月別アーカイブ: 2019年1月
菜箸の塗り直し
拭き漆で色々塗り直しをしていますが、10年以上使っている漆塗りの
菜箸の塗り直しにも着手しました。
画像手前が塗り直し後で、奥が塗り直し前です。
塗り直しが終わった方は、いつの間にか先端部分に削げが入っていて、
あわや廃棄というところだったのですが、紙ヤスリで磨いて見事
復帰しました。
この菜箸は盛岡にある民芸店「光原社」で求めたものです。
ブログを書くにあたって光原社について検索したところ、社名が宮沢賢治の
命名とわかりました。
創業者が賢治と懇意で、「注文の多い料理店」を出版したのが光原社だった
のです。
光原社は民芸店に転身したのですが、趣のある建物が並んだ敷地内に
賢治を始め童謡の資料館があるようです。
盛岡にお出かけの方には、お立ち寄りをお勧め致します。
少し足す
NHK文化センター柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
Mさんの作品は度々紹介させて頂いていますが、とても形の
作り方がお上手な方です。
大きな欠け、ひびを仕上げられました。
形の作り方、仕上げ方は全く問題がありません。
プラスアルファするならばとお勧めしたのが、元々の弁柄色の柄を
再現することです。
金泥の仕上げの上から弁柄で柄の続きを描くようにすると、欠損で損なった
印象が薄まります。
敢えて何らかの蒔絵をしなくても、ちょっとした工夫で馴染ませることが
出来るというのは度々ご説明している通りです。
梅の香り
先日「茶花として活ける松竹梅」のお稽古をしてきた梅が
咲き始めました。
丸く膨らんだ蕾がポンと咲くのが、とても可愛いです。
何より香りが部屋に満ちて、さらに幸せな気分にしてくれます。
まだまだ寒い日が続きますが、花が咲くのを見ると春が待ち遠しい
ですね。
インフルエンザに罹患してしまったり、体調を崩して教室をお休みに
なる方が増えています。
どうぞご自愛頂いて講座にお出で下さい。
漂白中
先日、世田谷ボロ市で購入した器を漂白中です。
蕎麦猪口のひびには、まだまだ汚れが入っていますが、だいぶサッパリと
してきました。
漂白で時々ご質問があるのが「漂白して見えなくなってしまったひびは
ひび止めしなくてもいいんですよね。」というものです。
これの答えはもちろん「否」です。
見えなくなったのは、ひびに入った汚れであって、亀裂が入ったという欠損が
直った訳ではないからです。
ひびは先端に水蒸気が入ることによって進行することがわかっています。
金繕いしなければ、そのままひびは進行し、最悪割れに発展するかもしれません。
先日Yahoo!ニュースに割れた器が牛乳で煮ると直るという話題が出ていました。
金繕いを習っておられる方なら、このニュースが荒唐無稽だとお分かり頂けると
思います。
何事も論理的でないことは、あり得ないとお考え下さい。
何のために行うのか真の理由がわかっていれば、作業に迷うことはないと
思います。
美吉野紙の保管方法
伝統的な漆濾し紙の吉野紙に対し、現在一般的に濾し紙として
使われているのが、レーヨンなどの合成繊維で作られた「美吉野紙」
です。
いくつかサイズがありますが、私の購入しているのは28cm ✖️ 54cmの
もので、半紙が長くなったような大きさの物です。
これを仕上げの時に使う場合は、小さくカットして使います。
厳密な大きさの決まりはありません。
半分に切ってを繰り返すと、だいたい7cm角くらいのサイズになります。
この程度の大きさで構いません。
保管は削りカスや紙ヤスリの粉などがつかないように、何らかの袋に入れて
頂ければ良いかと思います。
私は透明のジップ袋に入れています。
仕上げの際には四つ折りにして使います。
のりうるしの時のようにキャンディ型にはしません。
具体的に実演しますので、教室でお問い合わせ下さい。
中国の宣紙 毛辺
漢字の臨書で使っているのが、中国の宣紙で「毛辺」という
ものです。
画像でお分かりのように、色はベージュでゴミは入っているし、穴も開いて
いる、シワも寄っていると決してクオリティーの高い紙ではないのですが、
独特の風合いが気に入っています。
実はこの紙は竹を主原料としていて、作り方が悠然としています。
1.若竹を裂いて渓谷の流水で自然に腐らせる
2.腐って柔らかい繊維の束になったところで煮て晒す
3.山や渓谷の草原に広げ、1年天日に晒す
途中2〜3回、表と裏をひっくり返す
4.漉く
(参考 榊 莫山 「文房四宝 紙の話」)
何より価格が安いのが練習用として最適だったのが、近頃値段が上がって
いると聞きました。
原因はてっきり中国の人件費が上がったのかと思ったのですが、何と
環境問題に引っかかったからなのだそうです。
この紙自体は問題がないのですが、周辺が問題になった模様。
ただでさえ偽物が出回る紙なので、ネットで買ってしまう訳にもいかず、
悩ましい限りです。
世田谷ボロ市 2019.1
昨年12月にも世田谷ボロ市に出かけていますが、すでに閉店して
しまった店が多かったので、珍しく1月の市にも出かけてみました。
あいにく予報より強めの雨が降り、屋根のない店舗はカバーをかけて
閉店してしまいました。
しかし1時間ほどで止み、晴れ間も見えて、再開。
今回珍しく1月の市に出かけたのは、友人からの依頼があったからです。
それがどんな形になるのかは、詳細が見えたところでブログに書きたいと
思います。
購入したのは2点。
いずれも江戸中期のものとのこと。
どちらも欠けとひびがあります。
贋作でないことを祈るのみ!
