国会図書館に鶴天•鶴頭に関する論文が掲載された「根付の雫」
という根付研究会の会報が収蔵されているという情報を頂いて
おりましたが、ようやく閲覧に出かけて参りました。
馬の歯だったと結論づけた60号だけでなく、経緯を記された46号、
48号も拝見し、研究者の真摯な姿勢に大変感銘を受けました。
研究の始めには、なかなか協力を得られず、ご苦労があったようですが、
研究を主導された木村郁子先生が、たまたま愛読されていた雑誌に
動物の歯は染色すると縞模様になるという大きなヒントになる記事が
掲載されていたというお話は、まさに天啓。
求める者には与えられる、ということなんですね。
その後光学顕微鏡とマイクロFT-IR分光分析の非破壊分析で、草食動物の
歯と特定。
ついには貴重な鶴天を歯科用ドリルで破砕し、DNA抽出という英断の
結果、馬という結論を得られます。
論文では残念ながら馬が日本在来種かどうかまでは特定出来なかったという
ところで終わっています。
私としては朱肉様のものとされた染色材が何なのか、馬の歯を接着した物が
何なのか、更なる研究を待ちたいところです。
しかし鶴天というネーミングもさることながら、馬の歯を接着し丸く研磨、
縞模様に染色するという技法に行き当たった江戸時代の職人の成り行きも
気になります。
まだまだ興味の尽きない鶴天•鶴頭、また何か情報を入手しましたら、
ブログでご報告致します。
追記1 歯は染色された象牙質と染色されないエナメル質から構成されて
いるため、きれいな縞模様になるそうです。
追記2 緒締玉として使われた場合は『鶴天』、穴に彫金された銀の棒を
通した髪飾りを『鶴頭』と称するようです。