月別アーカイブ: 2016年2月
NOA 錆漆は硬化する
以前のブログで播与漆工さんの「すぐ塗れ〜る」は、佐藤喜代松
商店さんの「MR」という漆ですと書きました。
MRは加熱しない精製方法で酵素を失わせないという本漆です。
MRには他に3シリーズあり、その中の「NOA」というシリーズに
ついて書きたいと思います。
NOAは皮膚科の医師との研究で、たんぱく質を添加することにより
「かぶれにくい漆」を実現しました。
その他に低温低湿でも硬化するという特徴があります。
冬には大変便利な性質なので、私は重宝して使っています。
しかしこのNOAについてネット上で「錆漆は硬化しない」と流布
しているようなので、実験してみました。
作ったのは2種類の錆漆です。
①(砥の粉10+水4)+NOA生漆4 (重量比)
②(砥の粉+水:何とかまとまる程度)+NOA生漆(ペースト状)
②は本漆の金繕いで説明されていることがある感覚で作るパターン
ですが、①はきちんと計量しています。
作製方法は、①②共以下の手順です。
a.砥の粉と水を先によく練る
b.生漆を少量ずつ、3回程度に分けて混ぜる
c.1mmまでの厚みでつける
結論は「どちらも硬化した」です。
今回自分で実験してみて、ネットの情報が正確ではない場合が
あるということを実感しました。
NOAは、佐藤喜代松商店さんが研究の末、販売されているものです。
それはきちんとデータを公開していることでもお分かり頂けると
思います。
もしネットの硬化しないという情報で使用を躊躇されている方が
おられましたら、安心してお使い頂けるものですとお勧めしたいと
考えています。
注)NOAは「かぶれにくい漆」ではありますが、本漆としての
使用方法を守らなければ、かぶれます。お間違いのないよう。
乾燥トクサの購入先 見つけました
トクサの入手先をご検討の方が多いと思います。
乾燥した状態のトクサを購入出来るところがないから
なのですが、このほど購入先の情報が入りましたので、
ご紹介致します。
以前ブログで未確認ですがとご紹介しました「箕輪漆工」の
トクサは、後日購入して確認したところ、南洋種の大トクサと
わかりました。
大トクサは使えないことはないのですが、トクサに比べると
削りがはかどりません。
しかし今回情報が入ったトクサは、国産種でお勧めできるもの
です。
販売先は「並川平兵衛商店」です。
こちらは刀剣手入れ材料販売のお店です。
10gで600円。だいたい25節くらい入っていました。
これに消費税と宅急便代で、合計 1,728円。
ですのでまとめ買いするか、何人かでシェアするのがよいかと
思います。
ところでNHK文化センター横浜教室の方々から、トクサの苗の
購入先についてご相談を受けておりました。
横浜市内の花屋さんで、安心してお求め頂けるお店がありました
ので、3月の教室でご紹介したいと思います。
少々お待ち下さい。
今回ご紹介しました並川平兵衛商店では、角粉も扱っていますが、
こちらは鹿の角から作られたものではなく、貝殻を主成分とした
軽炭酸カルシュウムと重炭酸カルシュウムを混合したものです。
鹿の角から作られた角粉より使用感が若干落ちます。
お求めの際はその点を踏まえてご購入下さい。
コリンスキーの筆
藤那海工房 金曜日クラスのIさんが、面白い筆を持って
来て下さいました。
極めて細い筆なのですが、ネイルアートのものなのだそうです。
画像の右端に写っていますが、これが「コリンスキー」の毛
なのです。
コリンスキーとは、イタチの仲間のテンの最上級の毛につけられる
名前です。
書家•榊 莫山先生の著書「文房四宝 筆の話」で、
『イタチの仲間の毛は、穂先が鋭い筆になる。シャープな線が
ひけるのである。』
と書かれています。
コリンスキーと言えば、書道はもちろん、金繕いでもお世話になって
いる筆です。
それがネイルアートでも細い線を描くのは、コリンスキーだというのが
ちょっとした驚きでした。
そういえばプラモデル材料店でも最上級といってコリンスキーの筆が
販売されていました。
ナイロンなどの人工毛も、いろいろ工夫されて素晴らしい物が出来て
いますが、やはり最後は獣毛なのですね。
これは以前書いた、蒔絵筆がクマネズミの毛であることに通じると
思いました。
最初に仕上がるのは
NHK文化センター 千葉教室木曜日クラスの方の作品を
ご紹介致します。
千葉教室の木曜日クラスは昨年10月に開講したばかりのクラスです。
先月もお一方ご紹介させて頂きましたが、最初に仕上げが出来るのが
このようなヒビのみのものです。
欠けと一緒になく、深刻な状態でなければ、早い段階で仕上げが
行えます。
上の画像の作品は、ざっくりした陶器に迷いのないしっかりした線を
描かれています。
器とのマッチングもとてもよいと思います。
仕上げが出来ると、モチベーションも上がります。
臆することなく、チャレンジして頂ければと考えています。
置き目+桜の花びら
よみうりカルチャーセンター大宮教室のEさんの作品を