12月に出かけた時には終了してしまった店舗が多くて、よくわからなかった
のですが、例年購入していたお馴染みのお店が出店していないことが今日、
わかりました。
全体として飲食店や自作の陶芸作品を販売している店が多くなっています。
それは結局、馴染みの店がなくなっているということに繋がっていたのですね。
今後、対応をどうするのか考えなければならない時期に来たようです。
冷蔵庫で保管
本漆のチューブの保管方法について、ご説明が足りなかったようなので、
改めて書きたいと思います。
基本は立てて冷蔵庫保管です。
冷蔵庫内は本漆が固化しにくい低温低湿の環境であることが大きな理由
ですが、特に生漆や瀬〆と言われる漆の樹液そのもので加工されていない
ものは「なまもの」感覚があります。
漆の固化によってキャップが開かなくなってしまった時は、熱湯の利用で
簡単に開きます。
しかしこれも近日に使用したものでないと不可能になります。
数年キャップを開けていなかった場合は尾部のカシメてあるところを開け、
別途用意した空きチューブに詰め替える必要があります。
カブレの問題を考えると、チューブの詰め替えが簡単ではないとお分かり
頂けると思います。
出来れば使用の都度、キャップについた本漆を拭い、開かなくなるのを
避けるのが一番かと思います。
ちなみに生漆や瀬〆は、開栓後1年を越えると固化の程度が悪くなります。
出来れば早々に使い切る算段をされた方が良いでしょう。
ハマグリ貝 割れます
とても硬いイメージがあるハマグリ貝ですが、落としてしまえば
割れてしまいます。
画像は昨年末の貝合わせの講座で私が取り落として割ってしまった
ハマグリ貝です。
せっかく制作されて、あと少し修正してお持ち帰りというところで
粗相してしまいました。
本当に申し訳ないことをしたとお詫びの言葉もありません。
しっかり修復してお返しする予定です。
という訳でハマグリ貝は割れます。
取り扱いにはご注意下さい。
以前にも磨きの説明の途中で落としてしまったことがあり、やはり
割ってしまったのですが、今回の件でいよいよ自分の手元に自信が
なくなりました。
講座中、立ったままご説明することが多いのですが、今後はなるべく
座らせて頂いて、ご説明しようと思っています。
どうぞご理解下さい。
筆が割れる原因
昨年12月にご質問が多かったのが、筆が割れるというものです。
これは以前のブログにも書いているのですが質問が続いたので、
再度説明したいと思います。
ズバリ原因は筆の洗い方が足りないからです。
穂先の根元に漆の成分が残って固まっており、筆を割れさせるのです。
割れてしまうとご質問頂いた方の筆を確認させて頂くと、例外なく
穂先の根元に粘り気を感じます。
場合によっては筆の毛1本1本にまとわりついている弁柄が細い毛の
ようにパラパラと落ちてくる方もおられます。
しかしこれで筆が駄目になってしまうわけではありません。
再度徹底して穂先を洗浄すれば、復活します。
まず薄め液に15分以上、漬け込んで下さい。
その後、画像のように根元を揉みます。
それから通常通り台所洗剤でしっかり洗って頂ければ完了です。
仕上げ用の筆は大切に使えば10年以上持ちます。
メンテナンスにも気配りをお願いします。