月別アーカイブ: 2013年3月
ユーカリが丘教室 1日講座終了しました
NHK文化センター ユーカリが丘教室の1日講座が終了しました。
金繕いの歴史から実際の作業までお話してさせて頂きましたが、
皆様熱心にメモを取って下さったのが印象的でした。
蒔絵体験でも素晴らしい作品が出来上がりました。
斬新な構図や、味のあるタッチなど、今後私が参考にさせて頂こうと
思っています。
※制作直後に撮影させて頂きましたので、皿に金泥が残っています。
大事にすると…
以前のブログで筆の洗い方について解説しましたが、この手順で
絶対やってはいけないことがありますので、改めてご説明したいと
思います。
洗い用の薄め液の中で洗っている時や、洗剤をつける際に筆を
強く押し付けていませんか?
このように押しつけますと、毛が金具に当たって切れていきます。
筆の毛がどんどんなくなるという方は、このような洗い方をして
いることが多いようです。
洗い液の中では穂先を泳がせるように左右に振って洗い、中性洗剤を
つけて洗う時には爪で穂先をほぐしながら、中に洗剤が入り込むように
洗います。
赤漆を使った時には、泡が赤く染まらなくなるのが洗い上がりの目安
です。
ちなみに泡になって出てくる石けんは、意外に洗剤分が少ないので
避けた方がよいと以前のブログに書いています。
固形石けんは、お使い頂いて構わないのですが、その場合は筆を
石けんにこすりつけるのではなく、手で泡立てたものを筆に含ませて
下さい。
もちろん台所用の食器洗い洗剤でもOKです。
液体の洗剤•石けんを使うのが、一番確実かもしれません。
上手な仕上げの第1歩は、道具のメンテナンスにかかっています。
下地用の筆は高価な物ではありませんが、この筆で洗い方を身に
つけて頂けますと、仕上げ用の筆もよいパフォーマンスをして
くれると思います。
面倒だとは思いますが、是非お願いしたい習慣です。
お盆
先日行った京都•東寺の骨董市で購入してきたのが、このお盆です。
ごく一般的なお盆ですが、日用品としてばかりでなく、細かい作業の
際にも使えます。
木の目が気に入って、軽い物をずっと捜していたのですが、京都で
やっと出会えました。
原一菜(いちな)先生のお見立て付きです。
最初店主から2,000円と言われたのですが、「ヒビがあります!」と
訴えてみました。
店主も「これはヒビと言えるな。」と1,500円に。
このあとの会話が面白かったので、ト書き風にお伝え致します。
(京都弁が少々アヤシイのは、ご容赦下さい。)
私 新札で2,000円支払い。
店主「新札やな。お金持ちになった気分や。」
私 「それなら、もう少しおまけして。」
店主「それはあかん。一度もらった物は返えされへん。」
もちろん私も本当におまけしてもらおうと言った訳ではないのですが、
かなりユニークな店主だということが、最初の会話でわかったので、
冗談で言ってみた訳です。
骨董商の方は個性的な方が多く、このような会話も楽しさの一部
ではないでしょうか。
さて購入したお盆ですが、まず汚れを落とし、ヒビの止め、木のあばれ
の調整をし、拭き漆で再仕上げをする予定です。
真綿とは
金繕いの道具のひとつに真綿があります。
私共では真綿は、仕上げ部分を磨き上げるのに使用しています。
改めて『真綿』について調べてみました。
繭を煮て引き伸ばし綿状にしたもの。
生糸の副蚕である汚繭,揚繭,出殻繭や玉繭等の製糸のしにくいもの,
不能のものをセッケン,灰汁(あく),ソーダ等のアルカリ剤で精練
してよく水洗,1粒ずつ水の中で広げて引き伸ばし,中のさなぎ(蛹)や
不純物を除去し,ゲバと称する真綿掛枠に広げて掛け,乾燥させる。
(出典:コトバンク)
つまり『真綿』は絹100%なんですね。
では真綿の『真』は何なのかというと、元々綿とは絹しかなかったのですが、
後年発生した綿花から出来る綿と区別するために『真綿』となったとか。
さて金繕いで真綿を使用する理由ですが、蒔き下の漆を傷めない柔らかさと
埃が出ないところにあります。
1,300メートルと長い繊維体なので、木綿の綿のように埃が出ないのです。
是非お間違えのないように…
この真綿についてご相談があるのが、汚れてきてしまった場合のことです。
気になってきたら、ほぐして洗ってみて下さい。
復活致します。
ところで真綿は手に入りにくくなっています。
漆芸材料店の他、手芸材料店でも取扱いがありますが、入手が難しい
ようでしたら、ご相談下さい。
よく見ると…
NHK文化センター千葉教室のHさんのお求めになった
蕎麦猪口です。
縁に2片の割れがありましたので、これを接着したところ
です。
向かって右側の釉薬がざらついています。
染付の色も、明るく鮮やかな部分があります。
内側です。
やはり明るい鮮やかな染付が入っています。
結論から言うと、ざらついている部分は『パテ』で、
明るい鮮やかな染付は、七宝釉のような融点の低いもので
描き加えられている可能性が高いのです。
