月別アーカイブ: 2023年10月
相手に伝わる
NHK文化センター柏教室のSさんの作品をご紹介します。
湯呑みの欠けです。
真摯な作業姿勢を度々ご紹介しているSさんなので、このような基本的な
欠けの直しは全く問題なくこなされています。
先日、ある方から破損の直しは技術さえ習得すれば誰でも出来ること、
という辛辣なご意見を頂戴しました。
しかし私はそうは思っていません。
かつて骨董商の方に小さな欠けの直しであっても、直し手の精神が感じられる
とお聞きしたことがあります。
まさにその通りでSさんの作品もどれだけ丁寧に作業したか、金繕いが完成
してなお素敵に見えるように気を配られたかが見えるのです。
大切な器だからこそSさんのように心を込めて作業なさって下さい。
拝見する方だけでなく、直されている器も見ていますから。
2023草木染め大会報告
例年にない暑い夏で、藍の生育を助けて頂きながら今年の草木染め
大会を終了しました。
結局、7月、8月、9月と3回行いましたので、ご参加の皆様の
作品をご紹介したいと思います。
Hさんの白生地から染められたもの。
左:帯揚げ やしゃぶし アルミ媒染でベージュ色に
右:ストール 生藍染め 染まりやすい絹とと素材の部分で色違いに
Mさんの白生地から染めたストール
左:蘇芳 アルミ媒染を2回
右:生藍染め 凹凸のある生地で深い色に
Fさんの作品。
色が派手過ぎて使えなかった帯揚げをやしゃぶしのアルミ媒染で
シックに変えられました。
左から蛍光イエロー、蛍光グリーンだったとは思えない落ち着いた
雰囲気に。
同じくFさんの作品。
左:綿ハンカチ やしゃぶし アルミ媒染でベージュに
中:派手なピンクだった絞りの帯揚げが和らいだイメージに
右:シミがあったベージュ系の帯揚げが生藍染めで新しい色合いに
草木染めの面白いところは白生地で染めたとしても、生地の風合いで
思わぬ色になるところでしょうか。
また今年の大会では使えなかった色やシミがあったものが、染めを
加えることで使えるものに変えられた方が多かったのが印象的でした。
金繕いも「蘇らせる」ものですが、草木染めも同じだったというのを
改めて気づきました。
来年また行うか迷いがあったのですが、ご参加の方から「是非」という
お声を頂いて頑張ってみようと思っています。
藍の栽培を協力して下さる方もおられますので、今年は参加しなかった
けれどという方は、来年は是非ご検討下さい。
色を変える
NHK文化センター千葉教室の生徒さんの作品をご紹介します。
割れの金繕いです。
今回、工夫して頂いたのが仕上げです。
渋い色目の染め付けで紫陽花が描かれていますが、この絵をまたぐように
割れの線が入っています。
度々このような具象柄の対策をご紹介していますが、今回は柄に差し掛かった
部分だけ薫銀泥の仕上げにして頂いたのです。
植物はもちろんのこと、人型など仕上げの線が痛々しく見えるケースは多く
あります。
今回のケースは単純に仕上げの色を変えただけで落ち着いて見えるという
取り組みやすい方法です。
是非参考になさって下さい。
仕上げデビューにして
JEUGIAイオンモール八千代緑が丘教室のTさんの作品をご紹介します。
醤油差しのひびの直しです。
素晴らしいのは仕上げデビューで、これだけの細い線が描けている
ことです。
そう、皆様憧れの細い線です。
Tさんは下地の作業から丁寧な仕事振りでしたので、この細い線も
納得です。
いつもブログに書いていますが、仕上げの線は細ければいいというもの
ではありません。
Tさんの場合、小ぶりな醤油差しにとても合っている線なのでなお
いいのです。
ましてや仕上げに慣れないうちは無理する必要はありません。
自分が描ける精一杯のものでいいと考えています。
どんな線であれ仕上げにたどり着いた、ご自分をヨシとしてあげて下さい。