月別アーカイブ: 2018年2月
馴染むドーナツ型
NHK文化センター ユーカリが丘教室のKさんの作品を
ご紹介致します。
小さな破片の接着で周りが薄く欠損していて、ドーナツ型に
なった仕上げです。
ドーナツ型は手数が多くなるので仕上げが難しいのですが、大変
綺麗に形が取られています。
金の光沢も良いので、金泥を蒔くタイミングが良いのがわかります。
さらに薄茶色の釉薬に金泥が馴染んでいて、あまりドーナツ型が
目立ちません。
総合的に大変良い仕上げになっているのですが、ご本人としては
ご不満なご様子でした。
しかしこのような「納得いかない」という思いが、さらなる上達を
生むのではないかと思います。
聞くところによるとネットでは見た目が?な仕上げでも構わないと
している方がおられるとか。
しかしせっかく直しても使いたいと思っておられるくらいの器なら
素敵に直したいものです。
是非より美しい完成を目標にして頂きたいと思っています。
2018.4月期 カルチャーセンターの募集
TOPページでもご紹介していますが、カルチャーセンターの教室の
春の募集が始まりました。
募集が確定しているのは以下のクラスです。
NHK文化センター ユーカリが丘教室
毎月第3月曜日 13:00〜15:00
よみうりカルチャーセンター 大宮
毎月第4月曜日 15:30〜17:30
セブンカルチャークラブ 成田
毎月第1月曜日 10:30〜12:30 (5月スタート)
JEUGIAカルチャーセンターイオンモール八千代緑ヶ丘
毎月第2金曜日 10:00〜12:00
この他の教室については、キャンセル待ちの承りになる予定です。
ご都合がつくようならば、3月の教室をご見学下さい。
ご要望に叶う教室かどうか、ご覧頂きたいと存じます。
単に器を直すだけではなく、手仕事を楽しんで頂ける方の受講を
お待ちしております。
なお詳細は各カルチャーセンターにお問い合わせ下さい。
美吉野紙 入手先
昨日からの紙つながりで、漆濾し紙の「美吉野紙」「新吉野紙」
をご説明します。
以前のブログにも書いていますが、「美吉野紙」「新吉野紙」は
漆濾し専用の合成繊維で出来た紙です。
大きさは半紙がもう少し長くなったような感じです。
紙と言っていますが、あくまでも漆工芸の材料なので、購入先は
漆芸材料店になります。
よく和紙の取り扱い店(例えば小津和紙)ではないのですか?と
聞かれるのですが、絶対に扱っていません。
和紙専門店にすれば全く業界違いのものなので、「野菜は置いて
いないのですか?」と聞かれるに等しいことだと思います。
少々悩ましいのが、この漆芸材料店でも100枚単位での扱いしか
ないことです。
漆芸材料の取り扱いがある東急ハンズでは10枚のパックが販売
されていることがあります。
これも真綿同様、常に在庫があるとは限らないので、確認してから
お出かけ下さい。
私の教室の方ならば、1枚単位でお譲りしています。
では漆芸材料店とはどこか?と言いますと、
<東京都内>
播与漆行
藤井漆工芸株式会社
<都外>
佐藤喜代松商店(京都)
箕輪漆行(福井)
私が購入しているのは、以上の4社です。
ネット販売が充実しているのが箕輪漆行で、他の3社はメールや
FAXで商品名を指定して購入出来ます。
教室で漆芸材料店で取り扱っていますと聞いた場合には、この
ような専門店でお探し下さい。
和紙の専門店 小津和紙
老舗シリーズです。
先日ご紹介した江戸屋さんのすぐ近くに和紙の専門店
「小津和紙」さんがあります。
創業承応2年(1653年)、365年目を迎えます。
他所では手に入りにくい和紙の取り扱いがあり、金繕いの補強用の
和紙もこちらで購入しています。
今回、久しぶりに行ってみたら、ハッピを着たペッパー君が
出迎えてくれました。
館内の案内をしてくれます。
建物脇に和紙の原料になる植物が植えられているのですが、そのうちの
ミツマタが花を咲かせていました。
珍しいものが見られてラッキーでした。
刷毛・ブラシ専門店 江戸屋
漆刷毛を求めて日本橋の江戸屋さんに行ってきました。
江戸屋さんは享保3年(1718年)創業。
建物は大正13年(1924年)建築で登録有形文化財になっています。
木造2階建て、人造石洗い出し仕上げのファサードは刷毛を表し、
看板建築と呼ばれるものです。
関東大震災の後、再建された現在の建物は、今年94歳。
時代の荒波から守られた建物はファサードだけでなく、内部も
魅力があります。
小さな引き出しには約3,000種類にも及ぶ商品が丁寧にしまわれて
います。
ガラス戸を開けて中に入るのは少々勇気がいりますが、外観だけでなく
引き出しが並ぶ様をご覧頂きたいと思います。
江戸屋さんの漆刷毛は、全通しと言われる端から端まで毛が入った
タイプです。
画像のサイズは8分(24mm)。
人間の髪の毛で作られた穂先は、平滑に塗るだけでなく細部までしっかり
塗ることにかけても他の追従を許しません。
(拙著では貝合わせの金箔貼りの際に使用しています。)
なお購入したままでは使えませんので、お求めになりましたら仕立てる
方法を教室でご確認下さい。
【豆知識】看板建築とは
大正期から昭和初期にかけて道路側の全面を看板のように仕上げた店舗建築。
銅板貼りが多い。
世界のブックデザイン2016-2017
友人のアーティスト・大古瀬和美さんから紹介頂いて、見学に
行ってきました。
