月別アーカイブ: 2016年7月
呼び継ぎ もう少し
以前にご紹介しました、よみうりカルチャーセンター大宮教室
のMさんの呼び継ぎの作品です。
呼び継ぎは元々の器の形状に合う破片を見つけ、なおかつ意匠が
よいというのが難しいのですが、さらに制作していくとズレの
解消に時間がかかります。
それでMさんの作品も時間がかかっていました。
上の画像の状況は、もう少し埋めている部分をならしたら仕上げが
出来るというところです。
もう少しで完成されるので、撮影させて頂きました。
完成をお楽しみに!
自由学園明日館三たび
以前のブログでもご紹介しました「自由学園明日館」に
行ってきました。
実は3回目の訪問になります。
前回のご紹介は夜桜見学の会で、手前に写っている桜が咲いていた
のが、今回は緑になったところでの訪問となりました。
なぜ明日館訪問なのかは、いずれご報告致します。
明日館の設計者は、今、世界遺産で話題のル•コルビジェと「近代建築
三大巨匠」と並び称されるF.L.ライトです。
日本に現存するのは、個人住宅が2軒と、帝国ホテルの玄関部分が
名古屋の明治村に保存されているだけです。
ル•コルビジェとF.L.ライトはほぼ同世代の人なので、調べてみました
が、面識はないようです。
これはル•コルビジェがフランス•パリ、F.L.ライトがアメリカを中心に
活動していたことが理由だと思われます。
明日館は単に見学だけではなく、“動態保存”といい、様々な形で
施設利用がされながら保存されています。
その利用度の高さを見ますと、やはり建物の魅力に理由があるように
思います。
決して大きくはないのですが、場所場所に変化があり、飽きさせません。
池袋駅から徒歩10分程です。
中でお茶も飲めますので、じっくり雰囲気を楽しまれるのをオススメ
致します。
粉引き 要注意
粉引きと言われる白化粧土の陶器がお好きな方は、多いと
思います。
金繕いのご希望も多いのですが、下準備をしっかりしないと
大変なものでもあります。
「目止め」と言っている下準備をしないでひび止めをすると
上の画像のようにシミが出来ます。
そしてこれは除去することが出来ないのです。
目止めは手間のかかる下準備なので、大変に思う方が多いとは
思いますが、このように修正の効かないアクシデントが生じて
しまうのを防いでくれます。
どうぞ効果があるところまで、頑張ってなさって下さい。
じっくり完成
NHK文化センター ユーカリが丘教室のSさんの作品を
ご紹介致します。
金泥の仕上げが美しい作品です。
実は骨董屋さんでバラバラに割れていたのを、譲り受けた品なのだ
そうです。
絵付けの柄のダイナミックさに反して器の形は繊細なので、割れの
接着後の欠損の埋めに苦労されました。
完成まで2年を要したのも、致し方ないところです。
仕上げの線を太めの筆を使われたのが大変効果的で、これが絵付けの
雰囲気ととても合っています。
仕上げの線の太さを気にする方が多いと思いますが、Sさんの思い切って
太い筆で一気に描き上げるというのは、参考になさるとよいと
思います。
Sさんは「不器用な私でも出来ました。」とおっしゃっておられましたが、
これは不器用だから金繕いは無理ではないかと思っている方に
やってみようという勇気を与えてくれるのではないかと思います。
Sさんが素晴らしかったのは、根気よくコツコツと作業を進められた
努力なのです。
しかも美しい完成まで妥協しないという、そういう志がよい作品を
生むのだという好例として見て頂きたいと思います。
仕上げ始める
NHK文化センター柏教室のMさんの作品をご紹介致します。
Mさんは最近仕上げを始めたばかりです。
こちらは釉薬の肌が荒い小鉢です。
面積も広く、仕上げデビューしたばかりの方には少々難しかったと
思いますが、銀泥を蒔くタイミングが良かったので、大変きれいな
