総体漆繕いとは、何らかの理由で器本体のほとんどを焼失した
場合に、特殊な技術で本来の器の姿に蘇らせることを言います。
これで著名なのが付藻茄子•松本茄子(静嘉堂文庫蔵)という
名物茶入れです。
狭義に繕った箇所を器色に馴染ませて修復することを言う場合も
あります。
あまり修復した箇所を目立たせたくないというご希望から、総体
漆繕いをお考えになる方がおられますが、いくつか注意点があります。
1点目は、器の釉薬に合わせた漆の調合が難しいところです。
色漆は色数に限界がありますので、絵の具のようには混色出来ません。
ですので器色に合わせるのが難しくなります。
そして難しい割に美しく見えにくい場合があります。
金繕いの工程のほとんどが欠損を埋めるという作業に費やされますが、
その最終工程としての仕上げが美しく見えにくいというのは残念です。
であるならば素材色としての金•銀泥で仕上げるのをお勧めしたいと
考えています。
2点目は、格の問題です。
総体漆繕いは「ごまかし」とみなされます。
これは格落ちとなりますので、お茶道具では避けたい問題です。
お茶道具を修復される方は、ご注意下さい。
以上の点を踏まえた上で、総体漆繕いにチャレンジしてみたい方は、
教室でご相談下さい。
ケースバイケースになりますので、修復されたい器に合わせて
お話したいと思います。