月別アーカイブ: 2023年4月
ワンポイント
産経学園ユーカリが丘校のNさんの作品をご紹介致します。
大型のピッチャーのひびの金繕いです。
まずひびの入っている位置が絶妙です。
持った時に見える内側の位置がとても面白い。
外側からは緑色の釉薬に金泥の仕上げが映えています。
シンプルなひびの金繕いですが、絶妙さが面白いというのはよく
あります。
ついつい直さずに過ごしてしまうひびですが、放っておくと進行し
割れに発展してしまうかもしれません。
積極的に直して、その姿を楽しみましょう。
安宅コレクション名品選101
現在、泉屋博古館東京で行われている「安宅コレクション名品選
101」に出かけてきました。
器がお好きな方ならご存知の大阪市東洋陶磁美術館に所蔵されている
安宅コレクションが美術館の改修工事に伴い東京にやってきました。
コレクションは実業家の安宅英一氏(1901-1994)が会社事業の一環として
収集したものです。
会社の経営破綻で散逸の危機にあったものが住友グループを介して
大阪市に寄贈されました。
内容は中国陶磁、韓国陶磁に分類されます。
タイプの違う分野にも関わらず一貫して「静謐」ともいうべき緊張感ある
美しさに貫かれています。
いわゆる実業家によって集められたコレクションはいくつか拝見して
きましたが安宅コレクションほど収集した方の「眼」を感じるものは
ありません。
展示されているもののクオリティーも大変高いです。
一見の価値大。
お出かけになるのをお勧め致します。
会期は5月21日日曜日まで。
会場はさほど混んではおりません。
ちょっとプラス
産経学園ユーカリが丘校のOさんの作品をご紹介します。
ディナー皿のひびです。
白山陶器のブルームシリーズのディナー皿です。
目立つ形でひびが入っていました。
ひび止め後、仕上げした金泥のラインにOさんが施したのが、縁の紋様を
使った柄です。
ちょっとした工夫ですが、この蒔絵があることで楽しさが生まれています。
このちょっとした工夫というのは、とても大切だと思っています。
仕上げたラインが「傷」からデザインに生まれ変わります。
絵心がないとお考えにならず、自由に発想して頂きたいと思っています。
お食事がなくなった後に現れる蒔絵。
きっと食卓が賑やかになっていることでしょう。
難しい形
先般に続いて産経学園ユーカリが丘校のNさんの作品をご紹介
致します。
著名ブランドのフリーカップです。
特徴的な突起部分はとても印象的ですが、同時に破損しやすさも
あります。
Nさんは欠けてしまった部分を丁寧に復元されて金泥で仕上げられました。
金繕いをなさっている方は想像がつくかと思いますが、この形は突出して
いる分、とても作りにくいのです。
画像でお分かりになるように、大変高い再現度になっています。
このような難しい形だと諦めてしまう方も多いのですが、出来れば元の
形に敬意を表して復元に挑んで頂きたいと思います。
このフリーカップは著名ブランドだけにお持ちの方も多いと思います。
是非チャレンジなさって下さい。
銀で描き起こす
産経学園ユーカリヶ丘校のNさんの作品をご紹介致します。
お皿の縁の柄を銀泥で描き起こされました。
ある程度大きさのある欠けを仕上げると目立ち過ぎてしまう場合があります。
Nさんのお皿も大きい欠けが2つ並んでいて、金泥で仕上げたままでは目立って
しまっていたかと思います。
仕上げの上から作業して頂いたのが、お皿に元々あった染め付けの柄を銀泥で
描き起こすことです。
この作業で欠けの仕上げがお皿に馴染んだかと思います。
柄を描き起こすのは難しいとお考えになるかもしれませんが、職人さんの手
慣れた筆致に精度は必要ありません。
リラックスしてお描きになればよろしいかと思います。
Nさんは銀泥が青紫になったところで色止めされました。
より染付に馴染んで綺麗な仕上がりになりました。