月別アーカイブ: 2013年2月
仕上げの手順
金繕いの最終工程が仕上げとしての“蒔絵”です。
カリキュラムで練習をし、いざ仕上げようと思われた時、
迷われるのがどこから始めるかという問題です。
基本は、内側から、反時計回り(右利きの方)で、です。
要するに先に仕上げた所を触らないように進めればよいのです。
上の画像のような内外に仕上げを行う場合、内側から始めれば
先に仕上げた部分を触らずに外側の仕上げに移行出来ます。
ただ、あまり見えない外側をウォーミングアップ(練習台)と
して先に行うという考え方もあります。
またこのように縁にいくつかの仕上げを行う場合は、反時計回り
(右利きの方の場合)に進めて行けば、先に仕上げた部分を
触らずに作業出来ます。
※90度以上離れている箇所は、これにとらわれないでも大丈夫です。
いずれのケースでも金泥を蒔くタイミングを逸してはなりませんので、
時間を見ながら作業し、適宜蒔きながら進めるとよいでしょう。
複雑な損傷で長い距離を仕上げなければならない場合は 、特に注意が
必要です。
どこで見切るか、あらかじめ計画してから作業を始めた方がよいかと
思います。
このように仕上げは器により、ご自身のお考えにより、たくさんの選択肢
があります。
ご不安の場合は、教室にお持ち頂いて仕上げることも可能です。
その際には仕上げ部分がデリケートな状態の器を安全に持ち帰る
ことができるように、必ず箱をお持ち下さい。
貝合わせ 作業完了
ひな祭りに合わせて、各教室で貝合わせの制作をして
頂いています。
昨日のNHK文化センター千葉教室の作業完了後の様子です。
まだ金箔を払う前なので、貝の上に金箔クズがのっています。
画像にあるように金箔の切廻しが出るのですが、これは紙箱に
保存するのをオススメしています。
袋などに入れてしまうと金箔が潰れて“金塊”に戻ってしまうから
です。
貝合わせの作業の際には必ず紙箱をお持ち下さい。
(プラスチック製は静電気で箔が貼り付いてしまいます)
大きさはハガキ大(10cm×15cm)より大きいものが良いですし、
深さは2〜3cm程度の浅いものが作業しやすいです。
お菓子の入っていた箱などは丁度よいと思います。
金箔の切廻しは金繕いの他、様々な工芸に使えますので、大切に
保管して下さい。
もちろん純金ですので、料理の上にのせたり、お酒に浮かべても
OKです。
にゅうの直し
NHK文化センター千葉教室のKさんの作品をご紹介
致します。
Kさんの作品は以前にもご紹介させて頂きましたが、にゅうの
仕上げとして線を描くのは完璧です。
欠けの直しも着々と進めて下さっていますので、完成が
楽しみです。
箔はさみ
はまぐり貝に金箔を貼る際に必要な道具が“箔はさみ”(竹製)
です。
金箔は0.1ミクロン(1万分の1mm)ととても薄いものですので、
直に触ることは出来ません。
自然素材で出来ていますので、市販のものはバラツキが
あります。
教室で販売しているものは私が使いやすいものを選定し、
金箔があしらいやすいように先を整えております。
ご自分でお求めになる方は使いやすい物の選び方、先の
整え方を教室でご確認下さい。
かな書
昨年から「かな書」の練習を始めました。
臨書しているのは平安時代中期の歌謡「和漢朗詠集」です。
かなは、このようにお手本をすぐ横において練習しています。
読めない!という方が多いと思いますが、それも当然。
変体かなは元になる漢字が複数あり、それからさらに複数の字体が
あるので、トータル数百という文字数になるのです。
これが“この場合はこの文字を使う”というような決まり事が
あればわかりやすいのですが、それがないのです。
文字の選択は書き手の裁量に任されています。
この柔軟性…日本文化の神髄ではないでしょうか?
