月別アーカイブ: 2014年1月
ヒオウギガイ
ハマグリ貝に金箔を貼るカリキュラムを終えられた方に人気
なのが、ヒオウギガイでの貝合せです。
本日は貝合せの講座用に、このヒオウギガイの準備を致しました。
ヒオウギガイ(檜扇貝)とは、ホタテ貝と同じイタヤガイ科です。
和名は、古代のヒノキ材の薄板を束ねて作った扇である檜扇に例えた
名称です。
画像で、特徴的な赤•橙•黄•紫と鮮やかな色彩がご覧になれるかと
思います。
この色が内側にも反映されているので、作品作りもそれを踏まえて
なさるとよろしいかと思います。
もちろん食用としても販売されていますが、工芸用の貝殻も入手
しやすくなっています。
入手先や、入手後の処理については、教室でご確認下さい。
要注意!大樋焼
大樋焼とは、楽焼系の工法を用いて制作される金沢産の焼物です。
寛文6年(1666年)加賀前田藩主五代前田綱紀により,陶工として
楽家四代一入の門人であった土師長左衛門(後の初代大樋長左衛門)が
京都から招かれ,現在の金沢市大樋町に移り住んで,千宗室仙叟の指導の
もとに茶器を制作したのが始まりとされています。
画像のような飴釉が特徴です。
お茶を頂く際手に持った感触が柔らかく、お茶のぬくもりが
ほんわかと伝わるのが魅力です。
しかし修復するとなると問題があります。
元となった楽焼より素地•釉薬とも脆いところがあり、2重3重の
下準備を施して万全を期す必要があります。
これはお茶碗に限らず、香合などの道具でも同様です。
金繕いをお教えする立場としては、注意を要する器の第一位です。
修復をご希望の方は自己判断せず、必ず事前に教室で手順をご確認下さい。
欠け部の仕上げ
線を描く仕上げは既に行われていた、よみうりカルチャー大宮
教室のSさんが、欠け部の仕上げにチャレンジされました。
線を描くのと、欠け部を平滑に仕上げるのは要領が違います。
Sさんも、少々の塗り残しと、刷毛目が出てしまっていますが、
初心者の仕上げとしては、満点です。
塗り残しはよくあるお悩みのひとつですが、コツは思い切って
大きめに蒔下漆を塗ることにあります。
欠け部ぴったりに直そうと思っても、大抵小さく描いてしまいます。
少なくともシャープペンの芯1本分(0.5mm)くらいは大きめに描いて
みて下さい。
Sさんには、刷毛目が出ないように塗るコツを踏まえて桜の花びらを
描く実習をして頂きました。
きっとさらに上達されていると思います。
次回拝見するのを楽しみにしています。
ハマグリ貝のキズ
昨日ご紹介した貝合せの講座を受講中の方から、ハマグリ貝のキズに
ついて興味深いお話を聞きました。
この方は貝を入手するため、九十九里浜までお出かけになるそう
です。
こちらでの漁は、船で爪がついた金属枠の網を海底に下ろして、砂の
中の貝を掘り起こすという方法を取っているそうです。
『マンガ』と呼ばれる貝桁網は、爪が並んでいて熊手のようです。
大きい貝は、この網から逃れて成長することを繰り返していますので、
それだけキズがついている確率が高いということになります。
なぜこの漁法になるかというと、沿岸の砂浜にはハマグリがいなくなって
しまったため、船で沖に出て金属枠の網を使わざるを得ないそうです。
検索してみますと、この原因を潮が早くなったからとの見解を見つけました。
日本沿岸の護岸工事が進んでしまったのが理由です。
その他乱獲や密猟の影響もあるかもしれません。
ハマグリが絶滅危惧種になるのも仕方ない状況です。
それとともにハマグリ貝を美味しく食べて、貝殻を貝合せに仕立てて愛でる
という日本文化も受難の時代になっています。
ピンチヒッター
今年の始めに貝を磨いていますとブログに書きました。
実はこれは貝合せの講座のピンチヒッターをお引き受け
したからなのです。
この講座は日本画家の先生が講師を務めておられましたので、
絵を描くというのが主眼の講座だったのですが、私は金繕いが
本業ですので、金繕いの講座でお教えしている内容で良ければと
ご提案致しました。
受講中の皆様がこの提案を受入れて下さったので、本日初日を
迎えることが出来ました。
今まで少しずつ作りためていた作品を持ち込んでいます。
このうち1点をご紹介致します。
十二単衣が紫色のグラデーションになっています。
原一菜先生が『ゆかりの姫君』と銘をつけて下さいました。
この講座は特殊な事情の為、受講中の方のみを対象として
3回で終了します。
あと2回、よりご満足頂けるよう努力して参ります。
ダイナミック!
