月別アーカイブ: 2015年11月
玉毛とは?
先日根朱筆のブログを書く際に、前から疑問に思っていた「玉毛=
猫毛」について調べてみました。
毛先に玉状のものが出来るからとか、毛先部分に膨らみがあるから
という理由で「玉毛」と称されているようです。
しかし実際筆を作っておられる方のHPによると、そのような状態は
確認出来ないとのことです。
先輩職人の「猫の名前は大抵タマだから」という話が紹介されていますが、
案外本当の理由はそんなところかもしれません。
私は愛猫家に配慮して、違う言葉に置き換えているのではないかと思って
いたくらいです。
玉毛は細い線を書くために使われますが、私のかな書の腕では玉毛は
まだ無理と言われています。
上の画像に写っている筆は、いつか使える日が来ることを願って
購入したものです。
筆について興味深い話がありましたら、またUPします。
金が馴染む
藤那海工房 土曜日クラスのTさんの作品をご紹介致します。
画像左下の角が欠けていたものを、修復されました。
形もしっかり復元されていて、完成度が高い作品です。
Tさんは、仕上げの蒔き下漆が少々厚めになってしまっていた
のですが、今回の作品では薄めになってきました。
これはTさんがコンスタントに仕上げを行っている成果だと
思います。
この作品で見て頂きたいのは、釉薬と金泥の相性です。
度々ご紹介しているように白化粧土には、金泥が合います。
ベージュ色に馴染んでとても綺麗です。
この他、黄色の釉薬にも合います。
派手に感じる金ですが、黄色味を含んだ色には馴染んで、程よい
仕上げになると思います。
基本的には、器の釉薬の色と合わせる漆繕いは、意外に難しい
割に残念な仕上がりになるケースがあります。
また茶道具では「ごまかし」と見なされて、格落ちになりますので、
安易に飛びつかず、ベストの選択をご検討下さい。
実は金•銀などの金属色は、合う色が多く、大変便利な色なのです。
面相筆の使用
筆でよく質問を受けるのが、面相筆についてです。
面相筆とは輪郭や目鼻など、顔を描くための筆ですが、一般に細い
線を描くための筆とされています。
穂先の毛種はイタチ、たぬきなど、様々あります。
この筆を金繕いに使用出来るかということなのですが、使用感に
差し障りがなければ構いません。
ただ私としては穂先もあまり利きませんし、腰も強くないので、
粘り気のある新うるしを塗るには使いづらいのではないかと
思います。
強いて言えば広範囲にざっくり塗るという用途ならいいかも
しれません。
下地塗りなら使いようがあるかと思います。
お好みでご使用下さい。
市川駅のホーム
NHK学園市川オープンスクールの教室がある他、乗り換えで
乗降することが多いJR市川駅のホームが模様替えしました。
一瞬キリンを想像してしまったのですが、石畳の模様が茶色で
塗装されています。
この茶色部分が滑り止めになっているのでしょうか?
それとも単なる意匠なのでしょうか?
今の所、正体はわかっていません。
また私が利用する範囲では、このような塗装がされているのは
JR市川駅だけです。
詳細をご存知の方がいらっしゃいましたら、お教え下さい。
横浜 みなとみらいの夜景
本日は原一菜先生の助手で、横浜教室の日でした。
講座終了が少々遅くなり、外へ出てみると…
夜景、綺麗でした。
ちょっと得した気分です。
NHK文化センター横浜教室は年内の講座が本日で最後となり、
早くも「また来年」のご挨拶となりました。
もう今年が終わってしまうなんて!
