月別アーカイブ: 2015年10月
コート紙の箱はNG
金箔のクズ(散り箔)を保存する為の紙箱は、コート紙を使ったものは
避けたほうがよいと以前のブログで触れました。
このコート紙について、もう少し説明させて頂きます。
コート紙とは、紙を塗料などでコーティングしたものです。
わかりやすい例は、プリンターで写真を印刷する際の光沢がある紙
だと思います。
このコーティング層のある紙は色々なテクスチャーがあり、上の
画像のような革シボがあったり、マットな質感だったりします。
金箔の保存に関して言えば、このコーティング層が静電気を起こし、
金箔を吸い寄せてしまいます。
ですので箱の内側が全面コート紙であるばかりではなく、表面から
内側に折り込んである場合でも同様です。
金箔は見事にこの折り返し部分を狙ったかのように、吸い寄せられます。
吸い寄せられた金箔は剥がれなくなりますので、無駄になってしまうのです。
ご面倒でも貝合せの際には、コート紙ではない箱をお探し下さい。
金泥 復活!
筆洗いなどに使った薄め液を、うっかり金泥にこぼしてしまって、
悲惨な状態になってしまった例を以前のブログでご紹介しました。
金泥がダマになって固まっています。
これをある手順で洗浄し、復活させました。
作業の都合上、量が減ってしまうのは、否めません。
しかし全て駄目にしてしまうよりは、いいかと思います。
また洗浄の副産物で、キメが細かくなります。
もしもの時は手順をご説明致しますので、あきらめずに復活に
チャレンジしてみて下さい。
ハマグリ貝 入手先
NHK文化センター千葉教室を受講中の方々から、ハマグリ貝の貝殻を
無償提供してくれるところがあると情報が寄せられました。
本日、私も確認して参りました。
頂いてきたのが、上の画像の貝殻です。
大きさ、コンディションも悪くないと思います。
近年、取り方の問題からキズが全くないというのが難しくなって
おりますので、なかなか完璧に綺麗とはならないのは仕方ない
でしょう。
ご希望の方には、詳細をお教え致します。
JR千葉駅から徒歩で行けるところです。
ご自身でお好みのものを探しに行かれて下さい。
カピス貝
カピス貝を入手しました。
実は夏のインテリア雑貨として販売されていたものです。
なぜこれを入手したかというと、横浜市イギリス館の参考資料にして
頂くためです。
イギリス館の2階寝室には、このカピス貝で照明のカバーが作られたものが
あります。
カピス貝は和名が「窓貝」という通り、産地のフィリピンの古い家屋で
窓ガラス変わりに使われていた物が現存しています。
日本でいう障子のように細かい格子の中にはめこんであるのです。
プレス加工が可能なカピス貝は、雑貨店などを探すとトレーや箱物が
作られていますので、皆様ご覧になったことがあるかと思います。
照明は貝の透けた感じがやわらかく、あたたかい光です。
横浜市イギリス館をご見学の際には、ちょっと上を見上げるのを
お忘れなく。
草木染 染料植物図鑑
先日カランダッシュの色鉛筆を購入したことをブログに書いたところ、
思わぬ反響がありました。
それは美しい色を見るとテンションが上がるというのがあるのでは
ないかと思います。
そこで同じような感じになるのではないかと考え、山崎青樹先生の
「草木染 染料植物図鑑」をご紹介したいと思います。
山崎青樹先生は、原一菜先生が師事された先生でもあります。
染料となる植物がどんなものか、文献も合わせて紹介されています。
もちろん染色はどのように行うのか書かれていますが、ページ右下に
染められたサンプルが掲載されています。
これが何とも美しい色ばかりなのです。
草木染めの手引き書ではありますが、身近かな植物が染められる色に
驚かされます。
南北に長い国土を持つ日本は、世界的に見ても植物数が豊富なことが
知られています。
それを背景に多彩な染色を生み出してきました。
今、色が美しいことで知られるのはイタリア、フランスという認識が
大多数かと思いますが、開国した日本の色数の多さに驚いたのは
これらの国だったのです。
その多彩で美しい日本の色がご覧頂ける『染料植物図鑑』は、続、続々と
3冊、美術出版社から出版されています。
機会がありましたら、是非手に取ってご覧下さい。
第2回 拭き漆大会