光沢が出ています。
釉薬の色と趣のある形が美しい片口です。
金泥の仕上げがとても合っていて、美しい仕上がりとなりました。
Mさんは欠損を埋める下地作りが大変お上手なのですが、仕上げに
おいてもご自身で創意工夫されたお話を聞き、大変感心致しました。
というのは大抵の方は仕上げの要領などじっくりお聞きになってから、
仕上げに挑まれるからです。
Mさんからご質問があったのが、仕上げてきたものが正しいのかと
いうことです。
仕上げというのは最後の化粧として行うもので、修復という意味では
器の形が戻ったところで完結しています。
ですので仕上げは、持ち主であるご自身のお好みで構わないのです。
強いて言えば器とのマッチングが問われるくらいかと思います。
とはいえまずは完成して再び使えるということで、それを喜んで
頂ければよろしいかと考えています。
川越散策
少し前の事なのですが、小江戸•川越に初めて行ってきました。
残念。
耐震化工事は今年10月くらいまでの予定なので、川越に
お出かけの予定の方は事前に確認されるのがよいかと思います。
蔵造りの町並みは、観光地化されつつも、保存状態のよい町家も
あり、見応えがあります。
川越の老舗菓子店「亀屋」5代目嘉七の隠居所として大正14年(1925)
に建てられた和洋折衷の住宅です。
皇族方をお迎えする用途もあったので、当時にしては設備も良いですし、
ステンドグラスの意匠も凝っています。
まだ今年1月に公開が始まったばかりなので、2階が非公開となって
います。
寝室のインテリアが素晴らしいそうなので、耐震問題が解決したら、
是非公開して頂きたいと思います。
常々洋館内部に管理室があるのは残念だと思っていたのですが、こちらは
管理棟が別棟になっています。
住宅なのであまりスペースがなかったのかもしれませんが、小規模住宅の
公開スタイルとして理想だと思います。
場所がメインストリートから離れていますが、建物好きの方ならば
足をのばしてみてはいかがでしょうか。
器との相性
仕上げの感じが器の雰囲気に相性がよい作品をご紹介致します。
まずはNHK文化センター ユーカリが丘教室のMさん。
こちらの器は磁器ではありますが、ゆらぎがあり、絵付けもダイナミックに
入っています。
そこに思い切り良く金泥の仕上げが入っています。
これが器の雰囲気と絵付けととても相性がよいと思います。
もう1点。
港北カルチャーセンターの方の作品です。
こちらは大鉢で器自体の大きさがあること、緻密に入った蛸唐草の
柄があることから、やはりしっかりとした金泥の仕上げの線が
とてもよく映えています。
度々ブログで書いていますが、仕上げの線は細さよりも器との
相性が優先されると考えています。
どんな感じがよいか、ご自身のセンスでお決め下さい。
洋食器の漆繕い
NHK文化センター ユーカリが丘教室Mさんの作品を
ご紹介いたします。
めずらしい洋食器の漆繕いです。
お皿全景で見ると、どこを修復しているかわからないと思います。
修復部の拡大です。
元々は窯キズで、縁に凹みがありました。
持ち主の意向で、出来るだけ釉薬に似た感じで仕上げて欲しい
とのことでしたので、今回のような漆繕いという選択になりました。
漆繕いとは、金繕いの原点です。
現在のように金属でコーティングする前段階として、漆の色そのもので
繕いは終了していました。
新うるしは通常の修復で使っている本透明、弁柄の他、色々な色が
品揃えされています。
今回はその色のうち、茶系統の色がそのまま合いましたので、それを
使用しています。
修復箇所をぼんやりぼかして馴染ませたのはMさんのアイディアで、
より目立たせない効果があると思います。
漆繕いは単純に色を合わせればよいと思われがちですが、意外に
難しい点があります。
金•銀の素材色の方が合わせやすいのです。
漆繕いをお考えの方は、まずご相談下さい。