現在、東京国立博物館で行われている「顔真卿−王羲之を超えた名筆」
を見てきました。
顔真卿(709〜785)は唐時代の文人です。
伝統を継承しながら「顔法」と称される特異な筆法を創出しました。
中国では書聖・王羲之、初唐の三大家ではなく、目指すなら顔真卿の書
であると言われているそうです。
今回の展覧会の目玉は「祭姪文稿」という非業の死を遂げた若い甥を供養
した文章の草稿で、悲痛と義憤に満ちた肉筆です。
最初の数行こそ冷静な筆致を保っていますが、途中は墨で塗り潰したり、
加筆したりと、心の揺らぐ様が現れているようです。
最後の数行は字も行も乱れ、涙が溢れているのではないかと思わせます。
展覧会では書聖・王羲之、初唐の三大家の書も展示されているので、これら
との比較ができます。
何を持って顔真卿の書が評価されているのか、考えてみるのも良いでしょう。
私は祭姪文稿に現れているように、感情まで書に表現されているからではない
かと感じました。
テクニック的に言うと隷書、篆書の書法を楷書に持ち込み、王羲之以来の
書法を一転させたことにあるようです。
右利きの人の右上がりになる傾向を抑えて正面を向いた字姿にすること、
横画を細く、縦画を太くすることで字間を詰めても美しいので、私たちに
馴染み深い明朝体の元となりました。
会期は今月24日日曜日までです。
平日の今日の午後は、祭姪文稿の前で行列が出来、拝見までに30分並びました。
歩きながら見るように誘導されるので、拝見出来るのも、ほんの数秒です。
かなりテレビなどで紹介されているので、会期末はさらなる混雑が想像され
ます。
金・土曜日の開館が長い曜日を狙った方がいいかもしれません。