NHK文化センター ユーカリが丘教室の生徒さんの作品紹介
シリーズの最後です。
Kさんの作品をご紹介致します。
大きく梅の枝が描かれた陶器の大皿の修復です。
厚みのあるお皿の接着でしたので、それだけでも大変だったと
思います。
仕上げのラインは、梅の枝振りに負けないくらいダイナミックな
ものになりました。
目を引く大胆さが、心地良い仕上がりです。
このようにある程度太い線を描く場合は、道具ばかりでなく、筆の
運び方にも工夫が必要です。
チャレンジされる場合には、一度ご相談下さい。
染付けの仕上げ
引き続きNHK文化センター ユーカリが丘教室の
生徒さんの作品をご紹介致します。
染付けの器を修復して下さったIさんの作品です。
お皿の真ん中にヒビが大きく走っています。
染付けのベタ面に差し掛かった画像右上に伸びた部分は、銀で仕上げて
あります。
この部分は硫化が進むと染付けに同化していきます。
これも染付けの修復を行う際には、よい手段です。
特に大きく直しをしなければならない場合、その範囲を狭める効果
があります。
現段階までで十分な完成度なのですが、さらに手を加えるリクエストを
させて頂きました。
大きな欠けから伸びた線が、とても綺麗に描かれています。
そしてアクセサリー。
縁が欠けたのを、金で仕上げてあります。
もともと金彩が入っていますので、違和感がありません。
器に限らずアクセサリーも修復出来ます。
直したいものがあれば、お教室までお持ち下さい。
ご夫婦合作
昨日に引き続きNHK文化センター ユーカリが丘教室の生徒さん
の作品をご紹介致します。
今日はMさんの作品です。
ご主人が作られたお抹茶茶碗が、割れたものを修復されました。
まるで木の枝振りのようです。
教室の皆さんから絶賛の声が上がりました。
ご主人が焼いたものを、奥様が直す…完成したらお茶を飲む
お約束になっているそうです。
金繕いで思い入れのある器が蘇るという、その意味を改めて
見せて頂きました。
Mさんは他にも仕上げてきて下さっています。
うさぎの絵柄の入ったお皿2点です。
欠けの直しなのですが、お皿に元々入っている斑点と形を
合わせて仕上げられました。
違和感がまったくありません。
こちらも右上縁に欠けの修復があります。
お皿の月の絵柄と呼応して、やはり違和感がありません。
お皿に元々ある絵柄に合わせて修復するのは王道の手段ですが、
Mさんの2点の作品は成功の好例です。
是非参考になさって下さい。
馴染みました
本日のNHK文化センター ユーカリが丘教室の午前クラスでは、
仕上げをしてきて下さった方がたくさんおられました。
撮影させて頂いた順に、ご紹介したいと思います。
最初はTさんの作品です。
以前銀で仕上げられた花器が、釉薬に馴染む色に変化しました
ので、硫化を止める作業をされました。
縁部分に大きく3カ所欠けていました。
特に一番左の欠けは、中抜けになっているので難しい仕上げでした。
蒔きたての銀は白色なのですが、丁度よく花器の釉薬に馴染んだ色に
なっています。
銀の硫化による変色については、たびたびご紹介していますが、まず
最初にシャンパンゴールドのような落ち着いた金色になります。
金は派手過ぎるが、黄色味が欲しい場合は銀の硫化を待つのも
一つの手段だと思います。
Tさんはもう1点、硫化待ちの器があります。
この鉢は内側に反り返っているので、欠け部の形を戻すこと自体が
難しかったのですが、粘ってしっかり直されました。
仕上げも会心の出来だったそうで、今は気に入った色に硫化するのを
待っているところです。
ユーカリが丘午前クラスの方々は受講歴が長い方達ばかりなので、
仕上げについての質問もかなり詳細な内容になっています。
よい仕上げをしたいというお気持ちの現れだと思いますので、
私自身もご要望にお答え出来るように頑張らなければと考えて
います。
半衿
半衿とは襦袢につける替衿であることは、皆様ご存知と
思います。
画像の品は、やはり先日の世田谷ボロ市で購入したものです。
花嫁衣装として使われたものの半衿と思われ、豪華な鶴の刺繍が
施されています。
原一菜(いちな)先生のお見立てで、先生とシェアして購入しました。
そう、これも半衿としてではなく、袱紗に仕立て直そうという計画です。
半衿の下に写っているのが、この秋に生藍染めをした生地です。
別の布に半衿をパッチワークして、生藍染めに生地に合わせる予定です。
白く抜くのに失敗した絞り染めの部分に、刺繍を依頼しなければなり
ませんので、完成にはまだまだ時間がかかりそうですが、この半衿に
出会えたことで完成予定図が見えてきました。