月別アーカイブ: 2022年11月
箸置きの金繕い
NHK学園市川オープンスクールのKさんの作品をご紹介致します。
箸置きの金繕いです。
箸置きも陶磁器であれば通常通り、金繕いで修復出来ます。
Kさんの作品は鳥の片目の周りが薄く削げるように割れて
しまっていました。
接着は出来たものの、鳥の目の周りを囲むように出来た接合線通りに
仕上げると痛々しい感じは拭えません。
そこで思い切って頭から首まで一体を金泥で仕上げられることにした
のです。
完成の状態を見て頂くと、元からこのような意匠だったかのように
見えると思います。
最も自然な形で完成されました。
しかしこの美しい仕上げは簡単ではなかったのです。
欠損より大きく仕上げる場合には欠損が完璧に埋まっていないと、
しっかり浮き上がって見えてしまいます。
Kさんは根気よくトライアンドエラーを繰り返し、完璧な完成に
辿り着かれました。
「いいです、これで」と妥協する方にはたどり着けない極地です。
億劫がらずに極地を目指してみませんか?
得られる満足感は計り知れないと思います。
静嘉堂文庫@丸の内
現在「響きあう名宝−曜変・琳派のかがやき−」展を見てきました。
従来の世田谷にあった美術館は交通の便がいいとは言い難かったの
ですが、丸の内・明治生命館に移ったことで格段に見学がしやすく
なりました。
今回は柿落としということで展示品も国宝の「曜変天目茶碗」はもちろんの
こと、とても力の入った内容になっています。
金繕いをされる方に特に見て頂きたいのが「付藻茄子」「松本茄子」という
2点の茶入です。
これは講演会・オンライン講座でもお話ししていますが、総体繕いの最高
傑作です。
大阪城落城の際に破片として拾い上げられたものが、見事に往時の姿に
繕われています。
会場にX線画像が展示されていますので、是非その超絶技巧を直に見て
頂きたいと思います。
昭和の建造物で初めて重要文化財に指定された明治生命館の2層吹き抜け
のホワイエを中心に展示室が配置された新しい美術館は1時間で十分
見学出来る無理のない点数に抑えられています。
時節柄、事前予約をした方がいいかと思いますが、会場の混雑もなく、比較的
ゆったりと見学出来ます。
会期は12月18日日曜日まで。
シンプルに
NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
日常で起きやすい欠けとひびの金繕いです。
取り立てて難しいことをなさっているわけではありませんが、日常で
最も起きやすい欠けとひびです。
これを普通に美しく直せるというのが、金繕いの本道ではないかと
思います。
そういう意味で今回ご紹介の作品は本道中の本道。
ぜひお手本にして頂きたい作品です。
ガラス デザートカップの金繕い
NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
ガラス デザートカップのステー割れです。
海外で購入された思い出の品とお聞きしておりますが、カップ部の下
で割れてしまいました。
ワイングラスにしろデザートカップにしろ、ステーの細い部分は
破損しやすい部位です。
ことに今回の作品はカップ部を支えて接着するのに苦心されました。
金繕いの教室にお出で頂いている方なら単に接合しているだけでは
ないことはお分かりになるかと思います。
その他、ガラスは陶磁器にない注意点がありますので、必ず注意事項を
確認してから作業を始めて下さい。
優美な意匠のデザートカップは金箔を纏って蘇りました。
今後もご愛用頂けると思います。
唐草紋様に絡ませる
産経学園ユーカリが丘校のMさんの作品をご紹介致します。
お皿の割れを接着されました。
工夫されたのが仕上げの仕方です。
鳥脚状に割れたラインを銀泥で仕上げ、それを枝に見立てるように
元のお皿の柄である唐草紋様の葉を金泥で蒔絵されています。
割れの線がお皿の柄に馴染んで、これはとてもいいアイディアだと
思いました。
どんな割れでも通用するとは言えませんが、欠損をそうと見せない
工夫として覚えておかれるといい手法だと思います。
金繕い(金継ぎ)は欠損を直すという基本から、どう加飾するかという
次のステージに入っています。
皆様、柔軟に発想して下さい。
新しいアイディアお待ちしております。