月別アーカイブ: 2019年5月
輪花を復元
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
輪花の大鉢の金繕いです。
器の縁が花びらのような形態になったものを輪花と言います。
Kさんの作品は陶器の大鉢で、ゆったりとした形ではあるものの、大きく
破損した部分を元の形を想像しながら復元するのは大変でした。
しかし根気よく作業され、きっちり形を復元されました。
大きな面積であるがゆえに、仕上げも色々試行錯誤されましたが、結局
シンプルに銀泥仕上げとし、少々硫化させたところで完成となりました。
一菜会では欠損を木片で補うことを旨としています。
これは木の加工がしやすいことが大きい理由ではありますが、古い金繕いを
再修復すると木片がベースにあったことに由来します。
木片で金繕いすると隙間が出るのではないかと心配される方もおられます。
もちろん完璧に隙間なし埋められますとは言い難いところはありますが、
これは本漆の錆漆や刻芋漆でも同様かと思われます。
欠損に隙間があった場合、問題になるのは電子レンジをかけた場合です。
わずかな空間の空気が膨張して破裂するかもしれませんが、そもそも金繕い
(金継ぎ)したものはスパークしてしまうので、電子レンジにはかけられません。
よって問題はないと言ってしまって良いかと考えています。
何より木片と漆のたった2つの素材で形成するので、シンプルです。
シンプルなものが最も強いし、形も作りやすい。
最高の手段だと自信を持ってお教えしております。
Kさんの作品はお友達のところへ帰ります。
大きく破損した時点で諦められていたかと思いますが、きっと新たな魅力に
驚かれると思います。
使ってこそ花
藤那海工房 西登戸教室のOさんがご自身で金繕いされた大鉢に
お食事を盛られた画像を送って下さったので、ご紹介したいと
思います。
春にタケノコご飯と天ぷらを盛られているのですが、木の芽などの緑と
金泥の仕上げが冴えて、とても美しいと思います。
後世に伝えるものとして破損個所をわからなく直す西洋の陶磁器の修復と
違い、日本の金繕い(金継ぎ)は再び使うことを目的としています。
Oさんの大鉢は完品とは違う美しさを持って、使う喜びが増したと思います。
金繕いを習っている方、これからやってみようかという方には、ぜひOさん
の作品のように新たな姿に生まれ変わった器を使う喜びを感じて頂きたいと
思っています。
Oさん、画像の送付をありがとうございました。
藍の発芽2019
先日蒔いた藍の種が芽を出しました。
発芽時期は種を蒔いてから7〜10日なのですが、それを守ってきっちり
7日後から発芽しだしました。
11日目に当たる今日までで何と100%の発芽率でした。
しかし発芽時点で後々大きく育つものは双葉からして大きいのですが、あまり
大きくないものは小さいままです。
最終的には6株でいいのですが、念の為、さらに8粒蒔いてみました。
昨年は天候によってアクシデントがあったので、時期をずらして種を蒔くのが
防御策になるかと考えています。
さて、どうなるか。
あまり神経質にならずに観察したいと思います。
蘭鉢の金繕い
NHK文化センター 柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
蘭鉢の金繕いです。
昨年、雑誌「盆栽世界」に掲載して頂いたように、植木鉢の修復も
出来ます。
内側に金泥の仕上げがありますが、外側は元の色に合わせて漆繕いを
行ったので、どこが破損しているかわからなくなっています。
実は縁のあたりがボロボロに割れて、破片が失われていた部分もあった
のです。
表の色が鮮やかで新うるしの色が合わせやすかったのもありますが、
ボロボロの状態を根気よく埋められたMさんの作業の成果でもあります。
陶磁器という意味では蘭鉢も盆栽鉢も一緒です。
お気に召している鉢でしたら金繕いを考えられてもよろしいのでは
ないでしょうか?
