。

こちらは世界堂 GRシリーズ #0です。
馬毛と豚毛混合の天然毛です。
ナイロン毛のような癖の出現がないことを期待して使用中です。
馬毛がメインなので豚毛のみより柔らかい使い心地です。

プラモデルで著名なTAMIYA製の面相筆・短です。
柔らかめの馬毛ですが穂先が短いので使い易くなっています。
価格も他の筆が¥515〜¥360なのに比べて¥143と飛び抜けて安いです。

しかし軸が白木なので色がついてしまうのではないかと思います。
特に本漆で使いたい場合は油が染みてしまうのが問題です。
軸先を塗装するなどして工夫すれば、これが一番使いやすいと思います。

TAMIYA品以外の筆は世界堂のオンラインショップで手に入ります。
TAMIYA品も検索すれば様々出てくると思いますが、穴場はヨドバシ
カメラのネットストアです。
送料無料で迅速に届けてくれます。

これはいい!という筆に出会われた方は是非ご紹介下さい。


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レンゲの金繕い

カルチャープラザ公津の杜のIさんの作品をご紹介します。
レンゲの金繕いです。


縁が繊細に薄いレンゲなので、何箇所か欠けてしまっていました。
これを丁寧に埋めて仕上げをして頂きました。

特に工夫したのが一番大きなサイズの欠けの部分です。
元々あった花柄のように金泥の上から銀泥でラインを描いて共通感を
出したのです。

柄の欠けが一部、共通感が出たことで元々の柄に馴染み、たくさん欠けがある
印象が少なくなったかと思います。

そもそもレンゲも金繕いが出来たのかと思われたかもしれません。
陶磁器製であれば器と同様に金繕いが出来るのは言うでもありません。

お箸と共に食卓にあるものです。
破損してしまったら金繕いをお考え下さい。


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無人販売所

自宅工房の教室にお出でになっている方達に評判になりつつあるのが
駅からの途中にある野菜の無人販売所です。


販売所の隣にある農家さんのもので、採れたての新鮮な野菜を販売して
います。
メインは小松菜で、お料理に合わせた多様な小松菜の栽培でテレビ出演も
されているそうです。

プレハブの中でコインロッカー式の販売スタイルですが、清潔感もあるし
安全な感じもします。
なかなかの人気で夕方に行くと売り切れていることも、しばしばです。

私も夏に枝豆を何回か購入しましたが、甘くて美味しかったです。
やはり新鮮さが決め手なのでしょうね。

ナス、ピーマン、カブ、ほうれん草と取り扱い品目も多彩です。
場所は西船橋駅の近隣、スーパー・ベルクスの向かい、紳士服のAOKIの隣。
両替機がないので100円玉持参が必須です。


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渋い仕上げ

港北カルチャーセンターのMさんの作品をご紹介致します。
大皿の欠けの仕上げです。


黒のマット釉の縁が複数箇所、欠けていました。
欠損の埋めが終わって仕上げに薫銀泥をお勧めしました。

薫銀泥の仕上げは他の方にもお勧めして素晴らしい作品が完成しています。
Mさんの作品も完成時から釉薬に馴染んで渋い仕上がりになりました。
複数箇所の欠けも気にならなくなっています。

Mさんは受講開始からある程度時間が経って、工程の流れが把握できた
ところで続々作品が完成しています。

今後の完成も楽しみにしています。


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本漆の接着

藤那海工房・木曜クラスのIさんの作品をご紹介致します。
本漆による大鉢の接着です。

生徒さんの作品を完成品でなく、作業初期をご紹介するのは初めてです。
なぜご紹介しようと考えたかというと、本漆の接着は新うるしより難しい
からです。

そもそもある程度粘り気のある新うるしでの接着は粘りがあって、多少の
無理が効きますが、本漆の接着は調整のタイミングが絞られていて、無理
は禁物というのが実感です。

Iさんの大鉢はひと抱えもある大きなもので、厚手の陶器ですから重さも
あります。
それがバラバラになっているのですから、形を整えるだけでも大変だった
はずなのですが、見事成功されています。
これは是非、途中段階でもご紹介させて頂かなければ!と撮影させて頂き
ました。

ここまで整っていれば後の欠損を埋めて仕上げをするのは難しくないと
思います。
今から完成が楽しみな作品です。


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敷き布を用意しました

自宅工房で行なっている金繕い教室を受講の方から、荷物を床置きに
するのは抵抗があるとのお声を頂戴しました。
自宅工房での教室を始めて5年以上経過していますので、対策を打つ
のが遅きに失したと言えるのですが。

材料は巣篭もり期間中に発掘された布です。
使う計画のない布が大量に見つかっていたのですが、その内の1枚
です。

手縫いなりミシンなりで縫っている時間がなかったので、使ったのが
洗濯も出来る布用の両面テープです。
従来から接着剤タイプのものが出ていましたが、両面テープもあったの
ですね。
あっと言う間に完成です。

敷き布にしたのは新型コロナウィルス対策を考えると洗濯が気軽に出来る
方がいいと判断したからです。
とりあえず使ってみて頂いて感想をお聞きしようと思っています。


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前向きに隠す

NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介します。
Aさんは面白い工夫をして下さるので、度々ご紹介させて頂いて
おりますが、今回は問題を逆手に取った工夫をされています。


真ん中のウサギの柄のところにひびが入っていました。
そのひびに入り込んだ汚れが漂白してもなかなか落ちないので、仕上げの
銀泥を砂子散らし風に散らして隠されました。
銀泥はいずれ硫化して染付けの柄のように見える予定です。

骨董の場合、長い間かけて汚れが入っているので、簡単には落ちない場合
があります。
もちろん時間をかけて漂白するのも良いかと思いますが、Aさんのように
前向きな仕上げでカバーするというのも良い方法だと思います。

もう1点。
割れを接着されたものです。
赤系の釉薬に金泥が映えて美しい作品になりました。
中央に写っている大きな欠損もワンポイントになっています。
「金繕い」マジックですね。


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