月別アーカイブ: 2023年12月

花器の金繕い

産経学園ユーカリが丘校に在籍されていたTさんの作品をご紹介
致します。
花器の金繕いです。


実はこの花器は以前、縁が欠けてしまっていたのを金繕いされて、
お使いになっておられました。
それが上から物が落ちてきて、かなりバラバラに割れてしまいました。

これだけでもかなり心が折れると思うのですが、Tさんは接着をし、
根気よく欠損を埋めて仕上げに漕ぎ着けられました。

よく金繕いは食器だけと思われているのですが、陶磁器である花器も
同様に金繕いは可能です。

Tさんの場合、温かみのある白系の釉薬に合わせて銀泥が少し硫化した
ところで色止めされました。
割れた分だけ仕上げの線が走っているのですが、釉薬に馴染ませたことで
痛々しさより面白さが優ったと思います。

素晴らしい完成度で割れてしまった時のTさんのショックも拭われたのでは
ないかと思います。


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バラバラ

NHK文化センター千葉教室に在籍されていた方の作品です。
小さな鉢がバラバラに割れてしまっていたのを接着されました。


直径6cm程度の小さな鉢で用途としては珍味入れといったところで
しょうか。
黒釉が美しく、歪んだ形が小さいながらも印象的な器です。

これが大小10ピース以上に割れてしまっていたのですが、接着して形を
戻されました。

難しかったのが形が歪んでいるのを再現することです。
そもそも接着の段階でズレも生じてしまっていたので、これを調整しつつ
成り立たせるのは大変な努力だったかと思います。
とても思い入れのある器だということなので、何とか完成に辿り着いたと
考えております。

銀泥で仕上げてみれば複雑に入った線が面白さを醸しています。
ご本人の努力に見合った完成度と言えるでしょう。

安易に手を抜くと、この喜びは得られません。
今一歩の作業を頑張ることをお勧め致します。


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出光美術館「青磁」展

現在、出光美術館で行われている「青磁」展に出かけてきました。
中国で生まれた青磁は、作られた場所、時代で様々な変化を
見せます。

中国をはじめアジアから欧米まで、そして皇帝・貴族から一般の人々に
受容されます。
この展覧会は中国の青磁生産の代表的な窯から高麗や日本、さらに東南アジア
などの青磁も取り上げ、世界の人々を魅了した青磁の世界を紹介します。

私は特に南宋時代の青磁が好みです。
青磁の色味を最大限に生かしたシンプルな造形が絶妙に美しいのです。

また今回は日本も含めた他国への青磁の広がりも面白く拝見しました。
青磁という共通項はありますが、それぞれの国によって解釈が違うのです。
この辺りも楽しんでご覧になると新しい発見があるのではないかと思います。

会期は来年1月28日(日)まで。
会場は混んでおらず、じっくり、ゆっくり拝見出来ました。


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内側と外側

NHK文化センター千葉教室のSさんの作品をご紹介致します。
初めての仕上げを行ったお猪口です。


ご覧のようにひびの仕上げが内側と外側で太さが違っています。
内側はご本人も納得の線が描けたそうですが、外側は若干太くなって
しまい、イマイチとのこと。

これは内側と外側では描きやすさが違うためで、ある意味仕方のない
ことです。
対策としては何度かトライして頂いて、ご自身の筆を持つ手、器を支える
手が最も安定するところを探るしかありません。

場合によっては常日頃とは全く違う姿勢であったり、支える道具を考えても
いいかもしれません。

完成が美しければ、その手法は何でも許されるところも金繕いの面白い
とこだと思います。


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染・織 ふたり展2023

金繕い教室の生徒さんである小高みどりさんが参加されている
「染・織 ふたり展」を拝見しました。

染織(せんしょく)という言葉があるように繊維を扱うという意味
で一緒に表現されていますが、実は全く作業が違う世界のものです。

それぞれの分野で研鑽されたお二人の作品は何も打ち合わせされて
おられずとも一つの空間に展示されると不思議なハーモニーがあります。

小高さんの作品です。


小高さんの作品は「友禅」の技法で、1色1色、防御しながら染めて
いきます。
染めは失敗が許されないのかと思いきや、技術的に習熟された小高さん
は、リカバリーの技術があるとか。
一幅の絵画のような作品を堪能させて頂きました。

織りの川上さんの作品です。

星座を表現された作品です。
面白いのが星を表した金色の部分です。
一見、金属にも見えるのですが、フェルトに染め用の金泥をまぶした
ものだそうです。
毎回変化のある表現を見せて下さるのが楽しいところです。

会期は12月9日(土)まで
銀座のギャルリ・シェーヌです。


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銀泥 硫化した色

藤那海工房 金繕い教室の生徒さんの作品をご紹介します。
銀泥で仕上げられた欠け+ひびがいい色に硫化したとわざわざ
お持ち下さいました。


銀泥はアクセサリーと同様、空気中の硫黄成分で変色していきます。
それはいきなり黒くなるわけではなく、最初は少し地味な金色である
シャンパンゴールド色になり、その後ピンクゴールド、青紫と変化して
いきます。
最終的に真っ黒になるわけです。

新うるしの場合、途中経過で止めることが出来るので、器の感じと
合わせて選択することが可能です。
特にシャンパンゴールドは粉引・化粧土と呼ばれるベージュ色の釉薬に
合いますし、青紫は染め付けと酷似しています。

問題は色の変化を自然に任せて待つ場合、どのくらいの時間が必要かと
いうことなのですが、この質問にはジョークを交えて「神のみぞ知る」
とお答えしています。

というのもそれぞれのご自宅で環境が違う為、必要な時間が変わってしまう
からなのです。
今まで一番変化の早かった方はご実家が養鶏場(鶏糞が要因と思われる)だと
いう方でした。

お預かりもので返却を急ぐ場合などは方法はありますが、やはり自然に変化
させた方が色が美しいようです。
色の変化を楽しめる銀泥です。途中経過もお楽しみ下さい。


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