私事で恐縮ですが昨年2月に実父を亡くしましたので、新年の
ご挨拶を遠慮させて頂いております。
今年も変わらず精進していこうと思っておりますので、引き続き
お付き合い頂ければ幸いです。
例年ご紹介している横浜山手西洋館のイベント・世界のクリスマス
ですが会期の初め頃に会社員時代の同僚を案内して行っていたにも
関わらず、ご紹介していませんでした。
年内にブログに掲載して心残りのないようにしたいと思います。
今回私が気に入ったのは「ベーリック・ホール」と「外交官の家」
でした。
いずれも装飾が充実しており、見応えがありました。
週末に見学に行ったのは初めてだったのですが、感染対策のために
会場内に滞在している見学者の人数を制限していて、人が入らない
画像を撮影するのも難しくありませんでした。
人の流れを良くするために私が皮肉を込めて「クローズアップさん」と
呼んでいる接写に夢中になるあまり備品の入ったバッグを会場に置きっ
ぱなしにし、同じ場所を占拠し続けるカメラマニアの方への対応も
厳しくなっています。
今年はご紹介が遅くなってしまいましたが、来年の6月には「花と器」
という西洋館が華やかに装飾されるイベントが待っています。
イベント時の西洋館の雰囲気は格別です。
神戸の西洋館と違い横浜市が管理することによって商業主義が排除されて
洋館本来の姿が堪能出来ます。
ぜひお出かけ下さい。
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介します。
抹茶茶碗の割れです。
割れのラインがインパクトが強すぎるということで当初は表の柄と
同じような円形の蒔絵を考えられていました。
しかしこれも重過ぎたのでスポンジングという方法に落ち着きました。
京焼きのお抹茶茶碗にはよく群雲のような柄が入っています。
スポンジングの柄はそれに類似しているので違和感がないかと思います。
このスポングングの方法は時々ご紹介していますが、様々な道具で
表現されます。
チャレンジしてみたい方はあらかじめご相談下さい。
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介致します。
お茶碗の割れでした。
典型的な鳥脚型の割れ方です。
接着後、欠損部分を補われて金泥で仕上げておられます。
仕上げの質問で多いのが欠損が太いところに合わせて仕上げの線の太さを
太くするのか?というものです。
この場合、欠損に合わせて自然に線を描かれるのが良いです、とお答え
しています。
Hさんの作品は欠損に合わせて自然な線を描かれています。
特に表の趣のある絵付けととても相性がよく、イキイキとした仕上げに
なっているのがご覧頂けるでしょう。
もしこれが欠損の太い部分に合わせて全体が均一の太い線になっていたら、
随分印象が違っていたかと思います。
仕上げはあるがままに、をお薦め致します。
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品をご紹介
致します。
大鉢の接着です。
大きく割れた破片を接着されたのですが、ズレが生じてしまって
いました。
このような場合「斜め削り」と言っているのですが、接合線の
ズレ部分に弁柄を塗り重ね、滑り台様に削って違和感を無くす
方法をお勧めしています。
Oさんの作品の場合、それがリボンが翻ったようになったことで、
器の陰刻で表現された葉の紋様に呼応してデザインとして成立
しています。
当初、蒔絵を入れる心つもりをしていたOさんですが、斜め削りの
ままの仕上げで終了されました。
日本文化は「足らぬがよし」と言い、やや不足と感じるくらいが
ちょうどいいと考えます。
器はお食事が盛られて完成形と考えると加飾しすぎないことが大切
かもしれません。
Oさんも薫銀泥で仕上げた形に満足されたようで、良かったと思って
います。
藤那海工房 金繕い教室(本漆)のOさんの作品をご紹介します。
納豆鉢の把手の割れです。
備前焼の納豆鉢の把手が割れてしまっていました。
把手を接着し、再度使えるようにするのには相応の補強が必要です。
Oさんの場合、把手を割れたまま利活用することにされました。
本体の割れ口は削って滑らかにし、折れた把手も断面を滑らかにして
それぞれ銀泥を蒔いて仕上げられました。
