月別アーカイブ: 2024年8月

程よく馴染む

港北カルチャーセンターのFさんの作品をご紹介致します。
黄瀬戸の大鉢です。


趣のある黄瀬戸の釉薬が美しい大鉢です。
薄手のせいか縁に欠けがありました。

形通りに欠損を戻した後、選ばれたのは金泥の仕上げです。
黄瀬戸の黄色い釉薬と金泥は馴染みがよく、想像以上に目立ち
ません。
欠けさせてしまったことを忘れてお使い頂ける完成度になりました。

仕上げをどうするか皆様悩まれるところだと思います。
セオリーとしては陶器は銀泥、磁器は金泥というのがありますが、
最終的には持ち主のお考え次第です。
お預かり品の場合はご本人にお決め頂くのが宜しいかと思います。

面白いものでお預かりものは、かなりの確率で金泥のリクエストに
なります。
「金繕い」「金継ぎ」のイメージが強いからなのでしょう。


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渺渺展2024

友人の広瀬佐紀子さんが参加している日本画若手作家の集まりによる
展覧会「渺渺展」を拝見してきました。

広瀬さんの作品は山の風景です。


ご覧頂いてお分かりになるかと思いますが、一般的な山岳画と違って
空が狭いのです。
これは広瀬さんが実際に冬山に登山し、厳しい環境の中に身を置いて
写生しているからなのです。

あたかも自分自身がその場にいるような錯覚に陥るくらい心に迫ってくる
自然の美しさ、厳しさを感じます。

「渺渺」とは「広く果てしないさま」という意味を持つそうです。
全く違うスタイルを持つ参加者の共演は毎年拝見していても、新しい
感動があります。

会期は9月1日(日)まで。
JR千駄ヶ谷駅から徒歩5分の佐藤美術館です。
是非実物を会場でご覧下さい。


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表面のテクスチャーに合わせる

港北カルチャーセンターの方の作品をご紹介致します。
蓋物の割れです。


ざらざらとした釉薬が印象的な蓋物です。
本体の方が鳥脚型に割れていたのですが、これを金属粉で目立たせる
のではなく、馴染ませることにチャレンジされました。

ざらざらとした仕上げを敢えて選択したいという方は少なからずおられる
ので、様々な手法でのご提案を用意しています。
それは道具であったり素材であったり、狙いの感じに合わせて選択肢が
あります。
今回ご紹介の作品は色も合わせられたので、一見全くわからない感じに
なりました。

いわゆるピカピカの金属粉ではない仕上げをご要望でしたら、あらかじめ
ご相談下さい。


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日本・東洋 陶磁の精華

現在、出光美術館で行われている「日本・東洋 陶磁の精華」
という展覧会に行ってきました。

ご存知の方もおられるかと思いますが、出光美術館は建物の建て替えに
伴い、一時閉館が予定されています。
その閉館前に出光美術館の軌跡を表す展覧会の一つです。

出光美術館は国宝2件・重要文化財57件を含む約1万件のコレクションを
有する美術館として広く知られています。
その中から陶磁器に絞って
中国「シルクロード」「皇帝のうつわ」
朝鮮・日本
「交流」「中国陶磁の影響」「中国からの脱却」「独自性の形成」
とのタイトルで選定されています。

出光美術館の総力を結集した展覧会ですので、いずれも見応えのある
ものばかりでした。
展覧会の狙い通り各国の個性を意識して見ると、それぞれの特徴が
つかめて面白いかと思います。

会期終了が8月25日日曜日まで迫っています。
貴重な破片室も含めて是非ご覧下さい。


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美しい鳥脚

NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
鳥脚型の割れの金繕いです。


ざっくりとした陶器に金泥の仕上げが程よく馴染んでいます。
安定の鳥脚型が美しいですね。

こちらは萩の絵付けが入ったお皿で、やはり鳥脚型の割れです。
萩の絵と合わせて蒔絵してもいいかとも思いますが、潔く金泥
が入っているのも美しいです。

鳥脚型は物理的な理由があって出来上がる形なので、金繕いしても
美しいものです。
今回の作品はその美しさが発揮されたもの。
シンプルですが王道です。


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モーニングカップのひび

私がお預かりして金繕いしたモーニングカップをご紹介します。
ズレが生じていた深刻なひびでした。


ドイツのKPMというブランドのモーニングカップというかなりたっぷり
飲み物が入るものです。
こちらに一部破損があり、ズレも生じているひびが入っていました。

実はお預かりした時点でひびにしっかりと茶渋が入っていました。
通常、深刻なひびの場合には漂白はお勧めしていません。
破損を埋める必要があるので、必然的に金属粉で仕上げが必要になる
からです。

ここで敢えて漂白を選択しました。
というのも以前に表に華やかな絵付けのある湯呑みをお預かりした際、
漂白に成功したことによって絵付けに仕上げを乗せないで済んだから
です。

数ヶ月かけて漂白したところ、ひびの隙間に茶渋がなくなったことで、
ズレが解消しました。
その結果、破損を埋めはしましたが仕上げの金泥は細く仕上げることが
出来ました。
白い器に金の線が1本。
潔さが美しい仕上がりになりました。

このような経験をするとセオリー通りが正解とは限らないと感じます。
臨機応変でその器にとって最適解を探すのも楽しみの一つです。


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急須注ぎ口の補強

NHK文化センター千葉教室のAさんの作品をご紹介致します。
常滑焼の急須の注ぎ口の割れを和紙で補強されたものです。


急須の注ぎ口は突出しているだけに破損が多い箇所です。
さらに接着したとしても、またぶつけて破損させてしまう確率も高い
ところです。
ですので注ぎ口の割れは接着した後、和紙で補強するのをお勧めして
います。

Aさんの作品は和紙で補強した後の仕上げを鮮やかな弁柄色でなさり、
補強と元々の注ぎ口の境目に金泥の仕上げを入れられました。

通常、補強部分は本体に馴染ませて仕上げる方が大半なのですが、
まさに逆転の発想です。
私も例外なく目立たせない方法一択の人間なので、Aさんのお申し出には
正直驚きました。

画像をご覧頂ければ結果は一目瞭然。
素敵、の一言です。
敢えて攻めることの素晴らしさを教えて頂きました。
皆様、ぜひ参考になさって下さい。


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ガラスのひびを金繕い

港北カルチャーセンターのTさんの作品をご紹介します。
夏らしくガラスコップのひびを金繕いされたものです。


宙吹きガラスのコップです。
螺旋を描くようにひびが入っていました。

ガラスの修復は陶磁器に準じた方法で行いますが、ガラスの特性に
従って独特なところがあります。
必ず概論を聞き、特性を理解してから取り組むようにして下さい。

Tさんの作品はラインを金箔で仕上げることによってガラスならではの
面白い作品になりました。


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2024 第1回 草木染め

藍の生育に成功し、今年初めての草木染め教室を行いました。


牛ふん効果で酷暑に負けず育った藍

ご参加の方の染上がりです。
織りや素材でニュアンスのあるストール生地を生藍染めで染め
られました。

同じ染液で染めたとしても織りや素材で違う色に染まるのが、
面白いと楽しんで頂けたようです。
再度、藍の生育に努めて1か月後に違うメンバーで草木染め教室を
行う予定です。

草木染めに関しては一度に参加出来る人数が多くないので広く募集
は行いません。
既に参加したいとご要望頂いて方を中心にお声がけ致します。
来年夏の話になりますが、参加をご希望の方はお申し付け下さい。


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