鹿児島睦さんの板皿 金繕い

このところ特別な金繕いを完成させたので、順次ご紹介したいと
思います。
まず「おむすび まるさんかく」の店主、大倉千枝子さんから
ご依頼頂いた鹿児島睦さんの板皿です。


鹿児島睦さんは、動物や植物をモチーフにした図案を入れた作品が
人気の作家さんです。
ご依頼頂いたお皿は、大倉さんが鹿児島さんに屏風をイメージして
オーダーしたもので、とても思い入れのある作品です。
3枚組の状態が鹿児島さんの作品集にも掲載されています。
それが大きい破片と小さい破片2つに割れてしまいました。

大倉さんからのご依頼は、出来るだけ鹿児島さんの世界観を損なわない
状態で金繕いすることでした。
実は画像に写っている右上の小さい破片と大きな破片には、ひびが
入っていたのですが、これを本漆で直すと、しっかり表面に色が
出てしまいます。
なるべくこれを目立たなくするために、新うるしでの金繕いを選択
されました。

上の画像を見て頂くと、そのひびの入り具合がわかると思います。

さらに仕上げは白い釉薬の部分は金泥で、青い釉薬で図案が入って
いる部分は銀泥で仕上げをしました。
銀泥で仕上げた部分は、いずれ硫化して青い釉薬に馴染んでくるのを
計算してあります。
このあたりはカラーリストでもある大倉さんと綿密に打ち合わせ
致しました。

本来長さのあるお皿の場合は裏面から補強をお勧めするのですが、
3枚組ですので、この1枚だけ補強してしまうと大倉さんが大切に
している鹿児島さんの世界観を損なうことになります。
そこで使用の際には注意して扱って頂くことで、回避しました。

今回の作品のように、ご依頼主からのご要望に出来るだけ応える
のが重要だと考えています。
そのためには「〜でなければいけない」というような固定観念に
固執する必要はないかと思います。

今後は銀泥の硫化の様子で、もうひと手間加えるか否かが課題です。


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