月別アーカイブ: 2018年10月
遊び心
NHK文化センター柏教室のUさんの作品をご紹介します。
遊び心を加えて仕上げをされました。
実は星型になっている部分だけが小さく欠けていただけで、他は問題
なかったそうです。
それを月の形の仕上げを入れることで、小さな欠けのみになるのを回避
されました。
他の方法としては銀泥で仕上げて、硫化したら釉薬の色と馴染むという
のがあるかと思います。
しかしUさんのように攻めてプラスに変えるという積極的な方法も
大歓迎です。
仕上げは持ち主の方の好みで構いません。
こうでなければならないという決まりはないので、自由に発想して頂きたい
と考えています。
硫化を待って青紫に
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介します。
銀泥の硫化を青紫色になるまで待たれました。
欠けたところをまず金泥で仕上げ、その上から銀泥で染付けの柄が続くように
描き起こされました。
薬品で硫化を促進する方法もご紹介しましたが、やはり自然に硫化させた
方が色が綺麗です。
柄も綺麗に描き起こされているので、欠損が器に自然に馴染んでいると
思います。
ちょっとした工夫ではありますが、金繕いと欠損が美しく共存する方法です。
ぜひ参考になさって下さい。
秋の茶会
海浜幕張公園 美浜園の松籟亭で行われた茶会にお招き頂きました。
というのも先日金繕いしてお返しした黒楽茶碗が、お濃茶の席に
使われるとのことだったからです。
雨が上がり晴れ間も見え、心地よい気候の中、お伺いしました。
正直に言うと、お茶に関しては全くの不調法者なのですが、席主の方から
お茶を楽しんで頂く為の席ですとあたたかいお言葉を頂き、甘えさせて
頂きました。
お返しした黒楽茶碗は蘇って手元に戻ったことから「帰来」と銘をつけられた
そうで、座の注目を集めた姿は誇らしげに胸を張っているように見えました。
お返しした器が実際使われている姿を見ることは早々ありません。
このような機会を与えて下さった席主の方に改めて御礼申し上げたいと
思います。
カトラリーの木地
昔から何かと木地を購入していたのですが、探し物をしていたら
コーヒースプーンの木地が出てきました。
ご覧頂けるようにスプーンの尾部に矢印のような続きがあります。
実はお箸を含めてカトラリー類の木地はこのように刺して固定出来る
部分がついています。
全体が塗り上がった後に切り離して、部分的に塗り足すのです。
お箸の色を変えたりしているのは、塗り足し時に行っている訳です。
新品の制作の場合にはこの部分があるおかげで、全体が塗りやすくなって
いるのですが、完成品の塗り直しでは同じようには出来ません。
どのように塗り直すかにもよりますが、何らか工夫が必要になってくる
のがお分かり頂けると思います。
紅葉
港北カルチャーセンターのTさんの作品をご紹介致します。
お皿の欠けを金繕いされました。
どこが欠けていたか、お分かりになるでしょうか?
