根元から折れた取手

NHK文化センター柏教室のTさんの作品をご紹介致します。
ピーターラビットのマグカップの取手が根元から折れて
しまったものです。


根元から折れてしまった場合は内側まで穴を貫通させ補強する
必要があります。
かなりな「大工事」になるので怯む方がほとんどなのですが、Tさんは
挑んで下さいました。

内側にどうしても補強の痕跡が出てしまうのですが、上側はピーター
ラビットに掛けてニンジンの形で蒔絵されました。

このようにキチンと補強すれば根元から取手が折れてしまっても再び
使用が可能になります。
恐れずチャレンジして頂ければと考えています。

 


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きぎ工房の額

ギャラリー砂翁のチャリティー企画「希望展」で購入した大古瀬
和美さんの作品をきぎ工房さんに額装して頂きました。


白系のメイプルの枠は、かまぼこ面に加工されており、大古瀬さんの作品を
柔らかく包んでいます。
チャリティー作品だったので簡易な形になっていたのが、きちんと額装されて
ほっとしているように見えます。

裏面は縦でも横でも吊るすことが出来るようになっているのは勿論、キャビ
ネット上に置きたいという私のリクエストにも答えてくださっています。
下方にある濃い色の材一つで置けるようになっているのが素晴らしいです。

おまけに頂戴した神代クスの栞です。
和歌山県紀ノ川の河川工事で川底から発見された巨大な楠の一部だそうです。
クスからは樟脳が取れるのをご存知だと思いますが、とてもいい香りがします。

美しい樹木を使い、しっかりした仕事をされる「きぎ工房」さんにご興味を
持たれた方は下記ブログもご覧下さい。
他の方の依頼品に混ざって私のお願いした額も掲載されています。

https://kigikobo2.exblog.jp/page/2/


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ナイスアイディア

NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
唐突に残ってしまった欠損の痕跡を上手く隠されています。


中鉢の底付近に4方に広がる形で出来てしまったひびを直されました。
幸いひび自体は見えなくなったのですが、中央の部分は欠損があり、
仕上げが免れませんでした。

唐突に生じているように見えるので、何かいいアイディアはありませんか
とお願いしたところ、画像のように外側にあった七宝紋様で蒔絵され
ました。

Aさんは常に抜群のアイディアで素晴らしい仕上げをされるのですが、
今回も秀逸なアイディアだと思います。

唐突に生じる欠損はあり得ないことではありません。
もしそのような欠損に巡り合ってしまったらAさんのアイディアを思い出し
てみて下さい。


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美吉野紙と吉野紙

金繕いの欠けの仕上げをする際に使用をお勧めしているのが
漆漉し紙の「美吉野紙」(みよしのし)です。

一見、和紙に見えますが、合成繊維のレーヨンで出来ています。
漆のチューブの口金で固まっているものが混入しないようにする
為に使って頂いています。

購入先は漆芸材料店になりますが、100枚、50枚とまとめて販売されて
いることがほとんどです。

こちらは古来、漆漉し紙として使われていた「吉野紙」です。
奈良県・吉野町の昆布さん夫妻が楮から漉いている和紙です。

かつては宮中の女官が懐紙として使っていたこともあるそうで、その
柔らかさから「やわやわ」と呼ばれていたそうです。

残念ながらレーヨンの美吉野紙が1枚¥20と安価なのに比べて1枚
¥400程度と高額なのは否めません。

金繕いの教室では漆漉し紙として使うことはなく、補強の為に使って
います。

購入先ですが、吉野紙は和紙専門店で、美吉野紙は漆材料店でと
はっきり棲み分けされています。

見分けがつかないとのお声もありますが、仕上げの際には美吉野紙は
必須です。
是非ご理解頂きたい内容です。


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小さい器

NHK文化センター柏教室のTさんの作品をご紹介します。
お猪口としてお使いの小さな器の金繕いです。


いずれも小さい器ながら雰囲気のあるもので、金の仕上げが綺麗です。

小さい器は破損しやすいものがあり、金繕いの際にも神経を使う部分
があります。
しかしTさんの作品のように完成してみると、満足感は大きさのある
器に劣らないものがあると思います。

