日別アーカイブ: 2016年2月9日
足らぬがよし
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品を
ご紹介致します。
先日ご紹介しました蒔絵予定の湯のみを含めて、仕上げて
きて下さいました。
なかなか3本の枝が上手く入る角度がないのが残念ですが、
元からあったヒビの線に、欠けを含めた枝を入れて3本
描かれました。
1本を銀泥で、一番左側の枝は欠けを含めて大きくなびかせた
ところが秀逸です。
柳の枝は、先端の葉で表情が決まります。
Hさんご自身が柳は得意とおっしゃっているように、柳の絵
としても美しい蒔絵が完成致しました。
ご本人としては複数ある欠け全てから柳の枝を出そうと考えた
そうなのですが、ヒビがあったところを含めて3本がよい
選択だったと思います。
何事も「足らぬがよし」としておくのが、日本の美ではないでしょうか?
こちらは以前にもチャレンジして下さった金•銀泥合わせ技の
仕上げです。
銀が硫化してくると。染付け柄が繋がったように見え、直しの
存在感がやわらぎます。
すでに経験が深いテクニックなだけに、手際も鮮やかです。
こちらは右上から左下に向けて割れを接着。
不定形の曲線は、ヒビでした。
茶色の釉薬に差し掛かっているところは銀泥にされ、硫化後
には目立たなくなるという計算がされた仕上げです。
まるで元からこのような器だったかのように見える作品に、教室の
方々から賞賛の声が上がりました。
もっと言えば金•銀の線が入ったことで、より力強さのある器に
生まれ変わったようです。
Hさんは、破片の足りない複雑な接着を根気よくなさっています。
「続けていれば必ず完成する。」とお話されていましたが、まさに
これが名言で、今日ご紹介した作品はH さんのセンスだけでなく、
根気の賜物なのです。
カテゴリー: 生徒さんの作品