月別アーカイブ: 2024年6月
キャンドルスタンド
藤那海工房 西登戸教室におられたIさんの作品をご紹介します。
作家さんの作品で象のキャンドルスタンドです。
手ひねりで作られた味のある象が大変愛らしいキャンドルスタンドです。
これが残念ながら首のところから折れてしまっていました。
欠損も大きく接合が不安定だったので、軸を入れて接着しました。
安定し不自然にならないように欠損を埋めた後、仕上げは全体のマットな
釉薬に馴染むように特殊なものを選択しています。
お食事を盛る器ですと安全性や耐久性が厳密に求められますが、キャンドル
スタンドのように飾りものだと見た目を重視して使用するものを選択して
良いと考えています。
このように正解が無限にあるのが金繕いの面白いところ。
皆様ぜひ楽しんで取り組んで頂ければと思います。
銀の硫化
藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
急須の割れの金繕いです。
本体の縁の部分が小さく割れてしまっていました。
破片を接着し、欠損してしまった部分を補っておられます。
そこを銀泥で仕上げられたのですが、それが急須の釉薬の複雑な
色合いに合ったところで色止めされました。
銀泥は空気中の硫黄成分で黒化する「硫化」という現象が起きます。
女性の方なら銀のアクセリーが黒くなるので、よくご存知かと思います。
銀はいきなり黒くなるのではなく、シャンパンゴールド、ピンクゴールド、
青紫、黒と変化していきます。
新うるしの場合、途中の色で半永久的に止めることが出来ます。
Oさんの作品の場合、シャンパンゴールド色でちょうど釉薬に馴染み
ました。
仕上げの金属粉の色に悩まれたら銀泥はいかがでしょうか?
いずれかの段階で「これだ!」と思う色を選べると思います。
藍の苗2024
5月に蒔いた蓼藍が丈10cm以上に育ち、プランターに分植
しました。
今はジョウロの水勢に負けてしまうくらいなのですが、第1回
生藍染め大会を計画している7月末までには直径60cm、丈60cm
くらいまでに育ちます。
今年も昨年のように酷暑の予報が出ています。
肥料として牛ふんを投入、水やりの頻度も上げて対処する予定。
頑張ります!
螺鈿で仕上げ
NHK文化センターさいたまアリーナ教室のOさんの作品を
ご紹介致します。
取手付きの惣菜入れの取手が破損したところを螺鈿で仕上げた
例です。
そもそも取手が破損してしまった場合は、再度取手を再建するか否か
という判断があります。
さらに再建した取手を使うか否かを検討します。
Oさんの場合、取手は再建せず、断面を螺鈿で装飾するという選択を
されました。
使用されたのは顆粒状の螺鈿です。
このタイプだと凸凹の断面に馴染みやすく、貼り込みも平易な方です。
螺鈿の宇宙の煌めきのような光沢は誰しもが魅了されると思います。
器の修復の仕上げとしてチャレンジしてみたいと思われた方も多いの
ではないでしょうか。
螺鈿貼りは金属粉の蒔絵とは全く違う工程になります。
挑戦する場合は教室で手順を確認して下さい。
縁の仕上げ
NHK文化センター柏教室のSさんの作品をご紹介致します。
縁の欠けを金繕いされました。
器の縁には「口紅」と呼ばれる鉄釉が施釉されていることがよく
あります。
その部分の欠けを仕上げる場合、金属粉の色を悩まれる方が多いと
思います。
オススメはやはり銀泥です。
仕上げた当初は白色ですが、硫化によって鉄釉に馴染んできます。
Sさんの作品は元々が淡い色の釉薬だったので、人工的に燻された
銀泥の色を使われました。
一見、どこを直したのか、わからないと思います。
口紅からはみ出して欠けている場合など範囲が大きくなると、また
対処も変わってきます。
迷われる場合は教室でご相談下さい。
横浜山手西洋館 花と器のハーモニー2024
横浜山手西洋館のイベント、花と器のハーモニー2024に行って来ました。
今回はRediscovery〜世界のアーティスト×日本の器というテーマです。
日本の器だからなのか、全体的にシックで落ち着いたイメージの展示でした。
◯ベーリック・ホール Rediscovery of Lilies
今回はイチオシが選べません。
日本の器は釉薬で魅せるものが多く、アイテム数も洋食器のように
多くありません。
その分、花の演出は洋館との一体感が要求されることになり、それが
それぞれの館で成功しているように感じました。
その結果、山手西洋館全体の雰囲気が調和することになり、イベント
全体で楽しめる内容になったように思います。
混雑緩和のため、靴はビニール袋に入れて持ち歩きます。
画像の撮影はスマホかタブレットのみ。
(カメラでの撮影は開館直後の時間帯に予約制)
脱ぎ履きしやすく、歩きやすい靴で散策下さい。
会期は9日日曜日まです。
見込みの窯傷
NHK文化センター柏教室のSさんの作品を紹介します。
お友達が作った小鉢の見込み部分に生じてしまった
窯傷の金繕いです。
窯傷とは焼成段階で出来てしまった欠損のことです。
窯傷が生じてしまうのは、プロではないので致し方ないと思います。
ただ実使用上のことを考えると見込み(内側の底)に傷があるのは
不衛生な感じもあって塞いでおいた方が良いと考えています。
金繕いでは窯傷を意図して作られたものではないことから「神様の
なせる技」として痕跡を残す形で繕います。
これは傷の形が破損して出来たものとは違うことから成立するとも
言えます。
Sさんのように陶芸にご縁がないと窯傷の器は手に入らないと思います。
(欠陥品として市場には出回らない)
もし手に入った場合には得難い経験が出来ると思ってチャレンジして
みて下さい。
Sさんは程よく傷を埋めたところで目立たせないことを目指して銀泥で
仕上げられました。
ベージュ系の温かみのある釉薬に上手く馴染んでいると思います。