月別アーカイブ: 2017年2月

「金繕いの本」が出来るまで6

前回はプロセス写真を選んだ話を書きました。
今回は本の巻頭にある完成写真(グラビアという)を
撮影する場所選びについて書きたいと思います。

グラビアは、本のイメージを決める大切なページです。
背景を選んでスタジオで撮影する方法もありますが、自然光が
入る空間での撮影を選択しました。

大きな壁となったのが、その場所選びです。
作品が和洋新旧と様々あり、それらを全て撮影可能な場所
という条件だからです。

検討が行き詰まった時、原一菜先生から提案があったのが、
自由学園明日館です。
原先生がこちらで金繕いの講座を持たれているというご縁が
あります。

この提案に洋館好きの私が賛同したのは、言うまでもありません。
近代建築3大巨匠の一人、フランク・ロイド・ライト設計の建物で
撮影ができるなんて!
早速、原先生とロケハンに出かけました。
以下の画像は、実際のグラビアには採用されなかった案です。
仮の器を置いて撮影しています。

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この時の検討が、カメラマンさんの撮影日に効果を発揮します。
その話は次回に。


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追悼 佐藤さとる先生

児童文学作家の佐藤さとる先生の訃報に接しました。
コロボックルシリーズをご存知の方は、多いと思います。
子供の頃、大好きなお話でした。

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コロボックルの世界をさらに魅力的にしていたのが、村上勉さんの
挿絵です。
合わせて夢中になりました。

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数年前、知人を通じて、ある講演会をなさった先生から頂戴した
サインです。
文字からも先生の温かいお人柄が察せられます。

実は先生とは、ちょっとしたご縁があります。
以前住んでいた家の裏に先生のご自宅があったのです。
もっともそれがわかったのが、引っ越してからなのですが。

ご自宅の近くには、コロボックルの国があるような窪地があります。
実際のモデルは横須賀市とわかっていますが、共通する印象のある
土地に住まわれた気がしてなりません。

もう一度、シリーズ全編を読み直してみようかと思っています。


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貝合わせの絵付け

貝合わせの絵付けには、何を使っているのかというご質問を受け
ました。

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私は白狐印の上羽絵惣の角顔彩24色セットを使っています。
ただし少々色を入れ替えて、オリジナルセットになっています。
角顔彩は他に吉祥などのメーカーもありますが、大体¥3,000くらい
です。

画像の右に写っているのは、重皿という重箱のように重ねられる
絵皿で、溶いた絵の具をそのままにして持ち運びが出来るところが
便利です。

あとは筆洗と筆、雑巾くらいを用意すれば制作出来ます。
金箔の場合には絵付け前の膠下地が必要なので、あらかじめ
ご相談下さい。


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着彩する

NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介致します。
かなり珍しく、難しい金繕いです。

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一見、どこが損傷していたのか、わからないかと思いますが、画像の上方と
11時くらいのあたりが、2破片なくなっていた器なのです。
金泥が蒔かれているので、見分けがつくと思います。

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拡大すると、お分かりになるでしょうか?

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裏面から見ると、大きく損なっているのがハッキリします。

まず大きく損なっていた部分を別素材で作り込み、金泥で仕上げられて
います。
さらに染付の柄が入った部分を銀泥に変えます。
そして元々の柄を新うるしで着彩されました。
この作業によって大きく損なっている印象が拭えます。

言葉で言うと簡単ですが、輪花になっている器の形を戻すのは並大抵の
ことではありません。
実際に一番時間がかかったのが、この作業でした。
仕上げに入ってからも問題があればやり直しをされ、より完璧な
状態にされてから、着彩に挑まれたのです。

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着彩の作業が出来たのは、欠損がない同柄のお皿をお持ちだったことも
重要な要素です。
そして何よりHさんがガラス絵の作家さんであることが一番の理由です。
特に着彩の技術をご説明していないにも関わらず、この完成度なの
ですから。

Hさんは「頑張って続ければ、必ず完成します。」と教室の皆さんに
お話されていましたが、全くその通りだと思いました。
根気よく器の欠損を埋められ仕上げに至った経緯は、尊敬の一言に
尽きます。
ぜひ参考になさって下さい。


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「金繕いの本」が出来るまで5

前回はプロセスページの撮影を行ったと書きました。
続いては、画像の選定です。

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画像でご覧頂けるように、同じようなものが並んでいます。
これは微妙に明るさなどを変えて撮影しているからです。

