月別アーカイブ: 2013年7月
蓋の補強
NHK文化センター ユーカリが丘教室のNさんの作品をご紹介致します。
蓋の補強をして頂きました。
少々重さのある陶器の蓋が3つに割れたものです。
蓋というと熱のかかる急須の蓋は、補強が必須です。
Nさんの作品は小物入れの蓋なので熱はかからないのですが、
自重があったので裏面から補強して頂きました。
日々持ち上げるものですから、より安心な方がよいという判断です。
素晴らしいのは、銀の仕上げです。
広い面積だけでも難しいのに、蓋自体に波があり、さらに仕上げ
にくくなっています。
それが見事に均質に仕上げておられて、感動しました。
銀が少し変色したところで止められるそうなので、その状態も
拝見したいところです。
仕上げいろいろ
NHK文化センター ユーカリが丘教室のTさんがたくさん仕上げをしてきて
下さいましたので、ご紹介したいと思います。
特に私が素敵と思ったのが、左上に写っているお茶碗です。
とても美しい形に仕上げておられます。
右に写っているお茶碗自体の柄と呼応して、違和感がありません。
以前にもブログに書きましたが、下地が平滑になっていれば、仕上げは
ご自身の裁量でいかようにも描けます。
Tさんは置き目のカリキュラムでも味のある線を描かれていたのですが、
そのセンスが仕上げでも発揮されています。
仕上げに近い器がたくさんありましたので、ぞくぞくと完成されると
思います。
とても楽しみです。
割れの接着 花器
花器(一輪差し)の首の部分が折れてしまっていた物の修復が
完成しました。
私は陶器の仕上げの場合太めに仕上げることが多いのですが、今回は
割れの線ギリギリの細いラインで仕上げてみました。
銀で仕上げしてありますので、いずれ硫化して釉薬の色に馴染んで
きますが、折れている位置を考えるとなるべく目立たない方がよいと
考えたからです。
ご依頼頂いた方からも「生まれ変わった器に見入ってしまう。」と
とても嬉しいお言葉を頂戴しました。
プラモデル材料•工具
金繕いの教室では「どこで購入したらいいですか。」というのも質問が多い
項目です。
金繕い材料店なるものは存在せず、多くは漆芸材料店、画材店、DIYショップ
などで入手しています。
意外に穴場なのが、プラモデル材料店です。
細かい物を細工するという意味では作業が似ているからでしょうか、
筆や工具など流用可能なものがあります。
都内ですと東急ハンズ渋谷店や、ヨドバシカメラ秋葉原店に置いて
います。
もしついでがありましたら覗いてみて下さい。
思わぬ便利グッズに出会うかもしれません。
プラチナ泥の仕上げ
教室で仕上げの材料としてお渡ししているのは、金•銀泥です。
特に銀泥は蒔いた直後の白色から硫化し、黒に変色していく過程も
お楽しみ頂けます。
しかし銀色を維持したいというお好みの場合は、プラチナ泥という
選択肢もあります。
画像は以前深刻なヒビとしてご紹介しました平鉢ですが、プラチナ泥
で仕上げをしています。
プラチナ泥は銀色ではありますが、銀より青味が強く、暗い色に
仕上がります。
この色は変化することはありません。
金繕いの歴史から見れば、プラチナは近代のものということになります。
また価格も金の3倍ほどと高価です。
この点をご理解の上、お使い頂くのもよろしいかと思います。
割れの接着 仕上げ
このところ修復のご依頼を頂いていた品がいくつか完成しましたので、
ご紹介したいと思います。
以前、接着した器としてご紹介していたものです。
釉薬に馴染む金で仕上げをしました。
「鳥脚」と呼ばれる割れ方がとても美しいです。
ご依頼頂いた方にも、とても気に入って頂けました。
修復の仕事をしていて、最も充実感がある時です。
置き目 + 桜の花びら
金繕いのカリキュラムの中に「置き目」という技術があります。
これは転写の方法なのですが、この技術を覚えておくと、絵が
苦手な方でも無理なく柄が描けるようになります。
実例としてご紹介するのは、NHK文化センター柏教室のNさんの
作品です。
※金泥を払う前です
作品中、波の絵が置き目して頂いたもので、それに桜の花びらを
フリーハンドで描き加えて頂いています。
Nさんの作品は、桜の花びらの筆運びが生き生きとしていて、
蒔き放ちの技法の魅力がよく出ています。
これからこのカリキュラムをなさる方は、無地で、平ら、釉薬が
あまりザラザラしていない、金泥が映える色といった条件の練習用の
お皿探しを心がけて頂ければよろしいかと思います。
ご連絡
NHK文化センター柏教室は8月がお盆に差し掛かるので、8月
30日に振替されます。
お間違いのないよう、ご出席下さい。
藍 vs アブラムシ
順調に育っている藍ですが、このところの猛暑で少々疲れて
いるようです。
直射日光が差さない場所に移動し、せっせと水やりをしています。
しかしついに「アブラムシ」の襲来が…葉裏にびっしりついていたのです。
アブラムシがつきやすいと知ってはいたのですが、まさに猛暑で
弱り目にたたり目ということでしょうか。
早速薬を蒔いて、大事には至りませんでした。
成長著しいので今後は水ばかりでなく、肥料もこまめに与えようと
思います。
はまぐりの稚貝 ぜんな
はまぐり貝の稚貝を入手しました。
「ぜんな」と表示されている場合もあります。
貝合せに使用する場合、はまぐり貝を煮て食べて頂くようお願い
致します。
焼き蛤にしてしまうと、貝の表面が痛んでしまうからです。
※国産の貝をお求め下さい。
中国産は表面が脆く、色もいまひとつです。
煮る際にも注意が必要です。
急加熱してしまうと、貝にヒビが入ります。
出汁で煮る場合でも、冷たい状態からゆっくりと加熱して下さい。
あとは1ヶ月程水に漬けて頂くと、加工がしやすくなります。
(水が臭くなりますので、適宜取り替えて下さい。)
教室で磨き方をお教え致しますが、お持ちになる際には湿った
状態でお願いします。
タッパウエアに水に浸した状態か、濡らしたキッチンペーパーに
包んでお持ちになるとよいと思います。
2枚貝をつないでいる蝶番の部分ですが、無理に切らなくて結構です。
貝の方が割れてしまうことがあるからです。
もちろん自然にはずれてしまったのなら、構いません。
はまぐり貝は、季節によって入手出来るサイズが変わります。
稚貝は夏場ならではです。
大きい物は金箔貼り映えしますが、ぜんなサイズも箸置きや、薬味入れ
などとして食卓に使うのもよろしいかと思います。
いずれにしろ自分で購入して磨き上げ、金箔を貼った貝合わせは、
思い入れもひとしおになるはずです。
奉書紙
奉書紙で、祝儀袋の折方を行いました。
奉書紙は、一度できれいに折らないと美しく出来上がりません。
折り直ししてしまったものは「あだ折り」と言って、使用できなくなります。
このようなところに、それぞれの事柄に物を誂えるという日本の
精神が伺えます。
ところで奉書紙とは、公文書に使われた厚い楮紙のことです。
天皇•将軍などの意向や決定を奉じて、下された文書を奉書と言いました。
年号が「平成」と報道された時、故 小渕恵三官房長官(当時)が掲げた
文字を覚えておられるかと思いますが、あれも奉書紙に書かれたものでした。
専属の書家が、年号決定から報道までの短い時間に限られた枚数で練習をし、
清書を書かれたそうです。
この話を聞いてから、あの場面を目にするたびに、「平成」の2文字に
緊張感を感じています。