骨董市で欠損部を『パテ』で補っている物はめずらしくない
のですが、染付の柄を描き加えているのは珍しいと思います。
このあとどう修復していくか、Hさんとお話致しましたが、
『パテ』が、隣にある器本来の破片に喰い込んでしまって
いるので、このまま足りない部分を補って直していくことに
なりました。
本来ならばいずれ剥落する『パテ』はカッターで削り
取ってしまって、最初から直して行くのをお勧めしたいの
ですが、今回ご紹介した器のように状態をみて、方針を
考える場合もあります。
京都 2
京都の旅2日目は、東寺の骨董市からスタートです。
特別公開は、五重塔の初層内部です。
現在の塔は徳川三代将軍家光が再建したもので、高さ55m。
国内最高の木造塔です。
内部には仏像が安置されている他、極彩色の文様で装飾されて
いました。
創建後、木の収縮で縮んだ塔に合わせて心柱を切ったという
話が興味深かったです。
次に向かったのが、相国寺『慈照院』です。
こちらでは桂宮の学問所と狐の伝説を持つ茶室が特別公開されて
いました。
庭の景色は、この開口部から見えることも計算されて
作られています。
相国寺には、足利義政、藤原定家、伊藤若冲の墓があります。
全く時代も、成したことも違うお三方が並んでいます。
もし何か議論されているのでしたら、聞いてみたい気がします。
最後に訪れたのは、原一菜先生が京都で最もお好きな『曼殊院門跡』です。
黄昏の間から見た庭園です。
拝観者が少なかったこともあって、じっくり眺める余裕がありました。
曼殊院門跡は茶室『八窓軒』の他、桂離宮との関連が深い意匠が
見所です。
また富士山をかたどった釘隠しや、杉戸の引手金具など、雅な
部位も見逃せません。
駆け足の1日でしたが、原一菜先生のご説明で充実した
京都になりました。
ぜひまた訪れたいものです。
京都 1
3月2〜3日と打ち合わせを兼ねて、京都の特別拝観を見に
行ってきました。
まずは第1日目、打ち合わせ後の京都散策です。
思いのほか打ち合わせに時間がかかってしまい、ノープランです。
最初に行ったのが、『うつわ haku』
釉薬の研究をなさっている陶芸家ひろすえさんの工房&教室+
Shopです。
左上にちらっと写っているのが、ひろすえさんです。
シンプルな形に、綺麗な色の釉薬が印象的な作品でした。
次は『京都芸術センター』です。
昭和6年竣工の小学校の跡地を、展覧会や公演など芸術の
発信の場として利用されています。
横浜の山手西洋館、ベーリック•ホールを思わせる外観です。
ほぼ同時期ですから、スパニッシュ様式といってもいいのかも
しれません。
次はアクセサリー、雑貨のセレクトショップ『品 -SHINA-』です。
帯の誉田屋さんの奥にあります。
途中台所を通り抜けて行きます。
奥の蔵がショップです。
しかしもう閉店するそうで…この通り抜けて辿り着く感じが
面白かったのですが、残念です。
この日は京唐紙の唐長さんなど、四条を中心に歩き回りました。
Part2では、原一菜(いちな)先生、成田先生と合流し、特別
拝観のお寺巡りをした様子をお送り致します。
4月期 講座募集状況
啓蟄も過ぎ、暖かくなってきた日差しに春を感じるように
なりました。
陶磁器の修復、金繕いを始めてみませんか?
各教室の募集状況をお知らせ致します。
●NHK学園市川オープンスクール
第1金曜日 13:00〜15:00、15:30〜17:30
2クラスともキャンセル待ちを受け付けております。
●NHK文化センター 千葉教室
第2火曜日 13:00〜15:00
キャンセル待ちを受け付けております。
●NHK文化センター ユーカリが丘教室
第3月曜日 10:00〜12:00
キャンセル待ちを受け付けております。
第3月曜日 13:00〜15:00
受講のお申し込みを受け付けております。
●NHK文化センター 柏教室
第3金曜日 13:00〜15:00
受講のお申し込みを受け付けております。
残席あとわずかです。
●よみうりカルチャー大宮
第4月曜日 13:00〜15:00
キャンセル待ちを受け付けております。
第4月曜日 15:30〜17:30
受講のお申し込みを受け付けております。
※お申し込みは各教室へお問い合わせ頂きますようお願い致します。
仕上げデビュー2
NHK学園市川オープンスクールで金繕いの講座を受講
している方の仕上げを、もうお一人ご紹介致します。
Sさんの仕上げデビューです。
お抹茶茶碗の仕上げです。
末端が細くなっており、きれいな仕上げです。
金泥と釉薬の相性もとても良いです。
器のぽってりとした感じに合った仕上げの線です。
大胆に描き上げた感じも、好感度が高い理由でしょう。
仕上げの線は細い線が描けると“すごい”と言われますが、何でも
細い線がよいとは限りません。
Sさんの作品のように、器との相性が大切だと考えています。
また仕上げの線は蒔下の新うるしが硬化したあと、修正が可能
です。
あまり気負ずにトライして頂ければ宜しいかと思います。