月別アーカイブ: 2015年8月
第1回拭き漆大会
藤那海工房土曜日クラスは、1年のカリキュラムを消化したあと、
受講の方々をご相談して、いろいろな工芸にもチャレンジする
ことになりました。
その第1歩が、拭き漆です。
金繕いは新うるしで行って頂いておりますが、本漆を体験して
頂くには拭き漆は最適と考えました。
題材にしたのは、お椀の他、茶托や折敷などです。
本漆の魅力は塗面の美しさに尽きると思いますが、漆かぶれには
注意しなければなりません。
ゴム手袋の他、皮膚に漆をつけないための注意事項をしっかり守って
作業して頂きました。
お椀の樹種は、それぞれで違うものを選択されています。
どんな感じになるのか、楽しみです。
含ませる量
藤那海工房土曜日クラスのUさんの作品をご紹介致します。
このコーヒーカップの直しは、手前の欠損がとても難しい形になっていた
のをどのように仕上げるのかがポイントでした。
少々不思議な形になっているのは、よくあるパターンで、もう少しダメージ
が強かったら欠けていたのが、ギリギリで止まっているというものです。
Uさんは、もともとの器の柄に似せたような雰囲気に仕上げられているので、
違和感がありません。
奥の丸い形の欠けには刷毛目が出ていましたが、許容範囲ですので、
使って頂いて、自分の蒔き方の善し悪しを見極めるとしても良いかと
思います。
こちらのお皿は、少々立ち上がった部分がかまぼこ型になっていて
欠けを埋めるのが大変難しいものでした。
それをクリアして、今回の講座に仕上げてご持参頂きました。
以前のブログに、大きい面積の欠損を仕上げるのであれば、お持ちの
筆の号数を上げ、太い筆を使用した方がよいと書きました。
こちらの仕上げには、その太い筆を使用してチャレンジされました。
ご本人としては、もう少し極めたかったようですが、十分合格点です。
今後は筆に含ませる量を加減して、よりスッキリとした仕上げができる
よう、期待しています。
没後20年 ルーシー•リー展
ルーシー•リーは、大変人気のある陶芸家ですが、その没後20年記念の
展覧会に行ってきました。
今まで私はルーシー•リーに関して人気があるが故に食わず嫌いでして、
その作品を見ることはなかったのです。
それはリーという名前から、韓国系の人かと思っていたくらいです。
今回の展覧会で、ルーシー•リーは、ウィーン生まれのイギリスの
陶芸家と正しく理解出来ました。
ルーシー•リーを、韓国系の人かと思っていたのには、代表作のフォルム
にもあります。
画像にあるように緊張感のある細い高台を持つシンプルな形が、李朝を
思わせたからです。
また鮮やかな釉薬が印象的ですが、これも後期の作風で、非常に多彩な
釉薬の使い手であったのも、新たな発見でした。
会場で80歳の時にドキュメンタリー番組に出演し、作陶風景などを取材
したものを流していました。
画面に映るルーシー•リーは、大変華奢な老婦人なのですが、ろくろを
操り、針で掻き落としを行う様子は、堂々たる姿です。
一転窯から作品を取り出している時の笑顔は、作品から漂う“かわいらしさ”
を感じるキュートな笑顔でした。
新たに発見されたウィーン時代の作品の他、200点の作品の大半が日本
初公開となるそうです。
展覧会はこのあと首都圏での公開はなく、姫路、郡山、静岡と巡回
します。
近隣の方はもちろん、遠方の方も足を運ぶ価値のある展覧会だと思い
ます。
破損の理屈
NHK文化センター千葉教室のHさんの作品をご紹介
致します。
割れたお皿を接着されたものです。
とても不思議な感じで割れているように見えますが、この形は
実は珍しくありません。
高台周辺の厚みの同じ所を周回して、この形が生まれるのです。
しかし目に立つ破損で、とても面白い仕上がりとなりました。
ペーパーナプキンホルダーがバラバラに割れたものを接着し、
銀系の泥粉で仕上げられました。
これは大変な労作で、接着も大変でしたし、欠損していた部分も
たくさんあったので、それを埋めるのも大変でした。
なるべく目立たない仕上げをご希望だったので、いろいろ試行錯誤
して頂きましたが、最終的には銀系に落ち着かれました。
よいご判断だったと思います。
こちらも仕上がりが面白い結果になった器です。
少し前にご紹介しました器を同じように、内と外が違う状態なの
です。
内側は単純な鳥脚型なのですが、外側に複雑にヒビが入っているのが、
仕上げの段になってわかったので、加筆されたそうです。
これで衝撃の方向がわかるのですが、外側の方がダメージが強く出た
ということだと思います。
Hさんは根気よく取り組んで下さっているので、今後も手塩にかけた
作品が完成してくると思います。
またブログで紹介させて頂くのを楽しみにしています。
「引き切り」ハサミ
文房具好きとして、最近変わった購入品と言えば「引き切り」する
ハサミです。
「引き切り」というと、金繕いの講座を受講して下さっている方は、