藤那海工房 土曜日クラスでは、金繕い以外の工芸として
本漆による拭き漆にも挑戦して頂いています。
先日の講座で、2回目の拭き漆を行って頂きました。
2回目にもなると、木地へのしみ込みは少なくなって、奥のお椀木地は
ツヤ感が出てきました。
あと最低もう1回は行って頂いて、あとはお好みに合わせて調整する予定
です。
今回、室は段ボール箱を使用しました。
タッパウエアを使用するケースもあると承知していますが、適度に湿気が逃げて
くれ、不要になったら処分もしやすい段ボール箱は便利です。
このあと加湿するものと、保温するものを入れて、乾燥を待ちます。
角を作る
藤那海工房 土曜日クラスのTさんの作品をご紹介致します。
四角形の小皿の欠けの修復です。
2方向から立ち上がった面からなる角が、3カ所も欠けていました。
特に画像上に写っている角は大きく欠損していたので、形を作るのに
とても苦心されました。
難しい形をしっかり作られた上で、金泥の仕上げが青、緑の釉薬に
映えています。
少々蒔下の新うるしが厚いのですが、蒔くタイミングがよいので、とても
綺麗に輝いています。
器の修復は仕上げに気を取られますが、美しく見せるのは下地がきちんと
出来ていることだと思います。
Tさんの作品は、それを現しています。
2015 第2回生藍染め大会
あらゆる手を尽くして染めが出来る量を確保した藍で、今年2回目の
生藍染め大会を行いました。
今回お出で下さったAさんは、お仕事柄珍しい布をお持ち下さいました。
バングラディッシュのシルクモスリンの生地です。
手紬、手織りの透け感のある生地に、刺繍がしてあります。
刺繍糸が染まらなかったので、白く抜けました。
これが効果的で、とても素敵に上がっています。
生藍染めとしても、糸•織りともゆるいところが染まりやすいようです。
こちらはインドのカディという生地で作られた巾着です。
木綿なので、本来は豆乳で下地を作らなければ染まりません。
試しに染めてみましたが、ほのかに染まった感じが気に入られた
そうです。
こちらは刺繍糸の光沢感が違っているところが綺麗でした。
今回Aさんのご提案で、1回目の染液を15分から7分半に短縮してみました。
必然的に2回目の染液が濃く染まる状態になり、同じ生地でグラデーションが
完成しました。
生藍染めは2回の染液で全く違う色が染まり上げるのが、魅力と思って
いました。
確かにそれは大きい魅力なのですが、手工芸品に精通したAさんは、
染めの工程で一切環境に影響のある薬品類を使わない点が素晴らしいと
おっしゃいます。
自ら育てた藍で、環境にも優しいとは。
染め上がった色の美しさばかりでなく、とてもよいものを得たような
気持ちになりました。
小津和紙 リニューアル後
大古瀬さんの個展会場から、ほど近いところに「小津和紙」が
あります。
創業360年の和紙の老舗です。
2年あまりの歳月をかけて耐震補強工事をしており、長らく
仮店舗営業をしていました。
先頃リニューアルオープンしたので、足をのばしてみました。
外観は変わりはありませんが、中はレイアウトを一新。
しかし品揃えには、大きな変化はないようです。
金繕いに使う和紙は、ここで手に入ります。
オンラインストアもありますので、記憶に止めておいておかれると
いいと思います。
大古瀬和美展 見てきました
先日のブログでご紹介しました「大古瀬和美展」を見に行って
きました。
圧巻のメインの作品です。
一見、シンプルな構成なので、エアブラシで制作したものかと思われる
かもしれませんが、時間をかけて丁寧に色を重ねて制作されています。
その時間の厚みは、実際ご覧頂くとお気持ちに届くと思います。
あるアーティストが大古瀬さんの作品を見て、
「音がする。それも耳を澄まさないと聞こえないくらい小さな音が。」
と表現したそうです。
日本橋の雑踏さえ切り離してしまう別世界になっているギャラリーにいると、
その言葉にうなずかされます。
今回の個展で私が特に気に入ったのは、小さめの作品達です。
地下の「TOMOS B」に展示されている作品達です。
どれも今回のタイトル『発光』を見せてくれて、魅力的です。
こちらは1階の作品達です。
特に右側の作品は、色の美しさを見て頂きたいです。
会期は10月10日(土)までです。