月別アーカイブ: 2022年5月
茶香炉の金繕い
NHK学園市川オープンスクールのKさんの作品をご紹介致します。
茶香炉の蓋の割れです。
蓋は中蓋、外蓋共、割れていました。
加熱中に熱がかかる外蓋は接着後、和紙で補強されています。
香りが抜けるスリットが空いており、通常の補強より一段難しい
修復になりました。
工夫されたのは仕上げの色です。
焼き締めの渋い雰囲気に合わせて薫銀泥を使われています。
中蓋はガンメタリック色、外蓋は茶系です。
金繕いというと「金」のイメージが強いと思いますが、選択肢は
他にもあります。
こうしたいというイメージがありましたら、ご相談下さい。
ミルクガラスの馬
縁起物としてミルクガラスの馬を頂戴しました。
ミルクガラスを調べてみたところ、1950年頃にアメリカで誕生した
乳白色が練り込まれたガラスのことを言うようです。
有名なのが翡翠色のファイヤーキングというカップ類でしょう。
頂戴した馬は何かのノベルティーとして作られたものではないかと
いうことでしたが、「勝ち馬」と見て縁起物として下さいと
頂きました。
しっかりした入れ物に収めて、仕事用のバッグに入れて持ち歩いて
います。
きっといい事を呼んでくれると思います。
渦巻く
NHK文化センター柏教室の方の作品をご紹介致します。
鉢のひびですが、特徴的な形をしています。
ひびは縁から底へ向かって伸びたあと、渦を巻きます。
これは高台の周囲を辿っているのです。
器の欠損は厚みに影響を受けることが多くあります。
今回ご紹介の鉢も典型的な例で、高台を突っ切っていくほどの
衝撃はなかったので、高台の厚みを回避したと思われます。
金繕いするには、この渦巻きが面白さを出したので大成功と
言えるでしょう。
必然で生じた欠損が面白いのが、金繕いの醍醐味ですね。
水面に映る月
産経学園ユーカリが丘教室のTさんの作品をご紹介致します。
貝合わせの外側を加飾されました。
とても立派なサイズのはまぐり貝なのですが、あいにく酷く傷が
ついていました。
近年、蛤の生息地が浜辺から遠ざかってしまい、収穫にはじょれん
という金属製の熊手のような漁具を船から引いて貝を集めます。
このじょれんから逃れる際、大きく傷がついた貝が出てしまうのです。
Tさんはこの傷が月が水面に映った様子に見えるとおっしゃり、月を
蒔絵し、傷部分も金を蒔かれました。
月の周囲には銀箔でむら雲があしらわれています。
このくらい大きな傷は諦めてしまう方が多いのですが、Tさんはプラス
思考のアイディアで生まれ変わらせました。
現在は内側の絵を検討されています。
こちらも金箔の貼りが上手く出来なかったところを絵を描くことで
変換する試みにチャレンジされています。
意欲的に加飾されているTさんの創作意欲を楽しみにしています。
大きな欠け
藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
Oさんはお料理がお得意で、器も素敵なものをお持ちです。
大きな欠けの場合、綺麗に仕上げる方法がいくつかあります。
初めてチャレンジする方は、ご自分に合う方法がどれか確認してから
挑まれるのをお勧めします。
Oさんの作品はお料理が映えそうな作家ものの白い磁器です。
主に裏面に広がる大きな欠けですが、揺らぎのある雰囲気に合い、
とても綺麗に出来ていると思います。
一般のご家庭をお借りしている西登戸教室はコロナ禍の状況に合わせて
教室を運営して参りました。
ようやく「with コロナ」と言える状況になり、新しく受講したいという
方をお迎えしてもいいかと思えるようになりました。
場所は千葉県千葉市、最寄駅は京成線の「西登戸」駅です。
(神奈川県の登戸とお間違えないよう!)
