月別アーカイブ: 2013年9月
抹茶茶碗の仕上げ
先日のブログで、仕上げは自由にお考え下さいと書きましたが、
注意を要する器があります。
それがお抹茶茶碗です。
画像は、NHK学園市川オープンスクールで受講して下さったSさんの
作品です。
当初Sさんは、緑の釉薬に馴染む緑色での総体繕い(共直し)をお考え
でした。
総体繕い(共直し)は、金•銀泥を使わず色漆を調合して仕上げを行う
方法です。
茶碗の場合、この総体繕いを行いますと格が下がるとされています。
これは金繕いの発祥に関わるところからも、その理由があります。
ですのでお茶碗の仕上げは、よくご検討の上お決め下さい。
最終的にSさんは、銀泥仕上げを選択されました。
銀の硫化の過程で、気に入った色の時に止めて頂ければよろしいかと
思います。
重陽の節句にちなんで
9月9日、重陽の節句にちなんで、菊の話題をお届けします。
画像は山手西洋館のベーリック•ホールの居間にある暖炉です。
ここに一見、菊の御紋に見える彫刻がされています。
しかしこれは菊の御紋ではありません。
『ロゼッタ文様』という西洋ではよく見る文様です。
その起源はエジプトのロータス文様です。
この文様は蓮を横から見たところです。
これがヨーロッパに伝搬して、ロゼッタ文様になるのです。
(蓮を上から見た絵になります)
ロゼッタというとバラの意味かと思われると思いますが、バラという
より花文様の代表と考えた方がよいと思います。
さてロータス文様は、中国を経て日本にも伝搬します。
法隆寺などの軒瓦に現れる「蓮華文」がそれです。
これは蓮を上から見た文様とわかります。
(諸説あります)
ところで菊の御紋ですが、モチーフは私達が日常馴染んでいる菊とは
種類が違います。
宮廷での重陽の節句の行事は、この特定の種類の菊を使用していたので、
被せ綿など間違って伝わってしまった行事があります。
ではどんな菊だったのか。
ご覧になれば、菊の御紋も、被せ綿も、菊花酒も納得されます。
ご興味のある方は、お教室で質問下さい。
仕上げのアイディア
前回に引き続きNHK学園市川オープンスクールを受講して下さって
いる方の作品をご紹介致します。
昨年10月から始められたTさんの作品です。
白化粧のぽってりした釉薬に金泥仕上げがとてもよく映えています。
蒔くタイミングも良いので、金の発色が綺麗です。
こちらの磁器の皿も、仕上げの形、タイミングとも大変よく出来上がって
います。
Tさんはコツコツと作業を進められて来られたのですが、その成果が仕上げにも
現れていると思います。
特に上の陶器の器に関しては、ちょっと変化を加えるアイディアがある
そうです。
1年のカリキュラムを終えられると、さらに綺麗な仕上げを目指されたり、
Tさんのようアイディアを加えた仕上げをお考えになり始めます。
そのようなご提案を受けて、このような手順はどうだろうかとお話出来る
のが、講師として至福の時でもあります。
基本は基本としてありますが、どうぞ楽しんで繕われて下さい。
ご自分の器なのですから。
貝絵
NHK学園市川オープンスクールで受講して下さっているTさんが、
貝絵にチャレンジして下さいました。
男貝に人物画が入り、女貝に和歌が書かれています。
百人一首を模しておられるのだと思いますが、とても良いアイディア
だと思います。
なぜこの歌を選ばれたのかなど、思い入れは次回の教室でお伺い
するつもりです。
通常貝合わせの遊びとしては対で同じ絵が描かれているものですが、
一つの作品と考えれば、これにとらわれずに画題をお考え頂いてよいと
思います。
またTさんのように絵を描くだけでなく、文字を書かれるのも
もちろん構いません。
絵を描くのは苦手…という方が多いのですが、いろいろコツがありますので
ご相談下さい。
箔合紙と箔打紙
金箔のあしらいの練習として行っている『貝合わせ』のカリキュラムで
質問が多いのが、箔合紙についてです。
よく「油取り紙になるものですね。」と言われるのですが、完成した金箔の
間に入っているのは箔合紙で、油取り紙にはなりません。
箔合紙とは金•銀箔を保存し、1枚ずつはがしやすいように間に入れて
いるものです。
三椏紙で、岡山県津山市の上横野が最大の産地です。
一方、箔を打ちのばす時に使われるのが箔打紙です。
これが油取り紙になります。
雁皮紙で、名塩の鳥子紙がよく知られています。
箔打職人さんがそれぞれで灰汁、柿渋、鶏卵を混ぜた液に浸けて
仕込んだものを使います。
金箔を貼り終わると箔合紙が残りますが、いろいろ転用が出来ます
ので、取っておかれるのをお勧め致します。
金銀ツートン
昨年くらいから修復のご依頼で好評なのが、金と銀のツートン
仕上げです。
このお抹茶茶碗は、若い茶道家オリジナルの野点用夏茶碗
だそうです。
白磁に茶だまりの部分が銀彩と、モダンなデザインになっています。
これが2つに割れてしまっていたのです。
銀彩の部分はもちろん銀泥仕上げですが、白磁の部分は金泥仕上げと
ご依頼頂きました。
ツートンに仕上げるのは別段難しいことはなく、時間をずらして仕上げる
だけなのです。
(もちろん合わせ目にちょっとした工夫は必要ですが…)
このツートンがモダンな器のデザインと合って、よい結果になったと
思います。
ちなみに器自体の銀彩が硫化していましたので、銀泥仕上げも色が馴染む
ようにひと手間かけてあります。
10月期 継続伺いについて
各カルチャーセンターでは、10月期のご継続の確認が始まっています。
1年のカリキュラムの最中の方はもちろん、終了した方もよりレベル
アップを目指してご継続頂ければ幸いです。
継続にあたってご注意頂きたいのが、現在満席のクラスを受講中の
方です。
キャンセル待ちの方があった場合、ご継続なさらないとその方にお席を
お譲りすることになります。
そうなりますと期間を置いて再受講というのが、かなり難しくなります。
出来ればそのままご継続頂きますよう、お願い致します。
私もより皆様にご満足頂ける講座を目指して、日々研鑽を積みたいと
考えております。
どうぞよろしくお願い致します。
※各教室の空席状況については、詳細が分かり次第、ブログでお知らせ
致します。
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