月別アーカイブ: 2017年4月
把手の補強
NHK学園市川オープンスクールのHさんの作品をご紹介致します。
デミタスカップの把手の割れを補強されました。
補強の方法はいくつかありますが、Hさんの作品の場合、把手の
内側に補強材を入れて頂きました。
この方法のメリットは把手の外側に仕上げが出ないので、器の印象を
あまり変化させないで済むことです。
カップをもう一度お使いになりたいという場合、この補強は必須に
なります。
ただ接着しただけだと、耐久性に不安があります。
熱い飲み物を入れるカップですから、もしもの時には火傷の危険性から
逃れられません。
補強は相応の手間と時間がかかりますが、不安なく使えるというのは
重要です。
補強の方法は、割れた箇所、把手の太さ等々で変わってきます。
把手の金繕いをご検討の方は、一度教室でご相談下さい。
Hさんは仕上げを銀泥でなさっておられます。
少し硫化すると釉薬に馴染んだシャンパンゴールドになると思います。
その馴染んだ姿が想像できるくらい、大変完成度の高い仕上げになり
ました。
器の形は戻す
以前修復前の様子をご紹介しました器が完成しました。
下の画像が修復前のお預かりした状態です。
この状態になってしまった経緯は分かりませんが、もしかすると
持ち主の方ご本人が自分なりに直された結果かもしれません。
見比べて頂ければ、やはりきちんと器の形を戻した方が
美しいと感じて頂けると思います。
欠けたところが金色になっていればいいんですとおっしゃる方も
おられますが、そのようなお話があると悲しい気持ちになります。
使用上問題がない箇所でも、金繕いするならば元の形に戻して
あげるのが本分だと思うからです。
いかがでしょうか?
ハマグリ貝の臭い
貝合わせの制作のために、まず身を食した後の貝を水に
浸けて頂きます。
その際、臭いが出るので、気にされる方が多くあります。
(1〜2週間おきに水を交換されることをお勧めしています)
主に間を繋いでいる蝶番の部分が、臭いの発生源です。
ですので、表皮と共に蝶番を完全に除去してしまえば
臭いはなくなります。
少なくとも蝶番の部分を取り除くだけでも臭いは気にならなく
なるので、磨きになれたら先行して、その作業だけでもなさると
良いかと思います。
完成した貝合わせからは、臭いは出ません。
どうぞご心配なさらないで下さい。
溝を再現
NHK学園市川オープンスクールの生徒さんの作品を
ご紹介致します。
萩焼の大鉢です。
欠けの修復をされました。
特に裏面は轆轤目の溝まで再現されました。
その結果、とても器に馴染んでいると思います。
溝まで再現するのは手間がかかるのですが、そこを惜しまず作業
すると、より完成度が上がります。
洋食器でもレリーフが入っている器は、珍しくありません。
手がける方には、ぜひお勧めしたいと考えています。
この大鉢はご友人のものなのだそうです。
きっと喜ばれることでしょう。
今月から始められる講座 2017.4月期
4月になり新しく受講してくださる方々をお迎えしています。
これからでも受講の申し込みが可能なクラスをご紹介致します。
春から金繕いを始めてみませんか?
◯NHK文化センター
柏教室
第3日曜日 午前/午後:募集を行っております
ユーカリが丘教室
第3月曜日 13:00〜15:00:募集を行っております
※午前のクラスが満席になった為、急遽午後クラスの募集を行います
◯よみうりカルチャーセンター大宮教室
第4月曜日 13:00〜/15:30〜:募集を行っております
着彩する3
NHK文化センター ユーカリが丘教室のSさんの作品を
ご紹介致します。
縁の青海波様の文様を描き起こされています。
染付けの柄を描き起こす場合、セオリーとしてお勧めしているのは
銀泥を使うことです。
このお皿がご友人からの預かりものだったため、銀泥の硫化が丁度良い
ところで硫化止めをすることが難しかったことから、新うるしの
青を使って代用することを思いつかれました。
まず太い線を描かれているのですが、これに細い線も足していけば、
狙い通りになるのではないかと思います。
こちらの網目文様も描き起こすか悩まれたのですが、とりあえず
今後の課題となりました。
金繕いの完成は器の魅力を損なわないことにあると思いますので、
どこまで着彩すべきか悩まれる所だと思います。
金繕いの箇所が大きい場合は大変効果的な方法ですが、多用すると
チープになる可能性もあります。
引き際を考えてなさると良いのではないでしょうか。
貝合わせ ディスプレイ
先月になってしまいましたが、3月3日のひな祭りに制作して
頂いた貝合わせを使ってディスプレイしましたと画像をたくさん
拝見致しました。
そのうちセブンカルチャークラブ成田教室のIさんが、わざわざ
飾っておられた様子をそのまま教室にお持ち下さったので、撮影
させて頂きました。
貝の中に収まる豆雛を飾る方が多いのですが、Iさんはお手持ちの
お人形を含めてディスプレイされました。
貝合わせの金箔が映えて、とても効果的なディスプレイになっている
と思います。
貝の中に入る豆雛をお持ちでない方には、とても参考になる飾り方
ではないでしょうか?
飾り物には興味がないとおっしゃる方もおられますが、完成品は
食器としても使えます。
基本的に金箔の扱いを学ぶカリキュラムとなっていますので、是非
チャレンジして頂きたいと考えています。
並河靖之 七宝展
東京都庭園美術館で行われている「並河靖之 七宝展」に行って
きました。
並河靖之は明治時代の七宝家です。
近年、明治工芸への関心が高まり、NHKの番組などで作品をご覧になって
いるかもしれません。
今回の展覧会は没後90年を記念し、初期から晩年までの作品を集めた
初めての回顧展となっています。
黒い釉薬に映える緻密な花鳥風月が代表的なスタイルですが、晩年の
風景画に題材を求めた作品は悟りの境地すら感じさせます。
雅な作品が旧朝香宮邸である庭園美術館で見てこそ、その価値が
発揮されるようです。
会期が今週末の9日日曜日までなのですが、ちょうど入り口前の桜が
満開になっているかと思いますので、花見を兼ねてお出かけになるのも
良いかと思います。
超絶技巧の作品は、画像の印象と違い小品が多いです。
細かいところまで、じっくりご覧になりたい方は、スコープの無料
貸出があるので、ご利用下さい。
市川教室の特別講座終了しました
3月31日にNHK学園市川オープンスクールの特別講座が
終了しました。
多数のご参加を頂き、ありがとうございました。
皆様の熱気のあまりエアコンを切り、扉を開けるようでした。
金繕いの歴史と修復工程の説明を参考作品をご覧頂きながら
説明致しました。
その後行ったのが「桜の花びら」の蒔絵です。
ご参加の皆様の作品を撮影させて頂いているのですが、都合上
一部の方のみご紹介させて頂きます。
「桜の花びら」の蒔絵制作は何度も行っているのですが、毎回
発見があります。
今回は皆様、桜の花びら一枚一枚の完成度が高く、少ない枚数で
決める方が多かったのが印象的でした。
金繕い入門の本講座をご希望頂いた方もおられますが、市川教室は
2クラスあるにも関わらず両クラスとも満席で、キャンセル待ちを
して頂いています。
受講までお待ち頂けますよう、よろしくお願い致します。