ご愛用の器がある方は是非チャレンジしてみて下さい。


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トクサの色

春を迎えて我が家のトクサは新芽が出始めました。
2〜3月にトクサの刈り取りを行った方から特に質問が多かった
のがトクサの色についてです。

初回にお渡ししているトクサが画像右のように枯れ色になっている
せいか、ご自身が刈り取ったトクサがいつまでも青々とした緑色の
ままだが、使えないものなのではないか?というものです。

道具としてトクサを使う場合、色は全く関係ありません。
刈り取って1週間干して水分が飛んだら、それで道具として使える状態
になっています。

「金繕いの本」をお持ちの方は是非90ページをご覧ください。
使い方を詳しく解説してあります。


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香を聞く

ある事をきっかけに原一菜先生からご愛用の香炉とお香を頂戴
しました。
特にお香のお稽古をしているわけではないので、ことさら灰の形
など整えない勝手流ではありますが、お香を聞いてみました。

お花を活け、お香を聞く。
わずかな時間ではありますが、一つ一つの所作で落ち着くような気が
しました。

普段はバタバタと生活していますが、気をつけてこのような機会を設ける
ようにしようと反省した次第です。


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魚 泳ぐ

産経学園ユーカリが丘校のTさんの作品をご紹介致します。
小皿の欠けです。

画像でご覧になれるように欠けは縁に泳いでいる魚の部分にありました。
Tさんは小皿の真ん中辺りにある釉薬の景色を水紋に見立てて欠けを魚の
形に蒔絵されました。

最初は縁の1匹だけだったのですが、2匹増やして3匹として頂きました。
それぞれの魚に動きがあり、1つの絵画を見ているような作品になりました。

Tさんは金繕いを始められた頃は「絵心がない」と謙遜されていたのですが、
今や堂々たる作品の制作者になっておられます。
Tさんのご様子を拝見していますと、やはり人間には絵を描きたいという
根源的欲求があるのではないかと感じます。

指導する立場の私としては皆様がより楽しく、より良い作品を制作できる
よう、精進しなければと気持ちを新たにしております。


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映画「金の糸」

現在、岩波ホールで金繕いに着想を得た映画「金の糸」が公開
されています。
生徒さん方からご紹介を受けて見てきました。

内容については監督の言葉を引用したいと思います。

日本人が数世紀も前に壊れた器を金で繋ぎ合わせるように、金の糸で過去を
継ぎ合わせるならば、過去は、そのもっとも痛ましいものでさえ、財産に
なることでしょう。

79歳の女性作家の過去との和解の物語で、金繕いの作品は一部に出てくるに過ぎ
ません。
それも英国在住のアーティストによる金継ぎとダーニングのハイブリットアート
「金継ぎアート」で、私が行っている金繕いとは別世界のものです。
とはいえ金繕いが海外の映画のアイディアソースになったことには変わりはあり
ません。

また舞台になったジョージアの首都・トリビシの旧市街にある中庭を取り囲む
ように建てられた古い集合住宅はとてもいい雰囲気があります。
主人公の住む家のインテリアと共に注目してご覧になるのもいいかと思います。

ご存知の方もおられると思いますが長年ミニシアターの草分けとして親しまれて
きた岩波ホールは今年の7月末で終焉を迎えます。
名残を惜しむ機会にもなるかと思います。
映画「金の糸」の公開は4月15日まで。
会場は整理券番号順に入場しますが、充分に席がある状態でした。


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急遽募集2022.4

2022年4月期から受講出来る教室を「HOME」でご紹介しています。
そのうち急遽募集をすることになった教室をご紹介致します。

●NHK文化センター千葉
毎月第4木曜日 10:00〜12:00

●港北カルチャーセンター
毎月第1土曜日 13:00〜15:00

ご興味を持たれましたら、それぞれ事務局までお問い合わせ下さい。

何かを始めたくなる春です。
金繕いをご検討いただけたら嬉しいです。


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