復元された東京駅丸の内駅舎のドームには干支のレリーフが
あしらわれていますが、昨年逃げ出した干支が武雄温泉で見つかった
と話題になりました。
この説に関して少々異論がありますので、書いてみたいと思います。
そもそもドームが八角形なのは、中国から伝搬した八卦思想の影響があります。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の八卦です。
この影響から日本人も八角形を尊ぶのです。
干支が12方位を現していることをご存知かと思いますが、八角を考えた時、
丑、寅、辰、巳、未、申、戌、亥を選択するのがきまりごとです。
省かれるのは卯、酉、午、子(東西南北)の4つの方位になります。
一方、武雄温泉の楼門は四角形なので、方位を当てはめるとしたら、
卯、酉、午、子(東西南北)となります。
干支の部分は杉板の透かし彫りで、換気口となっています。
単なる飾りではなく、機能を持っているのです。
東京駅の開業は1914(大正3)年、武雄温泉楼門は1915(大正4)年完成なので、
設計計画が極めて近い時期に行われていた可能性があります。
角に干支をあしらうというアイディアは同時期に発想されていたかもしれません。
しかし設計した建築家の辰野金吾は、辰野“堅固”と揶揄されていたくらい
真面目な人物です。
遊び心で設計したのではなく、方位に干支をあてはめるのをきまりごと通りに
行っただけではないでしょうか?
少なくとも武雄温泉に逃げ出させたという感覚はないかと思います。
東京駅丸の内駅舎にお出かけの際に、そんな話を思い出して頂けたら幸い
です。