この中から絵コンテで計画したのに適切なものを選定していきます。

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本全体で300枚ほど画像があったと聞いておりますので、単純に1カット
3枚撮影したと計算すると900枚の画像を撮影したことになります。
実際は採用されなかったものもありますから、何倍にもなると思われます。

絵コンテに画像ナンバーを落とし込んでいくと、まるで複雑なジグゾー
パズルが完成していくように、きっちり当てはまっていくのです。

これは撮影の度にY編集長が整理した画像を送って下さって、撮影漏れが
ないか確認していますから当然と言えばそうなのかもしれません。
とはいえ、この作業で確実に本が完成に近づいていくのを実感しました。


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使える貝使えない貝

金箔を扱えるように貝合わせをカリキュラムに組み込んで
います。
このためのハマグリ貝は、それぞれご用意頂いていますが、
このところ「この貝は使えますか?」というご質問が続き
ました。

お勧めは、国産のハマグリ貝です。
鹿島灘から九十九里では「チョウセンハマグリ」、
桑名では「ハマグリ」という種類が採れます。

避けたいのが、中国産です。

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地色が黄色なのが、特徴的です。
問題は磨きに強くないこと、柄が縞柄しかないことです。
リーズナブルではありますが、お勧め出来ません。

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購入で間違えやすいのが「ホンビノス貝」です。
商品偽装問題発覚後、ホンビノス貝と表示されているはずですが、
かつては「白ハマグリ」とか「大ハマグリ」などと称して販売
されていました。
地色が白く、深い溝が年輪のように入っていたら、ホンビノス貝
です。
価格も安いと思います。
見分けがつかなかったとお求めになってしまう方が多いので、
ご注意下さい。

日本人は太古からハマグリ貝の形に意味を見出してきました。
貼りやすさ以外に、そういう点でもハマグリ貝をお使い頂きたいので、
同じ2枚貝でもアサリはご遠慮頂いています。

皿貝や、ヒオウギ貝は、ハマグリ貝の次のステップとしてお考え
下さい。


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梅の花

梅干しの取り寄せをしているところから、一緒に梅の枝が
送られてきました。

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花瓶に挿しておいたら、昨日花が咲き始めました。
丸く膨らんだ蕾がポンと開くと、とても愛らしいです。

今日も雪が散らつきましたが、梅の花を見ると、春の訪れを
感じます。
この寒さも、もう少しの辛抱ですね。


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第24回 漆の美展

日本漆工協会主催の「漆の美展」に行ってきました。

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協会会員による作品発表の場で、新たな“漆”の可能性を探る機会
でもあります。
昨年は拝見出来ませんでしたので一昨年と比較すると、色漆と南洋貝
の螺鈿が増えたように感じました。
また木胎ばかりでなく、布やレースを胎とした作品もありました。

他の伝統工芸と同じように漆工芸も厳しい環境を余儀なくされて
います。
新しい道を考えると、漆という材料の特性を生かして、新規性
も求めなければならないと思います。

個人的にはアーティスティックな作品より、使うものとしての漆器
に興味があります。
「用の美」というのでしょうか。

会期は今月26日(日)まで。
明治神宮文化館宝物物展示室です。
明治神宮の大木の中を歩いて散歩がてら行かれるのも良いかと
思います。


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まばゆい

ハマグリ貝に金箔を貼りました。

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並んでいると、なかなか壮観です。
これがどんな形になるのか、いずれお話ししたいと思います。


カテゴリー: 貝合わせ |

スチールウールたわし お勧め品

ハマグリ貝磨きの仕上げの光沢出しにお勧めしているのが、
アメリカ製の「Brillo(ブリロ)」というものです。

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※含んでいる研磨剤のフレーバーによって色が違います

お手元にあるスチールウールたわしでも構いませんとお話しして
いたのですが、明らかに貝の光沢が違うというお声を頂き、
これからは積極的にお話ししていこうと思います。

光沢がより出る秘密は、スチールウールの肌理細かさにあるようです。
磨き方は教室で実演させて頂きます。

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道具立としては、果物の販売に使われているトレーを利用するのが
便利です。
少し水を入れて洗剤を泡立てればテーブルの上でも作業が可能ですし、
そのまま乾燥させればスチールウールが錆びません。
最終的にはトレーごと処分します。

少々難があるのが、Brilloが入手しづらいことです。
もちろんネットでお求めになれますが、送料が必要だと割高になり
ますし、1箱10個も必要にはならないと思います。

私は「アメリカンファーマシー」というアメリカ製品を扱うドラッグ
ストアで購入しています。
お使いになりたい方は、ご相談下さい。


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