そしてかなの魅力は“連綿”と言われる文字のつながりにあります。
これも勢いでつながっていくのではなく、それぞれの文字が
その文字に見えるように書かなければなりません。
1字1字にこの形でなければならないという線がありますので、
連綿に流されずに書く…のに苦労しています。
いつかブログにアップできるようになりたいです。
4月期継続調査が始まりました
各カルチャーセンターの金繕い講座では、4月期の継続の
ご確認が始まりました。
この際にお申し込み頂きますと、優先的にお席を確保出来ます。
2月下旬から一般の申し込み受付が開始しますし、すでに
キャンセル待ちの方があるクラスもあります。
特に満席のクラスに在籍されている方は、ご注意下さい。
私の方でも空席情報を確認致しましたら、このホームページで
お知らせ致します。
1年のカリキュラムの途中の方はもちろん、1年以上続けて
下さっている方にも楽しんで続けて頂けるよう頑張りますので、
ご継続の検討をよろしくお願い致します。
なお講座費のお支払いの時期、方法については各カルチャーセンター
で異なりますので、事務局に確認頂ければ幸いです。
※よみうりカルチャー大宮のみ講座名称が「金つぎ•銀つぎ」と
なっております。
金つぎ(金継ぎ)とは近代に発祥した、金繕いと同じ意味の言葉
です。
陶器 磁器
金繕いでは陶器か磁器かによって下準備に違いが出ます。
ですので講座の初日にご説明しているのですが、意外に
あとで迷われてしまうことが多いようです。
まずは簡単な陶器と磁器の見分け方です。
陶器とは胎が土で、低い焼成温度で焼いています。
釉薬に覆われていない高台裏には、この土が見えています。
磁器は磁石を、高い焼成温度で焼いています。
高台裏は石の白色が見えています。
磁器は胎に吸水性がないので全て下準備の必要はありませんが、
陶器の吸水性があるものについては、金繕いを始める前に準備が
必要です。
吸水性の有無の調べ方、撥水性の付け方については教室でお話
している通りに行って下さい。
ところで吸水性があると判断された陶器についてですが、疵の
内容によって下準備が不要になるものはありません。
例えば ニュウ•ヒビは下準備が不要だが、割れは必要というような
ことはないのです。
なぜなら下準備とは割れ口に撥水性をつけるのが目的だからです。
何らか破損して胎が現れているという意味では、どのようなタイプの
疵でも変わりがありません。
注 磁器でも甘手と言われる貫入の入ったものや、絵付けが剥離
しやすいものは注意が必要です。
山手西洋館 クリアファイル新色発売
横浜の山手西洋館で販売しているクリアファイルに新色が
出ました。
今回は図版の白がくっきり際立つ紺です。
裏面は裏打ちがしていないので、中に入れた書類の文字が
透けます。
以前のブログにも書きましたが、西洋館の立面図をあしらった
このデザインは私が致しました。
山手西洋館にお出かけの際には、実物をご覧頂ければ幸いです。
オーニソガラム
最近スケッチの報告を出していませんでした。
ちょっと変わったお花を手に入れましたので、アップします。
オーニソガラム – ユリ科です。
名前はギリシア語のオルニス(鳥)とガラ(乳)からなるそうですが、
一説では花の色に由来するとか。
先にたくさんの花をつけるところが、アガパンサスに似ていると
思いましたが、同じユリ科でした。
一つ一つの花の形がきれいなのですが、まとまった形をスケッチ
するのは難しかったです。
液体洗剤をお使い下さい
金繕いの教室で、お悩みを聞く機会が多いのが筆の処理
です。
お話の大半が漆で固まってしまったというものです。
この状態の原因は洗浄がいまひとつの為なのですが、皆様
薄め液で漆を落としたあとの洗剤はどんな物をお使いでしょうか?
(以前のブログで洗い方を説明しておりますので、ご参照下さい)
最近ハンドソープでは泡になるタイプが販売されていますが、
筆洗いにこの泡タイプをお使いではありませんか?
ハンドソープの泡タイプは、筆を洗うのには適しておりません。
なぜなら爪先で揉みほぐすように穂先を洗っても中まで
浸透しないからです。
中性洗剤なら台所用で構いませんので、どうぞ液体タイプを
お使い下さい。
お悩みが解決するかもしれません。