月別アーカイブ: 2019年11月
漆繕い&金繕い
先日紅葉の貝絵をご紹介しましたセブンカルチャークラブ 成田教室の
Kさんの金繕い作品をご紹介したいと思います。
四角の小皿の角が2箇所、割れてしまったものを接着され、仕上げられました。
表面は新うるしの弁柄色に酷似した絵付けがしてあったので、仕上げも弁柄で
行われました。
裏面は釉薬の色に合わせて金泥で仕上げられています。
両面とも元々の色に馴染んでいるので、違和感がないと思います。
金繕いというと金属色で仕上げるイメージが強いせいか、よく漆の色で仕上げても
構わないのかという質問を受けます。
実は陶磁器の繕いは漆の色で仕上げる「漆繕い」から始まりましたので、漆の
色で完成として頂いて構わないのです。
Kさんの作品は漆繕いと金繕いを上手く使ったと言えます。
このお皿は角が立ち上がっており、接着には随分苦労されました。
しかし漆繕いと金繕いの併用で大変美しく、面白く完成したかと思います。
Kさんには今後もこのような楽しい取り組みをお待ちしております。
ランドマークのクリスマスツリー
昨日、原先生の助手で横浜ランドマークプラザに出かけました。
ランドマークでは既にクリスマスの装飾です。
吹き抜けを生かした上品な装飾で、毎年楽しませてもらっています。
同時にもう年末であることも意識させられます。
1年が本当に早く感じます。
来年はどうあるべきか。
貝絵 紅葉
セブンカルチャークラブ 成田教室のKさんの作品をご紹介致します。
金箔を貼った貝に紅葉を描かれました。
まず紅葉の描き方が大変素晴らしいこと。
形、色共に美しいです。
左の貝には遠方に山を描かれ、紅葉の数も左右で変えています。
画像ではわかりにくいのですが、紅葉の周囲には流水紋も入っています。
構図に関して最初にご説明させて頂いておりますが、その方法を生かして
頂くと完成度が高くなります。
Kさんもその方法を使って絶妙の構図で制作されました。
ハマグリ貝に金箔を貼るところまではカリキュラムとして行っております。
その後、絵を描かれたい場合は、まず画材を決めて頂くのが良いかと
思います。
画題を決めて頂くところから、じっくりご説明しますので、チャレンジして
みたい方は教室でご相談下さい。
漆塗弁当箱展
以前もご紹介しました鎌倉山漆工房時蔵の有志4名様の「漆塗弁当箱」
展に出かけてきました。
弁当箱他、100作品が展示された圧巻の展示会でした。
有志の内、坂本さんの作品については無料で頂けるという特典付きです。
私が頂戴したのは画像の一番右に写っている上段が赤のお重です。
坂本さんの作品は素材を生かしたもの、文字が彫り込まれたものなど多種多様で
楽しめるのですが、何より制作することの喜びに満ちていることが魅力です。
決して奇をてらうことなく素直に制作されていることにとても好感が持てます。
それはもちろんデザイナーであることがバックボーンになっているのだと思います。
坂本さんの作品を拝見して、自分の制作姿勢も省みる機会になりました。
貫入の仕上げ
港北カルチャーのMさんの作品をご紹介致します。
ひびが入った貫入の器の仕上げです。
貫入とは素地と釉薬の膨張率の差などによって,陶磁器の釉に細かいひびの
入った状態を言います。
一種の装飾とみなされており、鑑賞上の重要な見どころです。
Mさんの器にはひびが入っていたのですが、貫入の入った器ではひびは貫入に
影響され、不規則に曲がります。
このような場合、どのように仕上げるか悩まれる方がおられますが、Mさんの
ように生じたひび通りに仕上げるのをお勧めしています。
Mさんにとって、この器は仕上げデビュー作でした。
染付の地色から草花の絵柄が白く抜いてある美しい器です。
仕上げの金泥が美しく映えて、素晴らしいデビュー作になったと思います。
高麗茶碗展
現在、三井記念美術館で行われている「茶の湯の名碗−高麗茶碗」展
に出かけてきました。
高麗茶碗とは朝鮮で日常雑器として使われていたものを侘び茶の茶碗に
見立てたものと日本の為に焼かれてものに分けられます。
以前「井戸茶碗展」を拝見しましたが、同じような釉薬のものが並び、
どれがどれだかわからなくなるという状態になってしまいました。
しかしこの展覧会ではしっかりキャプションで説明があり、タイプごとに
数点並べることで特徴が把握出来るようになっています。
説明が丁寧なので、見分けがつかなかったカテゴリーが整理出来ました。
私のお勧めは展示室2の「粉引茶碗 津田粉引」です。
粉引の温かみがありつつ、とても繊細な形をしています。
展示室2に1点のみ飾られているのが相応しいお茶碗です。
また展示室4に参考展示されている掛け軸がさりげなく名品です。
こちらもお見逃しなく!