大きな欠けの仕上げ
NHK文化センター千葉教室のTさんの作品をご紹介致します。
大きな欠けの仕上げです。
最大幅が3cm近くある欠けです。
これほど大きいと仕上げの作業は格段に難しくなります。
そこでTさんには特別な道具を使って頂きました。
この特別な道具も人によっては難しい場合があるのですが、Tさんは難なく
こなされました。
その結果、地塗りが綺麗に出来て、素晴らしい完成度になりました。
教室の方々から賞賛が絶えなかったのも理解出来ます。
大きい欠けの仕上げをなさる方は、是非Tさんの完成度に続いて頂き
たいと考えております。
作業の前にご相談下さい。
急遽 藍の種蒔き
今秋、自宅マンションの大規模改修があるので、藍の種蒔きは
しないつもりでした。
それが工事が来春に延期となる可能性が大となり、急遽種を取り寄せ、
蒔きました。
昨年は種を蒔いた後に真冬並みの寒さが来たりして発芽が良くなかった
のですが、さすがに5月中旬になっているので、そのような問題は
なさそうです。
そういうことを前向きに考えて、昨年の反省点をクリアして、うまく
育てられたらいいなぁと考えています。
凸凹をなくすには
藤那海工房 西登戸教室のOさんの作品をご紹介致します。
たくさん完成させて来て下さいました。
ちょっとわかりずらいのですが、急須の底にひびが入っていたのを金繕い
されました。
この底部分にひびが入ったのは、破損とは思われません。
別の理由が考えられます。
しかしプラチナ泥のおしゃれなデザインに見えるので、結果的に素敵に
なったとしてヨシとするべきだと思います。
こちらは作家さんもののモダンなデザインの大皿です。
裏面に大きく欠けていたのを金繕いされました。
こちらもプラチナ泥で、シャープなお皿の意匠ととてもマッチしていて
いい感じに仕上がっています。
最後は欠け+ひびとひびの入ったお皿です。
長いひびの線はご本人も満足の出来です。
最初の頃は難儀されていたのを、すっかり克服されました。
問題は欠け+ひびです。
少々凸凹が出ていたのですが、今回は完成とされました。
なぜ凸凹が出来るかと言うと、ズバリ下地に問題があるからです。
ではそれをどう克服するかと言うと、ひたすら弁柄を塗ってトクサで
磨く作業を繰り返すしかありません。
「忍」の字が頭に浮かぶことがしばしばあるくらいですが、ここを
おろそかにすると仕上げてみて気に入らないとなる訳です。
但しこれはご自分の持ち物を直されていることなので、強制は致しません。
おおらかな仕上げも構わないと思っています。
ハマグリ貝 修復への道2
先般、割ってしまったハマグリ貝を接着したところまで、ご報告
しました。
その後、せっせと欠損を埋めたところです。
ほぼ破片が足りないところが埋まっています。
もう少し作業して、完璧に埋まったら再度金箔を貼ります。
貼ってしまうと内側はどこが欠損していたのか、わからなくなる予定です。
次回は金箔を貼ったところでご報告したいと思います。
小さな鳥脚
藤那海工房 西登戸教室のIさんの作品をご紹介致します。
湯のみの割れ+ひびです。
鳥脚状の欠損は器の形、厚み、カーブなどの条件で変わってきます。
Iさんの作品の場合、外側に反っている部分の中に収まっています。
それがとても可愛らしく見えます。
Iさんは手仕事がお好きなだけあって、作業がとても丁寧で綺麗です。
仕上げも慣れられていくうちに、どんどん上達なさると思います。
今回の作品は線がとても綺麗に描かれていて、金泥の蒔くタイミングも
大成功です。
現在は漆器のお重にチャレンジされています。
漆器の修復はひたすら丁寧に作業するしかありませんが、Iさんならば
きっと成し遂げて下さると思います。
線香作り
西登戸教室をお借りしているKさんには、お香を匂い袋、練香と
教えて頂いてきましたが、今回はお線香を教わってきました。
匂い袋、練香と同様に使う素材を聞き、自分のイメージに合わせて
調合していきます。
それを水で練って注射器に入れて出す細い棒状とコーン型に成形
しました。
これをしっかり乾燥させて完成です。
実際火をつけて聞いてみたところ、狙いの「すっきりした甘め」になって
おり、なおかつ天然素材なので上品な香りで、かなりの満足度です。
香りは焚いている時ではなく、燃え尽きてしばらく経ってから残り香を
楽しむものなのだそうですが、時間の経過で変化していくのも面白いと
思いました。
調合の仕方で全く違う香りが出来上がりますし、何より天然素材なので
プレゼントにもいいのではないでしょうか。
是非またチャレンジしたいと考えています。