銀泥は硫化すると備前焼の肌に馴染んでくると思います。
3つに割れた把手部分は箸置きにするのには少し短かったので、金属
粉の包みを押さえる箔鎮とされる予定です。
割れた把手を接着し補強して再度使えるようにするか、切り落として
別の物にするか、選択肢は様々あります。
どうされたいかによって、ご相談して頂けたらと考えております。
産経学園ユーカリが丘校のNさんの作品をご紹介します。
フリーカップのひびを漆繕いで仕上げられました。
縦に深く入ったひびと底に近い部分に水平に入ったひびと大きく
2本のひびが入っていました。
当初は欠損通り金属粉での仕上げをされたのですが、違和感がある
ということで大きく方針転換を図られました。
2本のひびを繋ぎ、底に近いひびは水平にぐるっと1周回った形に変え
られた上、金属粉ではなく漆の弁柄色で完成されました。
元々カップ自体がモダンな形をしており、染付の柄もシンプルなもの
でした。
そこに鮮やかな弁柄色がすっきりと入り、元からこのデザインであったかの
ように見えます。
金繕いなので金で仕上げるイメージが強いのですが、歴史的に見ると器の
修復は漆繕いが原点です。
Nさんの作品は漆繕いの魅力を活かし、シンプルにまとめた秀作です。
是非参考になさって下さい。
11月末、タナカヒロカズさんが178名様集まり、ギネス世界記録になった
という心温まる話題に接した方がおられると思います。
私もこの記録樹立のためのクラウドファウンディングに賛同し、この度
返礼品が届きました。
メンバーの「渋谷のタナカヒロカズさん」デザインのTシャツです。
彼らしいシンプルで美しいデザインです。
実は「渋谷のタナカヒロカズさん」とは会社員時代の先輩(私)後輩
(タナカヒロカズさん 以下 田中君と称します)の間柄です。
彼とは同じ商品を担当しただけでなく、会社創立の記念フェアで苦楽を
共にするなど浅からぬ縁があります。
それぞれの事情で会社から離れてしまったのですが、田中君が同姓同名
の人を探しているとTBSの深夜番組に出演しているのを偶然見て、旧交を
温めることになりました。
その後、田中君にホームページの立ち上げからIT方面のサポートをして
頂いています。
私が夢のまた夢と思っていた自宅での教室開設から本の出版、個展の開催
を現実に出来たのは田中君のサポートなしではあり得ません。
まさに日本中のタナカヒロカズさん、いえ世界中のタナカヒロカズさんに
足を向けて寝られないのです。
タナカヒロカズ運動は唯一、名前が一緒という点で集まった方々で、それぞれ
血縁関係、仕事関係ではありません。
それがとても楽しそうなのが見ている側の私達にも伝わります。
きっと私が知っている田中君と皆様同じように人と人の繋がりを大事にする
穏やかな方達なのではないかと想像しています。
この度のギネス世界記録達成おめでとうございます。
今後もほっこりする話題を提供してくださる事を楽しみにしております。
NHK文化センター千葉教室の方の作品をご紹介致します。
ティーカップの割れです。
絶妙に取手部分を避けて割れています。
特に上から見た時のラインが何とも言えない優美さがあります。
この人の手によって生まれる物ではない美には皆様魅了されると
思います。
仕上げの美しさと共にご堪能下さい。
NHK学園市川オープンスクールのKさんの作品をご紹介致します。
箸置きの金繕いです。
箸置きも陶磁器であれば通常通り、金繕いで修復出来ます。
Kさんの作品は鳥の片目の周りが薄く削げるように割れて
しまっていました。
接着は出来たものの、鳥の目の周りを囲むように出来た接合線通りに
仕上げると痛々しい感じは拭えません。
そこで思い切って頭から首まで一体を金泥で仕上げられることにした
のです。
完成の状態を見て頂くと、元からこのような意匠だったかのように
見えると思います。
最も自然な形で完成されました。
しかしこの美しい仕上げは簡単ではなかったのです。
欠損より大きく仕上げる場合には欠損が完璧に埋まっていないと、
しっかり浮き上がって見えてしまいます。
Kさんは根気よくトライアンドエラーを繰り返し、完璧な完成に
辿り着かれました。
「いいです、これで」と妥協する方にはたどり着けない極地です。
億劫がらずに極地を目指してみませんか?
得られる満足感は計り知れないと思います。