徒歩数十秒という好立地にあります。
ご検討頂ける方はHPのコンタクトのページからご連絡下さい。
ハンダの直し
骨董店で購入した器を教室にお持ちになって、改めて金繕いしたいと
おっしゃる方は多くおられます。
その内、欠けの直しから出てきたものをご提供頂きました。
一体、これは何かと思われるのではないでしょうか。
正体はハンダです。
骨董店では商品を早く捌くことは大きな命題です。
仕事である以上、それが大切なことは理解出来ます。
しかしそれが体に良くないもので出来ていたら、どうでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、ハンダの成分は鉛です。
鉛が人間の体に悪影響を及ぼすことは良く知られていることだと
思います。
早く販売するために食材が盛られる器にハンダを使用するのを厭わない
業者さんがおられるのは嘆かわしいことです。
購入する側で気を付けて気に入った器を手に入れるしかありません。
もしハンダだとわかった場合には早急に対処なされて下さい。
繊細な仕上げ
NHK学園市川オープンスクールのKさんの作品をご紹介します。
いずれも小さい器に繊細な仕上げをされたものです。
非常に薄手のお猪口サイズの器です。
縁の部分が細かく割れており、この接着だけでも大変でした。
欠損した部分を埋め、器に見合った繊細な線で仕上げられています。
鮮やかなコバルトブルーの釉薬に金泥が映えて美しさを倍増させて
います。
総じて細い線の仕上げが素晴らしいと評価される傾向にありますが、
線の太さは器の雰囲気に合わせるべきだと考えています。
そういう意味でKさんの作品は器との相性がベストと言えるでしょう。
同時に仕上げてきて下さった器です。
こちらも繊細な金泥の線が緑青磁の釉薬に映えて美しい仕上げです。
今回ご紹介の作品で細い線の仕上げをしたいと憧れる方が出るかと思います。
しかしKさんは私の生徒さんの中でも屈指の努力家です。
簡単に同じような繊細な仕上げが出来ると思ってはいけません。
努力なくして安易に上手く出来る方法を尋ねる方には結果は伴わないと
釘を刺しておきます。
バラの香り
藤那海工房 金繕い教室の方からお庭のバラを頂きました。
部屋の中がバラの香りに満たされて、気分も華やぎます。
残念ながらフラワーアレンジメントは出来ないので、またまた勝手流です。
(画像で見るとめちゃくちゃですな。)
Y様、本当にありがとうございました。
密かに金継ぎでアクセサリー
シー陶器、シーグラスで作る金継ぎアクセサリー作りですが、
こっそり続けています。
まずご紹介するのは藤那海工房本漆クラスのOさんの作品です。
青系、緑系で統一し、放射状にレイアウトしたブローチです。
色味でまとまり感がありつつ、レイアウトは個性的。
日常に楽しんでお使い頂けたら嬉しいです。
次は港北カルチャーセンターのTさんの作品です。
多彩な色合わせをまとめたのは流石。
作業も綺麗な方なので完成度も高いです。
左側の作品は教室でお召しになっているエプロンにつけておられます。
同じ教室の方は是非ご注目下さい。
手元にある材料のみになってしまいますが、今年中にまたイベントが
開けたらと考えています。
やってみたい!という方はお声がけ下さい。
たくさんの欠け
NHK学園市川オープンスクールの方の作品をご紹介致します。
陶器のお皿の縁がたくさん欠けてしまっていました。
柔らかい質の陶器の場合、縁がたくさん欠けてしまうのは、よくある
ことです。
まずは1箇所づつ丁寧に欠損を埋めますが、問題は仕上げです。
欠けがたくさんある場合、金で仕上げると悪目立ちすることがあります。
ご紹介のお皿の場合は銀泥で仕上げられました。
縁に濃い釉薬の色がありますので、銀泥が硫化していくと、いい感じに
馴染む予定です。
お皿全体の感じとしても合うと思います。
縁にたくさん欠けがある器を金繕い中の方は参考になさって下さい。