月別アーカイブ: 2019年7月
目立たせない金繕い
よみうりカルチャー大宮教室のYさんの作品をご紹介致します。
黒楽の抹茶茶碗です。
黒楽茶碗といってもいわゆる引き出し黒のものではなく、マットでグレーがかった
色のものです。
垂れた釉薬も雄々しい景色を作っており、個性的なお茶碗です。
そこにひびが入っていました。
黒楽はひびが深刻でなければ目立たなく直すことも可能ですが、Yさんのお茶碗は
上記のような景色にしっかりひびが入っている状態でした。
ですので仕上げをして頂かざるを得なかったのですが、銀泥を硫化させて極力
目立たせない色に変化させました。
近年敢えて金繕いの部分を目立たせる形で仕上げる方もおられますが、本来、
金繕いは器に対して従の関係であるべきで、主張するならばより器がよくなる
方向でなければ行うべきではないと考えます。
そういう意味でYさんの作品は目立たない形での金繕いのあるべき姿だと思います。
ローズゼラニウム
虫除けやアロマオイルで知られているローズゼラニウム。
数本頂いた茎が大きく成長しました。
藍のプランターの側に置いています。
虫除け効果がどのくらいあるのかわかりませんが、今年藍に虫が付かない
のは、このローズゼラニウムのお陰と思っています。
伸びすぎてしまった部分は適度に切っているのですが、これを乾燥させると
ポプリになると聞き、室内に吊るしています。
風でなびいたり、触れたりするだけでバラ様の爽やかな香りがします。
癒されます。
マグカップの把手
NHK文化センター柏教室のAさんの作品をご紹介致します。
マグカップの把手が折れてしまうのはよくあることだと思います。
今までのブログでも補強をする方法、取り除いてしまう方法など
様々な手段をご紹介してきました。
Aさんはその内、取り除いてしまう方法を選択されたマグカップが
完成しました。
取り除いた状態でフリーカップとして使われる方もおられますし、ペン立て
など食器ではない用途にされる方もおられます。
把手は取り除いたとしても座の部分はどうしても残ります。
Aさんの作品は飴釉の色と金泥が合って、あまり違和感がないと思います。
割れの接着の他、窯傷として凹みがあったのを金繕いされました。
染付けの柄の場合、白地は金泥で仕上げて染付け部分を銀泥で仕上げ、
硫化を待って馴染ませる場合がよくお勧めする方法です。
Aさんの場合、全体を銀泥で仕上げた後、白地は色止めして銀色のままに
して、染付けの柄の部分は硫化を待つという方法をお勧めしました。
いずれにしろ接合線で柄が切られている感じを緩和することが出来ます。
なお色止めの方法は必ず練習が必要です。
手順は教室でご確認下さい。
第1回生藍染め大会2019
藍が順調に生育しているところ台風来襲で葉が痛みそうだったので、
少々早いですが1回目の生藍染めを行いました。
一昨年成功して味をしめた絹と綿、ビスコースのストールは期待通り絹の部分が
しっかり染まって、ほとんど染まらない綿、ビスコースの部分と巻き方で表情が
出そうです。
その他、先日購入してきた絹の白生地も染めました。
こちらは生地が大きかったので、それぞれ2回染めていますが、ペパー
ミントグリーンの方は色が浅いのでもう1回染めてもいいかもしれません。
藍は最初に出た葉が一番大きく、色も濃いように思います。
それを強風で痛めてしまうのは忍びなかったのです。
また再成長して、上手く行けば8月末にまた染めが行える予定です。
原三渓の美術
横浜美術館で行われている「原三渓の美術」展に行ってきました。
原三渓というと横浜出身の私としては「三渓園」が馴染みがあります。
生誕150年・没後80年記念のこの展覧会は副題に「伝説の大コレクション」
と銘打っているように三渓自身も一堂に観ることが敵わなかった旧蔵の
名品を過去最大の規模で展観することが出来ます。
展示品は「コレクター」「茶人」「アーティスト」「パトロン」の4つの
側面で分類されていますが、特にコレクターと茶人のコーナーに展示
されているものは国宝や重要文化財に指定されているものを含み、どれもが
名品です。
パンフレットにも掲載されている「孔雀明王像」は平安時代後期の作で
現在は東京国立博物館に収蔵されています。
なかなか東京博物館でも展示されない一品が、8月7日まで展示されています。
こちらの神々しいお顔を見るだけでも会場に足を運ぶ意味があると思います。
なお美術館の中は作品保護のため、低い温度に管理されています。
羽織る物をお持ちになるか、会場でブランケットを借りるのがよろしいかと
思います。
目立ちにくい補強
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
急須の蓋の補強です。
度々急須の蓋の補強はご紹介しておりますが、補強の理由は湯気がかかって
熱くなることと蓋を置き外しがあることからです。
Kさんの作品の場合、蓋の内側に絵柄がありましたので、通常の方法では
補強が出来ませんでした。
ではどこで補強したかというと弁柄色になっている部分、つまり急須本体と
接する縁です。
ここを和紙で補強していますが、全くわからなくなっていると思います。
また弁柄色は新うるしの色そのままですが、元々の意匠のようで違和感がない
と考えています。
一口に補強と言ってもいつも同じ方法が取れるとは限りません。
そういう意味でKさんの作品は、いい勉強になりました。
Kさんの作品をもう一点。
万作さんという作家さんの小皿です。
磁器なのですが手びねりのざっくりした作りとおおらかな絵付けが人気の
作家さんで、お持ちの方も多いと思います。
実は接着がずれてしまったので、仕上げの線も太くせざるを得なかったの
ですが、それが幸いして器の意匠に合った仕上げになっています。
度々仕上げの線は器に合わせてとお話ししていますが、こちらの作品も
好例と言えるでしょう。
是非参考になさって下さい。
さや堂ホール
北大路魯山人展を見に出かけた千葉市美術館には旧・川崎銀行千葉支店の
建物が「鞘堂方式」という方法で保存されています。
旧・川崎銀行千葉支店は昭和2(1927)年、ネオ・ルネッサンス様式で建築
されました。
内部はイオニア式のオーダー(柱飾り)が並び、壮観です。
以前のブログで東京駅前のKITTEビルについて書きましたが、どんな形に
せよ保存を考えるのはいいことだと思っています。
外観を含めて建物に取り込まれるようにする方法を「鞘堂方式」というので、
こちらは現在「さや堂ホール」と呼ばれています。
中央区役所の移転で改修中ですが、再びコンサートなどで活用されるのを
期待しています。
北大路魯山人展
現在、千葉市美術館で行われている没後60年記念の北大路魯山人展に
出かけて来ました。
副題に「古典復興 現代陶芸をひらく」とあるように魯山人が中国陶磁や
朝鮮陶磁から始まり、桃山陶へのあこがれを経由、日本陶磁へ回帰し、枯淡の
造形に至る足跡が辿れるような構成になっています。
その足跡が同じ時代の作家を刺激し、現代陶芸に影響を与えているという考察
です。
魯山人というと豪放な作風としか認識していなかったのですが、構成通り
足跡を辿ると魯山人の思考の変化がわかります。
古い名品から直接型を取るなど、作家としてはボーダーラインを超えている
ところがあり賛否両論でしたが、やはり作品の力強さには魅せられます。
近隣の方以外からすると千葉市美術館は遠方かと思いますが、これだけの作品を
一同に見られるのはなかなか無い機会かと思います。
会場は空いているので、かなりゆったりと見学出来るのも魅力です。
ただその分、マナーには気をつけなければなりません。
8階の会場はフローリングで靴音が響きます。
靴音が響かないお履き物でお出かけ下さい。