ご紹介致します。
カリキュラムの後半に盛り込んでいる「置き目+桜の花びら」の
完成品です。
まず「置き目」の技法で流水紋を入れられています。
「置き目」とは、図柄の転写方法です。
2種類の流水紋からお好みの柄を選んで頂き、用意されたお皿に
転写されています。
その後、桜の花びらを直描きで蒔絵して頂きました。
Eさんの作品は、1枚のお皿として大変完成度が高くなっています。
流水紋の入れ方、桜の花びらの散らし方、それぞれ大変美しく
配置されています。
特に勢いある筆致で描かれた桜の花びらが、とてもよいです。
昨年10月から受講された方は、5〜6月でこのカリキュラムを予定
しております。
単なる技法の練習でなく、1枚の作品として見応えのある様子を
ぜひ参考になさって下さい。
ピカソ展見てきました
28日(日)まで日本橋•高島屋で行われている「ピカソ展」を
見に行ってきました。
ピカソといえば、様々な表現方法を試みた20世紀最大の芸術家
であることは、どなたもご存知のことと思います。
近年の展覧会というと、メインで押し出している作品以外は
数合わせというような展覧会が多い中、このピカソ展は
とてもクオリティが高いと思います。
それも油彩、版画、ブロンズ像、陶器等、様々な展示で飽きさせ
ません。
版画の原板までが作品となってしまうのは、ピカソならではと
思いました。
以前からピカソの陶器作品が好きだったのですが、この展覧会でも
優品が展示されています。
デパートの中の展覧会なので、さほど作品数は多くありません。
日本橋にお出かけのついでに、ご覧になって下さい。
把手折れシリーズ第4弾
NHK文化センター 柏教室のMさんの作品をご紹介
致します。
把手折れシリーズ第4弾です。
ざっくりした表情がかわいらしいピッチャーです。
画面左側に写っているのが、把手の残りです。
あえて把手を補強せず、根元から切り落とすこともせず、割れた
ところで残しました。
注ぐ場合には残った部分に手をかけて行うことも可能という
状態です。
断面になったところは、適宜危なくないようにならして仕上げて
あります。
元からこういう形の器だったかのように、完成しました。
Mさんはピッチャーとしてではなく、何か別の形での使用を
お考えのようです。
用途は変わったとしても、再度実用出来るようになるのが、金繕い
です。
お使い頂けるようになって、器も喜んでいると思います。
あとは欠けの仕上げ?
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介
致します。
潔く2つに割れたお茶碗の仕上げです。
何回かに分けて仕上げた計画が上手くいっているのもありますが、
長い線を仕上げるのは難しいものです。
そこにHさんの上達が見て取れます。
こちらの2点もヒビの線が繊細に描けています。
あとは欠けを刷毛目なく仕上げられるようになったら、完璧
です。
欠けは輪郭を描き塗りつぶせばいいのですが、塗り厚をコントロール
して、手際よくというのは、やはり練習あるのみ。
しかしコツコツ努力するHさんならば、きっと到達して下さることと
期待しています。
自作の器に加飾する
NHK文化センター柏教室のFさんの作品をご紹介
致します。
実はこのフリーカップは陶芸がご趣味のFさん自作の
品です。
ヘラで削った窪みに、金箔を加飾しました。
こちらが反対側のまだ加飾してない部分です。
黒い釉薬が単調になってしまったので、金箔を入れてみようと
思いつかれたそうです。
陶芸をなさっている方なら、思ったように釉薬の効果が出ず、
物足りない結果になってしまったご経験があるかと思います。
そのような時に貝合わせで行って頂いた応用で金箔を貼り
込むというのは、オススメしたいテクニックです。
Fさんのフリーカップもワンポイントに金箔が入っただけで、
見え方がすっかり変わってしまいました。
Fさんの狙い通りになったのではないでしょうか?
シナハマグリとは
金繕いのカリキュラムで行っている「貝合せ」ですが、ご自分で
ハマグリ貝を購入して用意して頂いています。
この際、国産の貝をお選び頂くようにお願いしています。
それは国産の貝の方がカラが丈夫だからということと、柄が美しい
ということがあります。
中国産のハマグリ(シナハマグリ)は、地が黄色っぽく、頂点の
ところに縞柄があるだけです。
対して国産のハマグリ貝です。
こちらは鹿島灘から九十九里海岸で採れる「チョウセンハマグリ」です。
色柄が様々なのが、おわかり頂けると思います。
やはりお求め頂くなら、国産の貝がよろしいかと思います。
ある程度の大きさのハマグリ貝が出回るのが、3月3日のひな祭りまで
です。
貝合せの為に購入をご検討の方は、この時期までにお探し下さい。
なお「シロハマグリ」「大ハマグリ」などの名前で販売されているケース
もある「ホンビノス貝」は、北米原産なので貝合せには適しません。
お求めにならないようにお願い致します。