月別アーカイブ: 2017年11月
梱包材で一工夫
薄め液を筆洗い用に別の瓶に分けて頂いていますが、これが
道具入れの中で倒れて金・銀泥の包みに浸透してしまうという
「事故」が起きることがあります。
浸透してしまうと金・銀泥は固まってしまい、使えなくなって
しまいます。
10月から受講を初められた方が、この「事故」を避けるとても
良い工夫をされていました。
ちょうど小分けした瓶がすっぽり入る穴が空いた梱包材を利用して
瓶が倒れないようなケースを作られていたのです。
空いた空間がある道具箱だと、どうしても瓶の転倒が心配になりますが、
これがあれば安心です。
このような工夫をして「事故」を防いで頂けたらと思います。
ところでもし金・銀泥に筆を洗って新うるしを含んだ薄め液が浸透して
しまった場合、洗って復活させる方法があります。
ある程度の損失が出ますが、洗う過程で粒が揃うということもあります。
ただ時間がかかります。
また私の方では説明するに止まりますので、ご自身で作業をして頂く
ことになります。
この点を考えますと、やはり「事故」には合わない方が良いかと思います。
漆塗り椀 塗り直しに出してみた
日常使いしている漆塗りのお椀が、購入後15年して痛みが
気になる状態になりました。
水を入れたまま放置してしまったりしたので、致し方ない
痛みです。
金繕いの教室を受講して下さっている方々から漆塗りの器の塗り直しに
困ったというお話をよく聞いていたので、お試しがてら塗り直しに
出してみました。
困ったという理由は、受け付けてくれるところがないというのと、塗り直しの
代金がとても高いというお悩みに集約されます。
私のお椀の場合、塗り直しに応じてくれる浄法寺塗りの滴生舎とわかって
いたので滴生舎に問い合わせしました。
元々高価なお椀ではないのですが、往復の送料と塗り直し代合計が新しく
購入するより安価に済む代金でした。
結果はこの通り、新品のようです。
浄法寺塗りは仕上げの磨きをしていないので、しっとりとした落ち着いた
質感をしています。
これが使っていると透明感のある艶や輝きが出るので、自分のお椀を
育てたと感じます。
ご存知の方も多いと思いますが、浄法寺は国内最大の漆の生産地でも
あります。
国内で使用されている漆のうち、国産はわずか2%で、その内の約7割が
浄法寺とその周辺地域で採られる「浄法寺漆」です。
そのクオリティーの高さから、日本最高峰と称されます。
今回塗り直しを依頼したのは、浄法寺漆と製作者の岩館隆さんに敬意を
表したところがあります。
15年間育てたお椀がリセットしてしまったのですが、また育てる楽しみが
出来ました。
WEBマガジン 撮影の様子
このホームページ、ブログの他、各教室でご案内しています
イオン化粧品さんのWEBマガジン「SHIMICOM」ですが、
私の記事がTOPページに掲載されるのは今月30日までです。
READというインタビュー記事用の撮影をしているところです。
「手づくり手帖」に続き、今回も女性カメラマンです。
日本文化に興味がおありで、今回の撮影はとても楽しんで下さった
そうです。
その気持ちが表れているのだと思いますが、画像がとにかく綺麗です。
メリハリの効いたシャープな画像は器の立体感が出ていて、秀逸
です。
この画像を見て頂くだけでも意味があります。
こちらはMOVIEという動画撮影の方です。
珍しく和室でも撮影されたのですが、動画が完成して納得しました。
同じような背景では面白味がないので、変化をつけるために撮影
されていたのですね。
動画は作品紹介から金繕いの工程、仕上げの仕方の説明と金繕いの
世界を的確にまとめられています。
とてもわかりやすく、かつ美しい画像なので、こちらも必見です。
いずれもタイトル文字の下の「READ」「MOVIE」という文字を
クリックするとスタートします。
TOPページ公開は、今日を除いてあと2日。
是非この期間のうちにご覧下さい。
和モダンの世界 近代の輸出工芸
先日、たばこと塩の博物館で行われている「和モダンの世界
近代の輸出工芸」という展覧会に行ってきました。
この展覧会は幕末・明治から昭和初期頃に製作された輸出用工芸品としての
寄木細工や芝山細工の他、薩摩焼をはじめとする明治・大正時代の日本陶磁、
駿河・会津・横浜で作られた漆工品、さらに麦わら細工や貝細工問いった観光
物産などを収集した金子コレクションの紹介です。
この分野は工芸として博物館に収蔵されるものと、民芸として扱われるものの
狭間にあり、個人コレクションでしか見られないとのことで原一菜先生から
見ておくと良いとお勧め頂きました。
ただそういう世界があるということを工芸を勉強している者として知っておくべき
というもので、一般論として見学をお勧めするものではありません。
確かに寄木細工で現在は無くなってしまった技法など貴重なものはあるのですが、
輸出用としていささか過剰な感じは拭えません。
もしこのような分野のものにご興味がある方がおられましたら、渋谷から移転した
ばかりの博物館は綺麗ですし、ゆったりと見学出来るので良いかと思います。
ミュージアムショップで塩を購入。
近くの業平橋からスカイツリーを撮影。
と、違うものを堪能してきました。
見えないところに
