日別アーカイブ: 2014年8月9日

ベーリック•ホール パームルームの謎

昨日に続き横浜山手西洋館について、お送り致します。
横浜•山手にある西洋館の中で、最大規模を誇るのが「ベーリック•ホール」
です。
ベーリック•ホールには居間の北側に、サンルームのように見える
「パームルーム」という部屋があります。

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では何故サンルームではなくて、パームルームなのか?
インテリア様式に詳しい友人の助けを借りて、その謎を私なりに
考えてみました。

そもそもサンルームは、16世紀のドイツから始まる温室に起源があります。
「オランジェリー」と呼ばれたオレンジを冬越しさせる施設は、18世紀には
社交のための場〜ダンスパーティー会場と変化します。
オレンジや南方の植物は、社交の場を飾るエキゾチックな装飾の一部だった
のです。

19世紀になると熱帯地域の植民地から次々に有用植物や、鑑賞用植物が
持ち帰られます。
それらを育てる施設として温室は、巨大化していきます。
これは産業革命による技術革新で得られた鉄、ガラス、水蒸気による暖房
なくして成立しません。
(例 イギリスのキュー植物園 パーム•ハウス)

巨大化した温室はその後、健康志向の高まりからサンルームとなり、一般
家庭に取り込まれます。
それが20世紀に日本に伝搬し、和洋併立の住宅に併設されます。
(例 東京•岩崎邸)

ではパーム(ヤシ)とは、何なのか?
一つは、温室の代名詞ということが言えると思います。
パーム(ヤシ)は、温室を飾った熱帯植物の代表です。
そしてその温室は、所有者にとっては経済的な余裕を誇示するステータス
シンボルなのです。

そしてもう一つ、パーム(ヤシ)は、様々な宗教、人種の中で、特別な
植物だということです。
これは日本人にとっては少々縁遠いのですが、言い換えれば「生命の木」
という感じでしょうか。

立ち戻ってベーリックホールを考えてみます。
施主のB.R.ベリック氏は、フィンランド領事の顔を持つ公人でも
あったので、パーティースペースやディナー後のティースペースが
必要になったと思われます。
建築家のJ.H.モーガン氏は、流行の建築スタイルに精通しながらも
居住性を重視する建築家であったことから、ベリック氏の執務室を
兼ねた居間の通風、採光を重視したことが考えられます。
これを眺望の良い2階北側ベランダを支える場所としてサンルーム
様のスペースとしたのではないでしょうか?

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場所としては北側なので、サンルームではなく「パームルーム」。
パーム(ヤシ)が特別な植物であることを踏まえれば、パームが
出てくるのは自然な発想ではないかと思います。

ベーリックホールのパームルームには、壁泉と呼ばれる噴水があります。
これは世界的にも珍しい例だと聞きます。
ベーリックホールにお立寄になられた際には、ぜひパームルームを
ご覧下さい。
そして私の推論を思い出して頂ければ、嬉しいです。

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