月別アーカイブ: 2017年1月
急須の蓋は要注意!
急須の蓋は使用頻度が高いので、割る、つまみが取れるといった
破損が多いものです。
さらに熱がかかる、ドーム型をしているという特徴から修復する
際には注意しなければならない点が数多くあります。
ところが形の小ささから簡単に出来るように見えてしまうのが
曲者です。
ティーポットの蓋も含めると様々な形があり、手順も色々あります。
ご自身の判断で作業を進めてしまう前に、是非一度教室で作業内容を
ご確認下さい。
1月のワークショップ
昨年11月にお知らせしていますが、今月28日にヨガ・ピラティスの
スタジオ サンスカーラさんでワークショップを行います。
時間は14:00〜16:00です。
金繕いの歴史、修復工程をご説明した後、金繕いの仕上げになります
蒔絵体験をして頂くものです。
お手持ちの破損した器を持参頂ければ、修復の可否鑑定を致します。
千葉周辺ではカルチャーセンターの空席がなかなか出ず、お待ち頂いて
いる方がたくさんおられます。
ワークショップの内容は受講前のプレセミナーにもなりますので、
ご興味のある方のご参加をお待ちしております。
説明のない道具について
このところ説明していない道具をご自身の判断で使われた結果、
挽回不可能な状態になっている方が続いています。
例えば金たわし。
これを陶磁器の削りに使って、釉薬をキズだらけにしてしまったケース。
またハマグリ貝の磨きに紙ヤスリを使って、表面の綺麗な光沢が出る層を
磨き破ってしまったケースなどです。
大抵のことは何とかする方法を検討出来るのですが、上記のケースは
いずれも挽回不可能です。
このような状態になる可能性のある道具は、説明から省いています。
講座で教えるということは、受講して下さっている方々に「最短にして、
最良の方法」をご説明することだと思っています。
ですので10人のうち2人は成功するかもしれないが、8人は失敗すると
いうような作業でもリスクと考えてお話ししません。
お教えしないということは、何らかリスクがあるのだとお考えください。
拙著「金繕いの本」なり、教室で板書したものなり、レジメなりを
作業を始める前にご確認下さい。
どうぞ自ら辛い道を選ばれませんよう。
硯を研ぐ
先日の世田谷ボロ市で入手した硯を研ぎました。
というのも墨をする丘の部分に小さな穴があいているのです。
それも丁度墨を磨りやすいところに。
人為的に破損させたのではなく自然な状態での欠損ですが、
もしかしたらそれが原因で手放されてしまったのかもしれません。
全く穴がなくなるまで研いでしまうと、相当低くしなければならなく
なるので、とりあえず大きな引っ掛かりがないところまで研ぎました。
使用したのは、上の画像に写っている硯用の砥石などです。
画像では判りにくいと思いますが、端渓は水に浸すと紫の渋い色が
現れます。
これを榊莫山先生は「魔術のよう」と表現されていますが、確かに
妖しい雰囲気を漂わせています。
硯は使っていると凸凹が出来ます。
それを平らに直すために研ぐのを繰り返していれば、問題の穴も
いつかはなくなるはずです。
そのくらいのんびり付き合うつもりです。
「金繕いの本」が出来るまで4
今まで企画書が通り、器を選び、絵コンテを作成したところまで
書いてきました。
いよいよそれぞれの器の金繕いの工程の撮影に入ります。
撮影は自宅リビングで行いました。
工房の教室にお出で頂いている方にはお馴染みのスペースです。
返す返すも残念なのが、撮影風景をカメラに収めなかったことです。
それだけ懸命で、余裕がなかった証でもありますが。
本を購入して下さった方々から、プロセスページがわかりやすいと
好評頂いていますが、それにはこの撮影の時点の工夫が生きています。
本には採用されなかった画像です。
下に敷いた白バックの巻きが後ろに写り込んでいます。
バックを白に統一することで、器と作業している手がはっきり
写るようにしたこと、道具・小物等にも気を配り余計な色柄を
入れなかったことなどが大きなポイントです。
この成果が出たのは、ひとえにプロセスの撮影に慣れているY編集長が
カメラマンだったからだと言えます。
こちらの「このように撮影して欲しい」という感じも、このように
撮影すれば効果的というプロデュースも含めて撮影して下さるの
ですから。
しかし撮影期間中は本業の講師の仕事をこなしつつ、合間合間に次の撮影
までに金繕いを進めておくという、体力的にかなり厳しい状況でした。