NHK文化センター 柏教室のUさんの作品をご紹介致します。
急須の把手が折れたものを接着されました。
急須の把手は、熱いお茶が入った状態で荷重がかかりますので、
補強が必須です。
この急須が難しかったのが、把手の表面が透かし彫りになっていて、
中が透けて見えてしまうことです。
そこで見えてもおかしくないように、一工夫して頂きました。
仕上げの線がとても繊細に描かれているので、そのような影の努力は
見えません。
しかし金繕いとは見た目だけではなく、安全に使えるということも
大切な事柄なのです。
こちらはマグカップの縁の欠けの金繕いです。
通常、青の釉薬ですと銀泥での仕上げをお勧めしますが、華やかな
洋食器の青ですので、金泥が合っていると思います。
黄色の絵付けともリンクして違和感がありません。
この二つはいずれも預かりものだそうです。
完成度の高さで、きっと持ち主の方もお喜びになると思います。
船橋よみうり新聞 11/25掲載
読売新聞を購読されている方に毎週土曜日配布されるのが、
「船橋よみうり新聞」です。
こちらの本日11/25配布分に掲載して頂きました。
雑誌やWEBマガジンのような情報量はありませんが、記者の方が金繕いに
ご興味がおありなだけに面白さを十分に伝えてくれる内容になっています。
配布地域が船橋市、習志野市、鎌ケ谷市と限られておりますので、地域外の
方には教室でお目にかけたいと考えております。
※記事の中に教室を開いて2年とありますが、これは自宅工房での教室を
開講した年月を指しています。正確には3年です。
私自身の講師歴は11年になります。
カルチャーセンターの講座の進め方
陶磁器に蒔絵する技術だけカルチャーセンターで教えてもらえないか
とのご質問を頂きました。
残念ながら答えは「出来ません」です。
それはカルチャーセンターのシステムに反するからです。
カルチャーセンターとは従来流儀に入門しなければ教えてもらえなかった
ものを「グループ学習」というスタイルにすることによって、安価で
しがらみもなく学べるという近年生じた習い事の形です。
この安価で済む「グループ学習」とはカリキュラムに則り、一律同じ
ことを学んで頂くという縛りが生じます。
つまりご質問のように個人のご要望には答えられないのです。
同様の理由で自分の直したい器についてのみ教えてもらいたいという
ご希望にもお答え出来ません。
メリットを重視してカルチャーセンターを選ばれるのであれば、カリキュラム
で蒔絵をお教えする機会を待って頂くしかありません。
もしそれが待てないということであれば、私個人の教室に来て頂くのが
良いかと思います。
その他ご理解頂きたいのが、カルチャーセンターの教室は入れ替え制では
ないことです。
私の場合、一クラスの定員を12名としていますが、欠員が生じた数だけ
新規募集を行っています。
ですからクラスには必ず数年継続している方と、新規受講の方が存在する
ことになります。
これは大変良いシステムで、新規の方は先の工程の様子がわかりますし、
継続している方は基本の復習が出来ます。
新規の方に集中して説明してもらいたいので、教室の全ての方が新規受講の
方のみになる機会を待ちたいという方もおられるかもしれませんが、
そのような状態になるのは、クラス自体が新規開講の時だけです。
カルチャーセンターの教室にお申し込みになる前に、このようなものだと
いうことをご理解頂ければ幸いです。
ふっくら仕上げ ありかなしか
このところ続けてご質問があったのが、金繕いの仕上げとは
ふっくら膨らんでいるものではないのか?です。
基本的に仕上げの状態は持ち主のお好みなので、ふっくらした仕上げは
「あり」と言えます。
そのような仕上げのみ教えていらっしゃる先生もおられます。
ただ過去の名品を見て頂くと、ふっくらした仕上げになっているものは
ありません。
器の形通りに欠損を戻し、ひびの仕上げであろうとも膨らんでいる
ことはありません。
ですので私共では茶道具の場合の例外を除いて、ふっくらと仕上げることを
お勧めはしておりません。
金繕いをする対象が日常に使われる器の場合を考えますと、ふっくらした
仕上げには箸やカトラリー類が引っかかる可能性があります。
引っかかると仕上げをしたところを痛める可能性があり、金繕いの寿命を
短くするかもしれません。
また洗浄の際にも痛める可能性が高いですし、汚れが溜まって不衛生になる
可能性も否定出来ません。
最初に書いたように仕上げの状態はお好みです。
もしふっくらした仕上げをご希望でしたら、手順は教室でご説明致します。
幸せ感じる おむすび
度々ご紹介していますが、知人の大倉千枝子さんがやっている
おむすびのお店「おむすび まるさんかく」に久しぶりに行きました。
ランチメニューです。
メインのおむすびとイワシの梅煮他、野菜のおかずがいろいろです。
こだわり抜いた食材で作られた品々は体に優しい味で、本当に
食べると幸せを感じます。
お弁当箱の左端に入っているエノキダケは、店前で天日干しにして作られた
ものです。
天日に干すことによって滋味が深まるそうです。
私が器を好きになったのも大倉さんの影響大なのです。
美味しいお食事と一緒に器も楽しめるお店に、是非お出かけ下さい。
その際には予約をオススメします。