月別アーカイブ: 2013年9月
第1作
今日のNHK文化センター ユーカリが丘教室で仕上げをして
来て下さった方がたくさんおられましたので、次々ご紹介
させて頂きます。
まずはIさん。
初めての仕上げです。
割れを接着した鉢を仕上げてきて下さいました。
この鉢は縁が横方向に張り出しているので、接着自体がとても
難しいのですが、上手に接着されました。
その後欠損を根気よく埋めて、今回仕上げられました。
同じ鉢で、欠けがある物も仕上げられています。
この鉢のもうひとつ難しいところが、縁の端が垂直方向に立ち上がりが
ある点なのですが、この欠けは、その立ち上がりを再現しなければ
ならなかったのです。
2点共、初心者にしてはかなり難易度の高い破損でした。
ご本人にしてみると、仕上げに今ひとつ満足感がないそうなのですが、
いつもブログに書いているように、ここまで仕上げた自分の頑張りを
褒めて、使えるようになったことを喜んで頂ければよいのではないかと
思います。
もっとよい仕上がりをしたい、というお気持ちが上達への第1歩と
考えています。
Iさんの場合、蒔くタイミングがよく、金の光沢がきれいに出ています。
次に仕上げる器は、ステップアップしているに違いありません。
益子焼
昨日突然思い立って、益子焼と笠間焼を見に行ってきました。
久しぶりの窯元めぐりです。
好天に恵まれたものの、高速道路が事故で封鎖されるという
アクシデントが…
短い時間での見学を余儀なくされましたが、狙いの場所のみを
回って、満足の1日となりました。
まずは益子焼の「starnet」さん。
こちらで開かれていた郡司庸久さんの個展が目的です。
郡司さんの作品をネットで見て以来、実物を拝見したかったのですが、
ようやく実現しました。
ブルーの釉薬が印象的な花器を購入。
郡司さんの個展は年内に都内であと2回あるそうなので、また
訪れたいと思います。
ところで会場となった「starnet」さんは、益子焼でも異色のshopです。
ファッションデザイナーでもある馬場浩史さんがプロデュースしている
陶器、ギャラリー、レストラン、ファッションのお店です。
陶器は民芸調の益子焼とは一線を画したシンプルでモダンなデザインです。
都内にもshopがありますので、気になる方は是非!
漆漉し紙
漆から塵埃を取り、滑らかさを得るのには、漆漉し紙を
使います。
かつては奈良県吉野町で生産されていた楮の「吉野紙」が
使われていましたが、現在は化繊の「美吉野紙」「新吉野紙」
という名称のものに変わっています。
美吉野紙は上の画像のように、短辺方向に繊維が走っているので
手で簡単に切れますが、長辺方向は刃物を使わないと切れません。
漉し紙として使用する際には、ツルツルとして光沢がある面を外側に、
ザラザラした面を内側にして漆を入れます。
漉している最中に破れてしまわないよう折り方がありますので、
それをきちんと把握した上で使うようにして下さい。
漆芸材料店で取り扱っています。
柴田是真の植物図
書店で偶然見つけて購入しました。
東京藝術大学美術館が所蔵している柴田是真の下図•写生帖の
中から植物図の秀作を集めたものです。
上の円の中に描かれているのは、明治宮殿千種之間天井画下絵です。
格天井の丸に収めるためのものですが、実際は綴織になっています。
(明治宮殿は昭和20年戦火で焼失)
以前ご紹介しましたように柴田是真は漆芸家としてはもちろん、
円山四条派で学んだ絵師としても非常に評価が高かったのです。
植物を描くなら目標にしたい、生き生きと美しい絵です。
金泥の包み
金泥を蒔く時、包みはどうなさっているでしょうか?
教材としてお渡ししている包みは、3重になっています。
このうち外側の2枚は外して作業して頂くよう、ご説明しています。
下に削りカスなどのゴミがついていない、清潔な紙を敷いておくのも
重要です。
もしや上の画像のように、3重の包みのまま蒔絵の作業をしていませんか?
この状態で作業すると、包みの間に金泥が入り込んでしまい、
ロスが出ます。
金が高くなっておりますので、なるべく大切に使いたいものです。
是非ご説明しているように、内側の包みだけにして下さい。
金繕いの仕上げは、複雑なものになると器を回転させながら蒔絵を
することになります。
そうすると周囲にかなり金泥が散ります。
下に清潔な紙を敷いておけば、散った金泥の回収が可能になります。
紙を敷いておくのもお忘れなく!
