日別アーカイブ: 2016年3月2日
三春の貝香合
少し前のブログで珍しいご依頼を受けましたと書きました。
それをご依頼主のお許しを頂いたので、お目にかけたいと
思います。
ご依頼は、茶人であるご依頼主様が茶事のおみやげに頂いた
ハマグリ貝に「桜•梅•桃」を描いて欲しいというものでした。
返礼の茶事に貝香合として仕立てるためです。
お引き受けしたのは、このように特別に誂えるというお考えが
素晴らしいと思ったことと、返礼の茶事を受けられるお客様が
東日本大震災で被害を受けられた福島の方だということです。
なぜ「桜•梅•桃」の3種の花を要望されたかというと、福島は
春にこの三つが同時に咲くからなのです。
それぞれの花の格に応じて男貝•女貝に配置しました。
特に桜は福島の銘木•滝桜です。
書き込んだ書は、
「見わたせば 柳桜をこきまぜて 宮こぞ春の 錦なりける」
という古今和歌集の素性法師の歌です。
春爛漫らしい歌として、本歌取りしました。
ご依頼主様が喜んで下さったのは前のブログに書いた通りですが、
お客様がすぐご自分の差し上げた貝だと気がつき、言葉を詰まら
せるほど喜ばれたとお聞きしました。
ご依頼主様の一期一会を大切にされるお茶事のお手伝いが出来た
こと、東日本大震災に遭われたお客様のお気持ちを少しでも
お慰め出来たのではないかと思うと、本当に満たされた気持ちに
なりました。
このご縁に感謝です。
カテゴリー: 貝合わせ