月別アーカイブ: 2014年11月
漆の樹皮
引っ越し後の片付けで、いろいろ面白い物が出てきましたので、
ご紹介したいと思います。
韓国土産で頂いた「漆の樹皮」です。
画像の右下に写っている切り口には、樹液が滲んでいます。
漆の木は樹液はもちろん、実も活用出来ますが、韓国では樹皮を
漢方薬として使うそうです。
どうやらお茶として飲むようなのですが、胃腸トラブルに効能がある
そうです。
輪島の塗師•中室勝郎氏は、著書で「漆は人を恋しがる」と書いていますが、
漆の木は人間と共に生きてきました。
樹皮が活用されているのも、その長い付き合いからなのだと思うと、
感慨深いものがあります。
大トクサの脇芽
トクサ刈り取りの季節が近づいてきたので、トクサに関する質問
が多くなってきました。
先日大トクサを誤って購入された方から質問がありました。
細く脇から伸びた芽は、使えるのか?
というものです。
トクサは風に煽られるなどして傷つくと、脇から細い芽が出ることが
あります。
これ自体かなり細く、盆栽などで使われる「姫トクサ」のようです。
しかし細くなったとはいえ、大トクサには変わりがありません。
削る力が弱いのです。
トクサは細さが重要ではなくて、目の細かさにあります。
細い脇芽とはいえ、大トクサとして目が大味なのは変わりがありません。
先日ブログでご紹介した「ファルカタ」(南洋桐)のようですが、
やはり日本の種類であるものをオススメ致します。
お皿貯金
蒔絵などの作品作りのために、完品の器も良さそうな物を見つけると、
購入しています。
名付けて「お皿貯金」。
先日も雑貨店で購入して参りました。
少々小振りの角皿ですが、108円と安価な割に綺麗な形をしていたので、
即購入。
このように普段は行かないお店で気に入った物を見つけると、妙に
得した気分になります。
金繕いの教室では「置き目」「平蒔絵」などのカリキュラムを設けて
おります。
その時に欠損のないお皿の準備をお願いしていますが、急に気に入った
ものを見つけるのは、なかなか難しいようです。
練習とは言え完成すればご自身の作品となり、食卓を飾ることも可能です。
お出かけのついでに器の取扱いのあるお店がありましたら、覗いてみて
下さい。
思いがけない出会いは、その日一日をhappyにしてくれます。
ファルカタ
桐には、とてもよく似た材があります。
「ファルカタ」といい、別名を「南洋桐」というくらいです。
全体が白く、肌理が荒いです。
こちらは本物の「桐」です。
肌理が細かく、詰まった感じ。
カッターで切ると、切断面にツヤがあります。
ファルカタは贈答品の化粧箱として使われることも多いので、実は
目にする機会も多いのですが、類似材と知らないと「桐」と間違えて
しまうかもしれません。
見た目はとても似ていますが、桐に比べると材の強度は落ちます。
工芸の材としては、避けた方がよろしいかと思います。
もし判断に迷うようなら教室にお持ち下さい。
実物を見れば、判定できると思います。
安定した線
NHK文化センター柏教室のNさんの作品をご紹介致します。
今回の作品は線を描くものばかりだったのですが、その上達
のめざましさに大変感激致しました。
ヒビの線を銀で仕上げられています。
硫化が進行していて、すでにシャンパンゴールドになっています。
とても安定した線を描かれていて、お皿とのマッチングもよい具合です。
揃いのお皿なのだそうで、それぞれに破損しており、徐々に修復して
いかれるとのことです。
こちらはヒビが十文字に入ったという変わった破損ですが、器との
バランスよく仕上げられています。
ワンポイントの柄のようにも見えるのは、新しい魅力になったということ
でしょう。
前の2つの作品は銀泥で仕上げられていましたが、こちらは金泥です。
真っ直ぐのヒビを勢いのある線で仕上げられているのが、気持ちよさ
を生んでいます。
Nさんは仕上げに積極的にチャレンジして下さっているので、質問も
ディテールに及ぶことがしばしばです。
改めて自分が感覚的に筆を動かしていることに気がつきます。
お教えする立場としては言葉にしてわかりやすくお伝えしなければ
なりませんので、質問をお受けするたび気持ちが引き締まります。
陶器婚式 磁器婚式
ご存知の方もおられると思いますが、結婚記念日に「陶器婚式」
「磁器婚式」いうのがあるのを最近知りました。
陶器婚式は、9年。
磁器婚式は、20年です。
格から言いますと陶器の方が上なのですが、硬さや価格からいうと
磁器の方が上ということなのでしょう。
自分の仕事に近い言葉が思わぬところから出てきたので、つい反応
してしまいました。
最後の一枚
NHK文化センター ユーカリが丘教室のIさんの作品を
ご紹介致します。
揃いのお皿が欠損してしまっていたのを、順々に修復され、
これが最後の完成作品になりました。
欠けとしてはサイズが大きい方ですが、きれいに仕上げられています。
お皿の元々の絵に、ワンポイント加わったようで、意外に違和感が
ありません。
揃いの器が欠損してしまうと、修復して揃いに戻したいというご要望が
多くあります。
揃いが全て欠損しているとなると相応の時間がかかりますが、完成して
みると、あらたな魅力が加わったことに驚かれると思います。
モチベーションを維持するのは大変ですが、根気よく挑む価値大です。
是非頑張ってみて下さい。
味わいのある線
NHK文化センター ユーカリが丘教室のTさんの作品を
ご紹介致します。
Tさんは一時講座をお休みされておられましたが、この度1年振りに
復帰して下さいました。
その復帰第1作目です。
この味わいのある線!
人間が意図して作れるものではありません。
微妙にゆらぎのある、とてもよい仕上げになっていると思います。
しかしご本人としては、もっと細い線が描きたかったとのこと。
皆様総じて細い線をご希望になられる傾向がありますが、この
器は厚みがあるものですので、仕上げられている線がちょうどよい
のではないかと思います。
ブログでも時々書いていますが、細い線を描くのには筆の先が
どの程度器に接しているのかコントロールする力量が必要です。
これは時々行う仕上げのみでは身に付くものではありません。
やはり練習あるのみ。
そして教室でお話している筆の使い方の基本を思い出してみて
下さい。
ちょっとしたことの積み重ねが、ご自信が納得する仕上げを
作ってくれると思います。
優雅な加筆
NHK文化センター柏教室のKさんの作品をご紹介致します。
先日仕上げデビューをなさったあと、ぞくぞくと仕上げにチャレンジ
して下さいました。
ヒビの仕上げを、器のぶどう柄に合わせて蔓として描かれました。
ご本人は、柳のようになってしまったとおっしゃっておられますが、
巻いた形が優雅にぶどうの蔓となっています。
柳に見えてしまう原因は、そもそものヒビの線が垂直に下りている
ところにあります。
ですのでヒビの線を柳に見立てるのが、常套手段になる訳です。
もう1点も、やはりヒビの仕上げです。
筆継ぎをしたところが盛り上がってしまったので、全体に粒を
つけられたそうです。
これが柳の新芽が出たところのようにも見えますし、器自体のレリーフ
と呼応しているのも素敵です。
普段の生活で愛用されていた品ですので、修復後はさらに毎日を
楽しくしてくれると思います。
自分で直したということが、より器の魅力を増してくれるはずです。