12月1日(日)まで。
本漆の仕上げ
藤那海工房 本漆クラスのOさんの作品をご紹介致します。
お皿の割れを接着されました。
本漆の仕上げでは丸粉という金塊をヤスリで擦り下ろして丸めた粒状のものを
蒔いて頂いています。
それを生漆で粉固めして、鯛牙と紙やすりで磨き上げて頂きました。
あまり磨き過ぎず、渋めに上がったのもお皿の絵柄に合っていて、素敵に
仕上がったと思います。
本漆は釉薬への活着が悪く、絵柄を入れたい場合は釉薬を荒らすか、ガラス用
漆を使用することになります。
相変わらずガラス用漆に抵抗がある私は、自ずと仕上げは欠損通りになります。
ただこの辺はお考え次第なので、本漆でも加飾をなさりたい場合は、ご指導して
おります。
また丸粉を使用すると耐久性は高くなりますが、必然的にコストが高くなります。
後々の変色を承知の上で真鍮や錫などの安い金属粉を使用するか、消粉と呼ばれる
箔を粉砕したものを使う方法もあります。
消粉の場合は耐久性が低いことを承知しておく必要があります。
Oさんの作品を見て、せっかく本格的にこだわって本漆を使われるのなら、粉固め
が出来る丸粉がいいのではないかとしみじみ考えています。
銀座・奥野ビル
今日は大学の先輩・同級生の展覧会をハシゴしてきました。
その内、同級生のグループ展が行われた建物がとても面白かった
ので、ご紹介したいと思います。
それは銀座・奥野ビルです。
銀座で最も古いビルで1932~34年に左右のビルが建てられました。
スクラッチタイルに2重扉のエレベーター…何となく同潤会アパートを
イメージしたのですが、設計者が同潤会の設計にも参加していた方
だそうで、類似も納得です。
現在70あるテナントのうち、20がギャラリーになっていて、それらを
巡るというのも楽しいかと思います。
建物が面白かっただけでなく、大学の先輩・同級生がそれぞれの道で
活躍している様子を拝見出来て、元気をもらった1日となりました。
仕上げデビュー
NHK文化センター千葉教室の生徒さんの作品をご紹介致します。
まずはYさんです。
趣きのある絵付けの湯のみです。
割れてしまったのを接着されて金泥で仕上げられました。
場所によって線の太いところと細いところが出るのが面白味になっています。
こちらはHさんの作品です。
V字型に割れてしまったものを接着され、金泥で仕上げられました。
仕上げの線が端正に描かれているのがカップにあっていて、とても
綺麗です。
お二人とも仕上げを初めてなさったのですが、いずれも秀逸な完成度
です。
仕上げは皆様緊張しがちですが、まずはやってみることをお勧めします。
何より上手になるには「場数」です。
頭でわかっていても実際やってみなければわからないことが多いのです。
よく仕上げをする器を貯めておかれる方がいらっしゃいますが、少し
ずつコンスタントに作業していた方が、毎回の上達が望めます。
まとめて仕上げてしまうと、その時の実力で全て出来てしまうことに
なってしまいます。
仕上げは何度でもやり直しが出来ます。
どうぞ積極的にチャレンジしてみて下さい。