場所は飯田橋の印刷博物館です。
こちらは印刷大手のトッパン印刷が運営している博物館です。
毎年3月に公開される「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書と
ともに、日本、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ、中国、チェコの
7つのコンクールで入賞した優れた書籍約200点が展示されています。
特に面白いと教えて頂いていたのが、チェコの漆の本です。
新書より2周りくらい大きいサイズで、表紙と裏表紙が金色、小口が
黒と漆塗りを彷彿とさせる外観です。
特徴的なのが背表紙がなく、紙がまとめられているのがそのまま見えて
いるところです。
内容は全く読めないのですが、専門用語はローマ字になっているので
わかります。
(Koroshigaki とあれば殺し掻きですね。)
画像と挿絵もありますので、よりどんな内容が書かれているのか想像が
出来ます。
決して大きくない本なのに漆についての基本知識から錆漆など目的によって
作られるものから、塗り方、蒔絵などの装飾方法までと深い内容に
なっていて驚きました。
これがチェコの方に読まれているのかと思うと、何だか嬉しくなりました。
その他の展示されている本も、さすが各国のコンテストに入賞している
本だけあって、単にデザインが素敵というのに留まらず、こんな工夫も
ありなのかと目からウロコが落ちる感じでした。
嬉しいのはほとんどの本が実際手にとって見られることです。
本として当然の楽しみ方が出来る訳ですね。
各国の個性があるデザインもいいのですが、優れた物を見て目を養うと
いうことがどんなに大切なことなのか改めて認識しました。
展示は3月4日までです。
無料でご覧になれますので、ご興味のある方は是非!
洋食器の金繕い
NHK文化センター ユーカリが丘教室のMさんの作品を
ご紹介致します。
洋食器の金繕いです。
全面に柄の入った洋食器です。
意外に思う方もおられるようなのですが、金繕いとは和食器に
限ったことではなく、このように洋のテイストが強い食器でも
金繕いをして頂いて全く問題がありません。
Mさんの作品の場合、最大幅が2cmくらいの大きな欠けだった
のですが、とても綺麗に仕上がられています。
教室で話題になったのが、このように大きなサイズの仕上げの要領です。
どうしてもきちんと蒔き下漆が塗られているか心配になってしまい、
幾度も筆を運んでしまうという方が多いのです。
ここが本漆と違う新うるしの難しさでもあるのですが、最優先すべきは
手際よく塗るということで、あとは結果がよくなるように工夫すれば
いいのです。
こちらのお皿はもう少し小さい欠けです。
こちらも綺麗に仕上げられています。
ご本人は自信がないようなのですが、これだけ綺麗に金の光沢が
冴えていれば持ち主の方も喜ばれると思います。
頼りになる道具 ルーター
先端が回転する工具・ルーターですが、いろいろな場面で活躍
するので、購入したいという方が増えてきました。
私が使用しているのはキソパワーツールというメーカーのPROXXONという
ミニルーターです。
このタイプは現在廃盤になっていて後継機種はNo.28525です。
比較的小さいサイズながらパワーがあり、どんな場合でも使えるベストセラー
タイプとなっています。
ただ定価が¥17,200(税別)と相応のお値段なので、ご予算やお好みで
別のものでも構わないと思います。
(ネットで探されると¥10,000くらいであるかもしれません)
オススメは先端ビットの径が2.35mmのタイプです。
このサイズはビットのバリエーションが多く、安価な品揃えも豊富です。
あとコンセントタイプの方がパワーがあります。
電池タイプはコードの取り回しの心配がなく扱えるところが
メリットです。
極論を言えばダイソーでも販売しています。
どのように使いたいのかお考えの上、お選び下さい。
アートなマグカップ
昨日に引き続き西登戸教室からご紹介致します。
スペースをご提供頂いているKさんの作品です。
マグカップ自体が作家さん物の器なので、金繕いの仕上げ線が
さらに個性をプラスしたようです。
少々複雑な割れ方だったので金繕いには時間がかかりましたが、
それも魅力を作り出すのに必要な時間だったかもしれません。
蘇ったマグカップは早速お茶会に復帰していました。
金繕いの楽しさを実感して頂けたと思っています。
西登戸教室 その後
西登戸教室に移動してから新規受講して下さったOさんの作品が
完成しましたので、ご紹介致します。
奥の蕎麦猪口3点はひび、前のお皿は割れでした。
Oさんは昨年の10月から始めたばかりですので、5か月でこれだけ
完成したことになります。
私共の教室は最近メディアで取り上げられることが多い接着剤やパテを
使う「簡単金繕い」ではありませんので、完成までにある程度の時間が
かかります。
それでもひびや割れのあまり深刻な状態でないものでしたら、数ヶ月で
完成します。
Oさんは着実に作業を重ねて下さったことで、完成がより早かったと
思われます。
特に蒔き下漆の塗りが薄く綺麗にされているので、金泥の光沢が出ていました。
骨董店・屋満桝さんの廃業で教室の行方が見えなくなった時は本当に困惑
しましたが、新たにスペースをご提供頂いたところで新規受講の方に完成
作品が出来て、感慨深く思っています。