気がついて下さると思います。
画像のハサミは、Raymayというメーカーの「スウィングカット」という
商品です。
ハサミが引き切りするとは、どんな感触なのかみてみたくて購入して
みました。
この商品本来の目的は軽い力で切れるというものです。
従来のハサミが押し切りをしていることで、切りにくいものがあります。
例えば毛束をカットすると、毛が逃げていって真っ直ぐ切れませんが、
このハサミだとそういうことはありません。
ということで、このハサミなら切れるものを模索中です。
魅力の線
NHK学園市川オープンスクールの4月から受講を始めた方の
作品をご紹介致します。
ヒビを止めて、仕上げをされました。
ヒビ自体がとても魅力ある曲線を描いています。
これは人が意図して作れるものではありません。
金繕いの面白さは、このようなところにあると思います。
あまり深刻ではないヒビだと、早い段階で仕上げをし、完成させる
ことが出来ます。
これは毎週金曜日を作業する日と決めて、着実に作業して下さった
ことも重要な要素です。
作業前に講座でご説明した内容を記したノートを確認されていると
聞き、とても嬉しく思いました。
講座が月に1回なので、なかなか基本の作業を覚えて頂くのが難しい
と思います。
しかしこのように確認をしながら作業して頂くことが、習熟に結び
つくと考えています。
伊東屋 リニューアル
文房具の銀座•伊東屋さんが改築して、リニューアルオープンしたので
先日見に行ってみました。
ガラス貼りがモダンな印象のファサードです。
店舗内は従来の文房具がひしめく状態を一新。
まるでおしゃれなセレクトショップのように、ゆとりのディスプレイが
なされていました。
また上りのエスカレーターが設置されたことで、階段となかなか来ない
エレベーターという問題点も解消されていました。
しかし文房具好きとしては、少々さみしさを感じています。
圧倒的な品揃えで、新しい文房具に出会う楽しみが旧店舗にはあったの
ですが、それがなくなってしまったからです。
マーケティングを気取って分析してみれば、過大な在庫量を抱える時代では
ないということかもしれません。
企業の文房具購入は、アスクルなどの注文•配達まで行う業者の出現が
ありますし、個人もネットで購入することが多くなっています。
おしゃれというなら輸入文房具店もたくさんあります。
銀座で一般的な文房具を購入するなら、東急ハンズの方が買い物しやすい
ようです。
銀座•伊東屋さん、やっぱりさみしいです。
紙ヤスリの準備
陶磁器の修復では紙ヤスリは使いませんが、漆器やガラスの
修復では紙ヤスリが必需品です。
紙ヤスリは、A4版くらいの大きさからA4版を1/3くらいにした
ものまで、ある程度大きさのある状態で販売されています。
このままでは使いにくいので、カッターを使って3cm角くらいの
大きさにカットしておくとよいと以前のブログでご紹介しました。
(ハサミを使ってしまうと、刃が駄目になります。)
私の紙ヤスリ保存箱です。
同じ番手のものをクリップでまとめてあるだけです。
丁寧な方ですと、番手ごとに名刺ファイルを利用して分類されて
います。
ところで紙ヤスリをカッターを使って3cm角にカットするのは、
意外に手間がかかります。
そこで活躍するのが、カッティング定規というものです。
5mmピッチで入っている碁盤の目を使って、簡単に3cm角が測れ
ます。
手前の端面にはステンレス板がついているので、カッターを当てた
としても定規は削れません。
カッティング定規は、いろいろな幅、長さのものが販売されています
ので、お好みのものをお選び下さい。
成田教室の様子
今年7月から開講したセブンカルチャークラブ成田教室の
様子です。
決して大きい教室ではないのですが、その分受講の皆様と距離が
近いように思います。
随時見学は受け付けております。
受講をご検討の方は、一度教室をご見学下さい。
ハマグリ貝 内側の磨き方
昨年10月から受講を始められた方々は、そろそろ貝合せ制作の
カリキュラムを行いたいとお願いしていると思います。
ですのでハマグリ貝の磨きの最終チェックをさせて頂いています。
少々気になっているのが、貝の内側の磨き方を間違えて記憶している
方が多いことです。
内側は曲面になっている上に、貝柱のあとなど、かなり複雑な形を
しています。
それをカッターで削ろうとしている方が多くみられます。
これはかなり無理な作業で、綺麗にならないばかりか、キズだらけに
しているだけになってしまった方もおられます。
お教えしているのは、
①メラミンスポンジで擦ってみる
②おしろい様の粉っぽい感じが取れない場合は、#200〜#300の
紙ヤスリで削る
という手順です。
お手数とは思いますが、作業を始める前にお渡ししている磨き方
を記したレジメを再読下さい。
違う方法で大変な思いをする必要はありません。