カリンのハチミツ漬け2015
今年もカリンのハチミツ漬けを作る季節がやってきました。
カリンです。
のど飴があるので、ご存知かと思いますが、炎症を抑える
効果があります。
皮がワックスがついたような感じになっています。
少し柔らかくなった時が漬け時です。
ビンにぴっちり入る大きさに切り、切れ込みを入れて、ハチミツを
入れるだけです。
数日で薬効成分が出ますので、カリンを引き出す予定です。
喉が弱い質なのですが、話すことが仕事なので、メンテナンスは
重要です。
早期ならばハチミツ漬けが効果が高いので、重宝しています。
根朱筆(ねじふで)
本漆で使う蒔絵筆について、ご質問頂きましたので、ブログでも
ご紹介したいと思います。
テレビなどで蒔絵師の方がこのように細くて長い筆に本漆を含ませて
線を描いていく様子をご覧になった方もおられると思います。
本来蒔絵用の筆は根朱筆(ねじふで)といい、穂先はクマネズミの背中の毛が
使われていました。
しかし平成5年頃からクマネズミの毛が入手出来なくなり、現在はドブネズミ
、玉毛(猫)などで作られています。
※上の画像の筆は玉毛(猫)です。
本根朱筆と呼ばれることもある鼠の毛で作られた筆は大変高価(4万円程)
ですが、玉毛のものは数千円で入手出来ます。
蒔絵筆の特殊性は穂先の毛だけではありません。
穂先がはめ込み式になっており、糸を引くと使い手の好みに長さが
変えられます。
金繕いにおいても、この蒔絵筆をお使いになる方もおられますが、これは
必須ではないと考えています。
というのも細く長い穂先を一般の方が使うのは取り回しが難しいからです。
また基本的に線しか描けませんので、線ありベタ面ありの金繕いでは、
効率がいいとは言えません。
私も資料として蒔絵筆は所持していますが、実際の作業で使っているのは
教室でご紹介している筆です。
伝統の道具が厳しい状況に置かれているのは、根朱筆も同様です。
素材となるクマネズミの毛が入手出来なくなったことで、代替えの筆が
登場しました。
若い職人さんは根朱筆の良さを知らないという話に、皮肉を感じざるを
得ませんでした。
映える金
NHK文化センター柏教室のHさんの作品をご紹介
致します。
着物の鹿の子絞りを模した柄がはいったお皿です。
染付けの量が多いので、金泥がとても映えています。
鳥脚型に割れた線自体が美しいのですが、この曲線を描かれる
のに試行錯誤されました。
実は少々段差がついてしまっているので、これをわからないように
しつつ曲線を描くというのは、下地の精度が深く関わってきます。
完璧な下地を作るには、塗る→削るを根気よく繰り返すしか
ありません。
Hさんはそれを乗り越えられて、この作品を完成されました。
大変美しい作品となったのですが、ご本人曰く、接着をキッチリ
やっておくのが重要とわかったとのこと。
真理をついてます。
体験会のお知らせ
各カルチャーセンターで行ってきました金繕いの歴史•手順を
ご説明し、蒔絵を体験して頂く体験会ですが、八千代緑が丘にある
JEUGIAカルチャーセンターでも行うことになりました。
合わせてお手持ちの陶磁器が修復可能か、可否鑑定を行います。
金繕いとはどんなものなのかひも解く教養部分と、蒔絵の実際が
体験できる内容の濃い2時間となっております。
ぜひこの機会にご参加下さい。
2016年1月8日(金) 10:00〜12:00
柄として
NHK文化センター ユーカリが丘教室のSさんの作品を
ご紹介致します。
全体を撮影したかったので、修復箇所が見えにくくなっています。
金泥でヒビを3カ所仕上げられているのですが、これが120度ピッチで
入っているのです。
ここまで幾何学的な状態になっていると、物理的に何かあったのでは
ないかと考えてしまいます。
大きめのお皿に勢いのある線がとても合っていて、よい仕上がりです。
同じ柄のお皿が完成して、揃うのが楽しみです。
画像の右上に銀泥で仕上げが入っています。
よくあるパターンなのですが、衝撃がもう少し強かったら欠けとして
破片が落ちるのが、ヒビだけで止まった状態でした。
縁から側面にかけてのキズになるのですが、弧を描いた形が目立ちます。
そこで器自体の柄に雰囲気を似せて仕上げられたのですが、これが
大成功しています。
ご本人は仕上げの線に迷いがあるのが出てしまったのを気にして
おられますが、この完成度であれば十分かと思います。
器自体をお作りになった作家さんも、喜ばれるのではないでしょうか。