上の画像の下方、縁にある紅葉の部分です。
元々、金彩で紅葉が入っていましたので、欠けの形が隠れる様に
紅葉型で仕上げをして頂きました。
紅葉は入れ方を間違えると、全く別の物に見えてしまいます。
そこで慎重に大きさ、角度を検討して頂きました。
その結果、上の全体が写った画像でみるとどこが欠損していたかわからなく
なっていると思います。
主張するばかりが金繕いではありません。
さりげなく馴染んでいるというのも素敵と思って頂ける作品です。
金箔の保管方法
昨日、貝合せの講座の事を書いた続きで、金箔の保管について
ご説明したいと思います。
金箔を綺麗に貼るには金箔が平滑であることが必須条件になるので、
どなたも平滑に保つことには気を配られると思います。
これは厚手のボール紙などに挟んでおけば問題ありませんが、実は
長期に保管して置く時に気をつけなければならないのが湿気なのです。
湿気が入ると、金箔は箔合紙に密着してしまいます。
剥がす方法はあるのですが、手間がかかります。
本格的に保存するには箔用の桐箱があります。
私はこちらに購入した状態のストック分を保管しています。
ただ桐箱はそれなりの値段がしますし、量があまりなければ大袈裟過ぎます。
そこで私が小分けして保管しているのは、食品保管袋のジップロックです。
厚み1.5mmほどのイラストレーションボードに挟んだ状態で入れています。
しっかり封をしておけば、ある程度の湿気も防げます。
さらに除湿剤を入れると良いのかもしれません。
量がある方はプラスチック製の折り紙入れなども流用可能です。
ちなみに金箔は長期保存しても変化しません。
稀に少量含む銀、銅部分が変色する場合がありますが、品質に問題が
起きてはいません。
輝和美倶楽部の貝合わせ講座
本日、輝和美倶楽部さんの貝合わせ講座でした。
過去2回の講座で新うるしを使っておられる方あり、全く初めての方あり
の講座でしたが、皆様大変完成度の高い作品が出来上がりました。
いずれの方も金箔を貼る貝合わせをやって見たかったとのことでしたが、
実は貝合わせの制作というと、通常はアクリル絵具の金色を塗り重ねる方法
でなさる方がほとんどだからです。
ですので手順をご説明しても隙間が出来るのではないかとか、シワが寄った
ままになるのではないかと心配なさっておられましたが、実際作業してみると
一面綺麗に金箔が貼れるのです。
古来からの手法は膠で金箔を固定していますが、強度の点でも新うるしに
利点があります。
食器に使えるほど耐水性があるので、絵を描かれる場合にも描き直しが
可能なのです。
何と言っても「金箔」の魅力が一番かと思います。
銀を硫化させる
藤那海工房 西登戸教室のKさんの作品をご紹介致します。
銀泥を強制的に硫化させて釉薬に馴染ませておられます。
義理のお父様の手作り品だそうで、とても味がありますが、注ぎ口の
先端が欠けてしまっていました。
これを埋めて銀泥で仕上げられました。
黒の釉薬に馴染ませるために、銀泥をある薬品で強制的に黒まで硫化させて
います。
もちろん自然に変化しても、いつかは黒になるのですが、黒が目標であれば
一気に硫化させるのも考え方の一つです。
こちらの小皿は欠けと割れがありますが、それぞれの銀泥の仕上げを少しだけ
硫化させています。
グレー系の釉薬に上手く馴染んでいると思います。
こちらの蓋物はアフリカンな柄が入っています。
本体の縁が2箇所大きく欠けているのですが、黒色まで硫化した色が
柄として入っている色に酷似しているので違和感がありません。
こちらは貫入の入った釉薬に沿って不思議な割れ、欠けの入った
お抹茶茶碗です。
Kさんは手描きと思われる柄と相性が良いとお考えで、このまま
自然に硫化を待つそうです。
銀泥は変化の色を生かして金繕い出来るのが魅力で、はまってしまう
方が多いのです。
黒くなってしまうとマイナスに捉えずにKさんのように、器に合わせて
使うことを楽しまれて下さい。
第16回 工房からの風
会期が終わってからの報告になってしまいましたが、市川ニッケコルトン
プラザでこの週末行われたイベント「工房からの風」に行ってきました。
このイベントは様々なジャンルの工芸作家さんが集うもので、作品の購入も
出来ます。
参加される方々はオーディションを経て選ばれているので、クオリティーが高い
のが見る側としても楽しいものとなっている理由だと思います。
毎回参加者が変わるので、新しい作家さんとの出会いがあるのも魅力です。
今回は藤那海工房金繕い教室 土曜日クラスの生徒さんと「遠足」と
称して出かけました。
また何か気に入った器があればと思っていたのですが、残念ながら今回は
購入に至らず。
代わりに入手したのが「コブナクサ」です。
こちらは草木染めの材料で、アルミ媒染で柔らかい黄色に、さらに鉄媒染を
加えるとカーキ色になります。
生藍染めの青にプラスして染めれば、生藍染めの2染目とは違った緑になるの
ではないかと期待しています。