ところで包みを押さえておく「粉鎮」という小さな文鎮が販売
されていますが、私は適当な物で代用しています。
左からガラスのボーダータイル、積層材、黒檀材です。
教室では真ん中の積層材の色違いを使用しています。
粉鎮の条件は、
包みを押さえる適当な重さがあること、
静電気が起きにくい素材であること、
作業の邪魔にならないよう出来るだけ低いこと、
上にのった金泥を払って包みに戻しやすいこと、
でしょうか?
外国のコインを使われている方もおられました。
文房四宝ではありませんが、気に入ったものをお使い下さい。
藍 再成長
8月下旬に生藍染めを行った時に、20cm丈位に切り詰めた
藍が50cm位までに再成長しました。
現在は花芽が出だしています。
花芽が出たところが生藍染めのタイミングといろいろな物に書かれて
いるのですが、理由について原一菜(いちな)先生からお聞きしました。
花芽が出ると枝が先には伸びなくなりますので、下葉に染料の元が
充実するからなのだそうです。
実はこのところ台風や、うっかり渇水させてしまったことで、葉が枯れて
しまいました。
しかしこの枯れた葉も状態によっては生葉と混ぜて染めに使えるそうです。
左のように藍色を保持した状態なら使用可ですが、右のような黄茶色の
場合は不可です。
朝夕涼しくなったものの、乾燥と日中の日差しの強さで1日2回の水やりが
欠かせませんが、2度目の生藍染めを楽しみにして頑張ろうと思います。
こんなふうにスケッチしています
ついにご指摘が…スケッチしましたとブログを書いて画像は
出ているが、スケッチ自体が出てこないと…
お見せするほどではないと出していなかったのですが、
少しだけご紹介したいと思います。
桃をスケッチしたものです。
左がチューリップ、右がシュウカイドウです。
昨日ご紹介した桐もスケッチしています。
ご覧頂いておわかりかと思いますが、ボールペンでスケッチしています。
細線で下書きはせず、完成像を頭の中で描いて、手前にある物から
描き進めます。
より形態を把握していないと描けませんので、難易度が高くなります。
またこの方法によって直に描く漆絵などの練習にもなっています。
アップしてみますと、地味な画像になってしまいました。
ご紹介に足るようなスケッチができるよう、精進したいと思います。
桐紋
昨日の箱義桐箱店をご紹介したつながりで、桐紋についてUP
したいと思います。
箱義桐箱店さんの社章に使われていたのと同じ「五三の桐」です。
「五」とは中央の花の数を言い、「三」は両サイドの花の数を言います。
花の数違いで、「五七の桐」があります。
この二つは天皇家と宮家で使い分けていました。
皇室ゆかりの紋は足利尊氏に下賜されたのを始まりに、その後も時の
権力者(豊臣秀吉など)にも下賜されます。
江戸時代に入ると一般化し、現在では日本国政府の紋としても使われています。
政府関係者が記者会見に使う演台が、正面がさみしいとの理由で桐紋が
配されたのも記憶に新しい話題です。
この桐紋、実際とは違う創作がされています。
今年4月に撮影した桐の花です。
花は枝の最先端につき、葉はその下から芽吹いています。
つまり紋のように葉から花は出ないのです。
また花の時期には、葉はそんなに大きくありません。
今年の7月に撮影した桐の葉です。
葉が大きくなるのは夏です。
人の顔より大きくなっています。
このように実際にはない状態をデザインするのが、紋の
おもしろいところです。
箱義桐箱店
明治元年(1868)創業の箱義桐箱店に行ってきました。
お店の前には桐の木があります。
「五三の桐」が社章です。
店内には大小様々な大きさの桐箱が並びます。
用途を設定して大きさが決められているのですが、本来桐箱は
入れる物によって“誂える”ものだったと聞きます。
現代では誂えることはなかなかありませんが、桐箱には
何か納めてみたくなる魅力があります。
削り過ぎないようにするには
金繕いの作業のほとんどは、欠損を埋める作業です。
埋め終わったらそれを磨き上げる訳ですが、大抵の方が
もう少し磨いてもよいという状態で終わっています。
しかし磨き過ぎて、削ってしまったという方もおられます。
原因は夢中になりすぎるというところにありますので、タイマーを
かけて5分ごとに確認をするのがオススメです。
その他、テレビを見ながらCMの間だけ作業するとか、一時違う作業
をするとか、手を止めて確認する時間を作る工夫をするのがよいかと
思います。
実は微妙な調整になればなるほど、削り込む時間より、確認する時間が
大切なのです。
削り過ぎる方は形態の認識が鋭かったり、手仕事がお好きだったり
するので、削りの要領がつかめれば形の作り込みは上手くお出来に
なると思います。
ぜひ自分なりの手を止める方法をお考え下さい。